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ダンジョン仕草  作者: 埴輪庭


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19/69

第15話:夢幻に踊る

 翌朝、朝一番で君たちは首都ユーガリットを出立した。


 ルクレツィアとモーブは結局ついてくるようだ。勿論君にとっては歓迎すべきことである。


 君は様々な訓練プランを考えるが、その中でももっとも効率的な方法は迷宮の浅層部では出来ないだろうから、どのみち深く深く地の底へ下りていく必要があるだろう。


 『彼ら』(良く増える悪魔)が居ればいいのだが。


 帰りは行きと違い、ならず者に出くわすなどといったことはなかった。順調に馬車は工程を消化し、君たちはようやくアヴァロンへ帰還した。


  ・

  ・

  ・


 探索者ギルドへの報告を済ませる前に宿を取らないかとルクレツィアが言ってきたが、君は馬小屋に泊まる事を告げた。


「な、な、な、なぜそんな場所へ!? お、お金でしょうか!? 問題ありません、カナンより支度金は出ております。もし主様が……え? いい加減名前で呼べ……? は……はい……えと……その、とにかく手元不如意ならばわたくしが……」


 君がモーブをみれば、こちらもやはり困惑気味な視線を寄越してくる。


 君は大きなため息をつき、馬小屋にとまったこともないひよっ子だから不覚をとるのだと懇々と説教をした。


 誠心誠意の教えはしっかりとルクレツィアとモーブへ浸透し、彼らはそれまでの己の不手際を悔いていた。君は彼らの肩を叩き、人間に限界はない、限界を迎えたら新しいクラスへつけばいいとアドバイスをしてやる。


 かつては自分もこうして教わる身であったな、と君はしみじみした気持ちになるのであった。


 そして──


 君たちはギルドマスターの執務室へと出向き、サー・イェリコ・グロッケンへ報告を済ませる。


 グロッケンはしきりに鼻を蠢かせスピスピとやっていたが、やがて大きなため息と共に頷き、ギルドも出来るかぎりの協力をしようと結んだ。


 君が何気なしに執務室を見渡すと、巨大な包丁のような大剣が飾り立てられている。綺麗に磨きたてられようとも、君の鼻はほのかに香る血の、闘争の残滓をしっかりと捉えていた。


 ギルドマスターの現役時代につかっていた得物だと説明されると、モーブやルクレツィアも目を丸くして驚いている。


 君からすれば驚くことでもないのだが。


 じっくり視れば分かるだろう。あの脂肪の塊の奥に、まるで針金がよりあつまったかの如き筋肉が詰め込まれているのを。


 あの時レダが放った極上の貫き手であっても、この腹は弾き返すだろうな。君の目に剣呑な光がやどる。


 探索者ギルドのトップである以上相応の実力があるならば、それは如何なるものか。君がそう見つめていると、グロッケンは君とはやりませんよと凄く嫌そうに目で語るのであった。


 そんなこんなで報告を終え、ルクレツィアらに準備を進めておくようにと言い残し、君はアヴァロンの街をぶらつくことにした。


 目指すは酒場である。


 旅の〆はエールで。ライカードだろうと、アヴァロンであろうと、それは変わらない。


  ・

  ・

  ・


 異常に不味いエールをしこたま吞んだせいか、君はやや足元がおぼつかない。


 解毒の奇跡をもってすればすぐさま酔いはさめるが、それでは味気ないと君は酩酊を楽しむことにし、ふらふらと馬小屋へ。


 馬たちはもはや常連である君をみても騒ぎ立てることなく、どこか冷たい目を向けてくるのであった。


 夢へ、落ちて行く。


 いつしか君は、あの時の場に居た。


  ◆


 それは命あるもの、そして命なきもの総ての敵対存在であると考えられている。歴史の影に潜み、多くの命を貪った邪なるもの。


 神が創りし『大地』という白地にぽつんと垂れおちた黒点。


 多くの制約から物質界で十分な権能を振るえない神々ゆえに、矮小なる人族へ過剰な力を与えてでも滅しようと試み、それでも成し得なかった。


 君も、いや、君たちは太陽にもっとも近い場所でソレと戦ったことがあった。


 戦ったのみならず、敗けたのだ。


 少なくとも最初の戦いでは。


  ・

  ・

  ・


 ソレはまるで黒い霧が凝縮したような姿をしていた。のっぺりした顔は「ノクト」とよばれる闇の精霊の特徴だ。


 だが本当にソレは精霊なのであろうか。


 ソレはノクトと呼ばれる、ノクトに似て非なるものだった。


 ノクトは闇の精霊だが邪悪な存在ではない。しかし、ウンブラ=ノクティスはそうではない。彼らはこの世界に対して激しい敵意を持つ邪悪な存在である。出会えば、魂ごと連れ去られ、闇色に染められてしまうだろう。


