異世界の始まり
TRPG。テーブルトークロールプレイングゲーム。俺たちにとってそれは1つの遊びだった。それがまさか1つの世界を救うことになるなんて…。
「それじゃ、愛宮は3D6で振ってくれ」
「わかったわ健吾」
そう言うと、彼女はダイスを振った。
「なっ、全部6!?なんでここでクリティカルなんだよっ!」その言葉を最後に俺たちTRPG部は光に包まれた。
どのぐらい時間が過ぎただろうか。目を覚ました俺の覚ました俺の目に映り込んできたのは、どこまでも広がっていそうな真っ白い空間と見知った5人の女子たちそしてまるで「自分こそが神だ」と言わんばかりのオーラを放っているおっさんがいた。
「ふむ、やっと1人起きたか」
「おいこれはどういうことだ!何故TRPG部のみんながこんなよく分からない場所で寝ているんだ!」
「んぁ…なんだうるせぇぞ健吾」
「橘!!起きたのか」
「なんだよ騒がしいぞ健吾…って、どこだよここは!」
「ふむ、全員が起きたら話すことにしよう」
「うっせえ。いいからとっとと話せ」
橘はつかみかからんとする勢いだ。大きな声を出してるからだろうか。朝霧先輩と松原が目を覚ました。
「もぉ…友香ちゃん乱暴は良くないよ〜」
「朝霧先輩それに松原も目を覚ましたか」
「なんですかぁ〜それにって〜私はそれに程度の女ですか〜」
「わ、悪かったよ」
「それはさておき今どんな状況なの」
「それはさておきとか言った!ひどい!」
俺は朝霧先輩と松原に今わかっている事を話した。
「ならとりあえず来知ちゃんと雫ちゃんを起こしましょうか」
そして朝霧先輩は影羽の体を揺すり始めた。
「なんですか朝霧先輩今寝ていたんですけど…」
「寝ている場合じゃないから起こしたんだよ来知ちゃん」
俺はまだ眠っている愛宮の方を起こした。
「おい、愛宮起きろ」
「んぁ…あぁ健吾どうしたの?」
「とにかく起きろ。全員が起きなきゃなにも始まらないらしい」
「え、あれ?ここはどこ?なんで健吾や友香たちがいるの?」
今まで口を開かなかったヒゲ面のおっさんは話を始めた。
「まず、急に召喚したことを詫びよう。だがやむを得ない事情があるのだ。そこだけは理解してほしい」
「で、そのやむを得ない事情とはなんなのですか?」
「うむ、それはドラゴンパッチという世界を世界を滅ぼそうとしている邪教団の魔の手から救ってほしいのだ」
「な、ドラゴンパッチだって!?。私たちが遊んでいたTRPGじゃないか!」
「あぁそうだ。あれはわしが作ったものだ選ばれし勇者を見つけ出すためにな」
「私たちはその選ばれし勇者ってやつなんですか?」
「うむ、そうだ」
「冗談じゃない早くみんなをも元の世界に戻して!!」
「それは無理じゃな。お主たちをここに呼んだ時点でべつの世界にその魂と肉体を送るしかここから出る方法はないのじゃ」
「そうか、それなら諦めるしかないか…」
「お主は冷静じゃな。名はなんというんじゃ?」
「国崎健吾だ。それと冷静なわけではなく諦めが早いだけさ」
「ふむ、そうか。でももちろん準備してから旅立ってもらうぞ。すぐに死なれても困るし、お主たちが最後の希望じゃからな」
「「「「「「最後の希望?」」」」」」
「あぁそうだ。わしは他にもいくつかの勇者グループを送ったが全部ダメになってしまった。手柄を競って勇者グループ同士で殺し合ったり、果てには邪教団に手を貸すグループをあった。そしてわしが使える力もこれで最後なんじゃよ…また力を使うのに力をためる時間必要で…。このままでは次の力を使う前に滅びてしまうのじゃ」
「はぁ…分かったわよ。みんな、こうなってしまったからにはがんばってみない?」
「まぁ、そうだな。それでおっさん準備っていうのは何をするんだよ」
「よくぞ聞いてくれた。お主たちがドラゴンパッチTRPGを始めたときのようにレベル1の状態のステータスをそれぞれに作ってほしいのだ。…そのためにも場所が必要じゃな」
そう言うと何もないところから急にテーブルと椅子が現れた。そして各々が椅子に座るとおっさんが説明を始めた。
「まず『ステータス』というとお主たちのステータスが表示される」
「ステータス。うわ、なんか出てきた」
「ほんとに出てきました」
「うむ全員出てきたようだな。それでは12の職業と8の種族を選びその後STR、DEX、POW、INTの4つを振り分けてくれ。そして最後にスキルを自動取得3つと通常取得を5つ選んでくれ」
「作り方はやはり一緒なのか…それならパーティー編成はメイン盾、サブ盾、ヒーラー×2、物理アタッカー、魔法アタッカーでいいかな?」
「あぁ、それがいい。そこでだがヒーラーの片方は<吟遊詩人>がいいんじゃないか?」
そんな会話をしながら俺は自分の仲間となる彼女たちを順に見ていく。
愛宮 雫。16歳。7月12日生まれ。少しプライドが高いがいいやつだ。友達付き合いもよくTRPG部のみんな以外にも友達がたくさんいた。いわゆる学園のマドンナってやつだった。なんでTRPG部に入ったのが謎なぐらいだ。
橘 友香。15歳。12月29日生まれ。ヤンキー風でサボり魔。運動神経がよく、ある程度の事は器用にこなすが勉強だけは苦手らしい。喧嘩っ早く短気だがいいやつだ。
朝霧 九葉。17歳。5月20日生まれ。ショートヘアが似合う頼りになる先輩だ。TRPG部の部長で明るい性格。だが生徒会役員で冷静に物事をこなすこともあるらしい。
松原 クリスティーヌ。16歳。4月7日生まれ。長身で金髪。4姉妹の長女で割としっかりしている。友達が少なくTRPG部の面々とばかり話している。たまに抜けてるところがあるが優しくて頼もしい味方だ。
影羽 来知。15歳。9月18日生まれ。頭がよく品行方正だが少し気弱で暗いところがある。あまり自分の事をよく話さないから彼女には謎な部分が多くたまにこわいことを言う。
「健吾…健吾もぉ…なにぼーっとしているのよ」
「ん、あぁ悪いな。それで誰が何をするんだ?」
「まだ何も決まっていませんよ」
「そうか。それなら俺が<竜騎士>でメイン盾をやってもいいか?」
「確かに健吾君はメイン盾上手かったからいいと思うよ。だったら私は物理アタッカーで<奇術師>にするね」
「私はどうしようかしら」
「だったら愛宮にはヒーラーを頼んでもいいか?多分<祈祷師>と<吟遊詩人>がいいと思うんだが…」
「だったら<吟遊詩人>にしておくわ。<祈祷師>なんて私に合わないし。」
「あの、だったら私が<祈祷師>をしますよ」
「おk。サンキューな影羽。」
「ううん。いいの。国崎くんやみんなの役に立てるならそれでいいから」
あとは橘と松原だったが2人で話し合って決めたようだった。
「私がサブ盾で<格闘家>をして…」
「私が魔法アタッカーで<妖術使い>をします」
その後も相談しながらスキルを取得した。
「ふむ、全員準備は整ったようだな。言語については心配しなくてよいぞ。ちゃんとお主たちの頭に入れておくからな。それでは行ってくるがよい!!」
そうして俺たちは真っ白な空間から異世界へと旅立ったのだった。