 ソレは君たちを見かけるやいなや、その醜悪で巨大なアギトを目いっぱいに開き襲い掛かってきた。


 数多の魔なるものたち、時には神聖なものでさえも葬りさってきた君たちをして、ソレは余りに強大すぎた。


 目に見えるもの総てを切り裂き、目に見えないものですら切り裂く達人、魔導部隊随一の剣達者であるサムライ・マスター(善・侍)の渾身の雷刀──上段からの一撃は、ソレの皮膜一枚すら切り裂くことができない。


 刃が立たぬということではない。


 手ごたえがなさ過ぎるのだ。


 例え()が異なる相手であっても、|YASUTUNA-BLADEヤスツナ・ブレードの刃は敵手の存在中枢を著しく損耗させる……はずであった。少なくともこれまでは。


 死を恐れぬ彼をして、久しく感じていなかった恐怖。愛刀もまた震えているような気がした。


 ならば、と魔導部隊きっての武闘派であるニンジャ・マスターは短刀を握り締め、身に纏う装束を自ら引き裂く。渾身のバトルフォーム(ぜんら)である。


 宙に描くは殺戮の剣線。


 直線的ではない、幾重もの有機的な閃光の軌跡がソレの全身を切り刻む。


 肉の相を持つものならば重要臓器各種、霊的存在、神的存在ですらも存在中枢を傷つけられれば死に至るということは、君たちにとっては常識的なことだ。


 だが存在の階位がかけ離れすぎているのであろうか。十重二重の連撃の後、ニンジャ・マスターが荒く息をつき距離をとるも、ソレには傷ひとつなかった。


 物理的な干渉は受け付けぬとみたアーク・ビショップ(善・司教)と君(善・魔術師)が、それぞれ魔法を完成させる。


 アーク・ビショップは現在は司教だが、最初から司教であったわけではない。僧侶として研鑽を積み、司教へとクラスチェンジしたのだ。いまでこそ魔術師系呪文も極めた彼だが、得手とするのは僧侶系呪文である。


 そのアーク・ビショップが行使するは当然、僧侶系攻撃呪文最上級である『死告』。


 禁じられし滅びの言霊。


 存在の否定。


 己の信仰する神に対し、敵対存在の生を否定する宣言を発する。ライカードにおいて禁忌とされる術である。


 なぜ禁忌か。


 術が完成すれば神が直々に術者の敵へ破滅的な干渉を行い、敵手のデフォルト・ステータスを『死亡』へと書き換えるからだ。


 殺すのではない。もともと死んでいるものとして存在を書き換えるのだ。


 これは極めて悪質であり、極めて呪わしい効果といえよう。なぜなら蘇生の奇跡などはあくまでも「死」という状態異常を正なるものへと修正するものであるから、デフォルト・ステータスが書き換えられてしまうと死んでいることが自然なものとみなされ、蘇生が出来なくなるからだ。


 同じような効果を持つ術に『即死』があるが、これはあくまでも肉のある身にしか通用しない。おそらくは霊的な存在であろうソレ相手に通るとは、アーク・ビショップには思えなかった。


 しかし精錬され、練りこまれ、ありったけの法力を注ぎ込んだ死の言葉もまた、ついにソレを害すことは叶わなかった。


 異界より来訪せし古の魔神を、始祖たる吸血鬼を、群れなす大悪魔をも屠ってきた必殺の術はソレに弾かれ、その術式を霧散させる。


 全身全霊の死告をレジストされたアーク・ビショップの隙を突こうとしたソレに、蒼い炎弾が雨あられと降りそそいだ。


 君による『炎嵐』から始まる多重起動だ。


 優れた魔術師は複数の事柄を同時に考える「平行思考」を当然の様に扱える。その技術を応用し、自身の精神世界に擬似的な人格を作り出して、術者が一人しかいないにもかかわらず複数の術を同時に行使することを多重起動という。


 魔法は、特に攻撃魔法はそうだが、術の有様は行使者の精神世界を顕す。赤色の炎より更に高温とされる蒼色の炎は、君の苛烈なる精神世界を正確に顕しているといえよう。


 魔法の多重起動による君の猛攻はこれで終わらない。


 炎弾の雨の後は大氷界、『大凍』だ。


 絶対零度に迫る凍気がソレを包み込む。極限の冷気は大気一帯をすら凍てつかせるというが、君の玄妙無比な魔法操作は決して周辺に余計な破壊を齎さない。


 しかし君は手を緩めない。


 大気が焼ける匂いがするやいなや天が割れ、激烈な落雷がソレを打ち据えた。


 ──『天雷』


 神の一撃とも称されるそれは、自然界の落雷より遥かに凶悪な破壊力を内包している。


 神の怒りの具現たる落雷は、魔を討ち祓う。


 そして──


 火、氷、雷の三属性により発生したエネルギーはある一点へと収束していき、ソレの胸元へ小さな火種程度の光球が顕れた。


 光球は輝きを強めていく。


 光球は大きく膨れ上がっていき、あっというまにソレを覆い尽くし、放電にも似たバチバチという破裂音を響かせながら更に肥大化しつづけた。


 君はそれを鋭い目で見定めると、転移の術式を完成させる。これは君たちが転移するものではない。光球が間もなく放散する、余りあるほどの熱エネルギーを転移させるためのものだ。


 転移術式の完成とともに引き起こされたのは、始原の炎の顕現。


 魔術師系呪文最大の一撃、それも通常行使する略式ではなく、正式な手順で顕現されたまさに天地開闢の一撃。


『ハーイラー・ザンメルツ・ウォルアール・イェーラー』

(速やかな)(風・嵐)(光・解く・退ける)(解放・切り離す)


 ──『核炎』


 音はない、爆風も起こらない。ただ光のみが在った。


 ()()な手順で行使された核撃は静かで、そして絶対的な破壊をもたらす。


 通常放たれる核炎は三属性融合こそ行うものの、三属性ともに完全な形では顕現させない。君が今行使したように完全な形で行使すれば、それに伴い生み出される凄まじいエネルギーを制御することは至難を極めるからである。


 これは魔法の深奥に至った君だからこそなし得る奇跡であり、アーク・ビショップをして正式行使には至らない。


 だがそれでも。


 それでもなお、ソレは悪辣極まる殺意を振り撒き、君たちの目の前に存在していた。


 闇よりも尚濃い暗黒色の肉体からはブスブスと煙がたちのぼり、確かに傷を負ってはいたものの、全身全霊の核炎はソレを滅ぼすには至らなかったのだ。


 ソレが君たちに牙を剥くたびに、闇色の鋭い触手をつきだすたびに、君たちは深く傷ついていった。


 最初に死んだのはマスターシーフ(中立・盗賊)だ。


 彼はハイ・プリーステス(善・僧侶)を庇って死んだ。投槍のごとく大気を穿ちながら襲い来るソレの触手を腹部に受け、貫通。マスターシーフの上半身と下半身は大型の猛獣に一息に食いちぎられたように千切り飛ばされ、血と臓腑を撒き散らした。


 庇われたハイ・プリーステスは顔を真っ青にしながらも、癒しの術を行使し続ける。


 次に死んだのはアーク・ビショップだ。


 ソレは数本の触手を一本へと束ね、サムライ・マスターへとつきだすが、受ければ死ぬと考えたサムライ・マスターはそれをかわした。


 射線上にアーク・ビショップがいた。


 アーク・ビショップとて聖術と魔術を極めた者、瞬く間に己が身を鉄塊のごとく変じさせる物理系防御魔法最高峰の大鉄身を完成させる。


 だが触手は鋼身と化したアーク・ビショップの首を容易く抉り飛ばした。


 死んだことさえ気づいていないであろう、きょとんとした表情のアーク・ビショップの首を見たとき、君たちは逃げを打つことを決めた。


 君たちほどの実力者にとってこの判断の遅さはありえないと人は言うかもしれない。しかし、あまりに実力差がある相手と相対したとき、馬鹿正直に逃げを打つことは多くの場合悪手となる。


 成人した男性が走り逃げ回る幼子を捕まえられないなどということがあるだろうか。戦いの場においてもそれは同じだ。


 それでもなお逃げを打とうと決めたのは、戦闘の継続に一切の希望が見出せないからだった。


 絶対的な物理障壁、魔法障壁があるとは思わない。全霊の核炎は確かにソレの身を削った。決してあらゆる害意を無と帰すような存在ではない。


 しかしそれだけだ。敵手の攻撃は当たれば死に、こちらの手数と火力は余りにも足りない。


 ゆえに君はあらゆる魔術師が忌避する手段を取った。


 戦闘中の転移の行使。


 座標を一切指定しないそれの行使は、余りある危険を伴う。いうまでもなく最も恐ろしいことは()()()()()ことである。


 だがこれはその恐ろしさを正確には言い表してはいない。


 ただ壁に埋まるだけならば何も問題はないのだ。石壁を、あるいはそれより固い壁であっても君たちほどの超人ならば抉り、くだくことができる。君たちでなくとも、転移を行使できるだけの魔術師が所属するパーティならば全く問題はない。


 壁に埋まる。これはちがう。


 正確には、壁の一部というデフォルト・ステータスへ書き換えられてしまうのだ。


 こうなればもはや希望はない。肉も魂も消え失せる最悪の消滅(ロスト)が待つのみ。


 通常、そこまでの危険をおかしてまで逃げを打つ必要はない。勝てない、逃げられないのならば死んでしまえばよい。元より君たちは幾百幾千もの己の屍を積み重ねて力を得るに至った。いまさら一度や二度の死がなんだというのか。


 だが、君たちは相対するソレについて、自分達がただ死ぬだけではすまないだろうという不思議な確信を得ていた。


 理屈はない、しかし魂がそう断じている。


 このまま皆殺しの憂き目に遇えば、君たちの肉体のみならず、魂までもが貪られ、いや、それですら生温い。


 君たちそのものがソレへと変じるだろう。


 君たちの願いを編み込んだ転移術式は瞬く間に形を成し、そして……


  ◆


 *おおっと*


 君は顔をべろべろ舐める馬たちに起こされてしまった。だが夢の事ははっきりと覚えている。


 あれは手ひどく負けたなと苦笑し、懐かしい思い出に浸る。


 横になりながら君は考えていた。迷宮で感じた得体の知れぬ不気味な気配について。


 神か魔に属するものとも違う、言葉にできぬ忌避感。あれはかつてまみえたこともある『深奥の者』に似ている、君はそう考えていた。


 なぜ忘れていたのだろうか。


 だが同じものだとは思えない。似ているが、違うものだ。


 とはいえ、と君は思う。


 ライカード魂が疼くのだ。


 大迷宮には一体どんな罠が待ち構えているのだろうか。


 どれほどのおぞましい魔が跋扈しているのだろうか。


 ──そして、そいつらをぶち殺したならばどんな宝が手に入るのだろうか


 と。


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S E T T I N G G R I M O I R E
ダンジョン仕草
設 定 資 料 集
入った者。堕ちた者。
そして、帰らなかった者たちの記録。
登場人物
迷宮に足を踏み入れた者の数だけ物語がある。だがその大半は、帰らなかった者の物語だ。ここに記すのは帰ってきた者たち──あるいは、帰るつもりのない者たちの記録。
▼ 主要パーティ
君
「君」
ライカード王国 魔導散兵 / 全能者《エルシャダイ》
黒いローブの青年。その実態はライカードという異国より来訪したキチガイである。あらゆる魔術、神聖術を行使するが“この世界の”術ではない。
戒律は善。困っている者は無償で助ける。ただし助け方が常識と噛み合わない。鉄錆びた死生観と人懐こい笑顔を同居させたクレイジーな冒険者だ。
キャリエル
キャリエル
幸運の女神 / ソロ探索者
赤い髪の少女。ソロで探索を続けている。妹の流行り病の薬代を稼ぐけなげな弱者。勘はいいがそれだけだ。
──その勘の精度を考えれば、それだけで十分ともいえるが。
ルクレツィア
ルクレツィア・フォン・エッセンバウム
降る雪の聖女 / 戦闘聖女《バトル・プリーステス》
カナンが迷宮に送り込んだ聖女。白銀の髪。大悪の調査に赴いた彼女を四人の聖騎士が護衛した。
──が、無様にも失敗。肉体を浸食され君に襲い掛かり、上半身をミンチにされて惨敗。おかげで死よりも悍ましい結末からは逃れられた。
固有術式「聖雪」。雪片の一つ一つが問う──あなたは善なる存在ですか、と。悪と判じられた者は自らの罪の重さで圧殺される。恐るべきはその判定が彼女の価値観で行われる事だ。
モーブ
モーブ
風渡りの聖騎士
ルクレツィアを護衛した四人の聖騎士のうちの一人。黒い髪のイケメン。異名は戦い方に由来する。神聖術で強化した肉体に、指向性を絞った風魔法を重ねた高機動戦闘。良く言えば寡黙。悪くいえばコミュ障。
▼ 探索者ギルド
サー・イェリコ・グロッケン
探索者ギルドマスター / 豚鬼種の英雄 / 利き鼻
探索者ギルドの親玉。巨大な体躯を執務机に収めた豚鬼種の英雄。その鼻で相手の帯びる毒、呪詛、悪意を嗅ぎ分ける。現役時代に悪竜を討ち、愛剣『大猪牙』を壁に飾る。脂肪の下には竜種に匹敵する膂力を秘めるが、全力稼働は数分──超えれば餓死するほど燃費が悪い。
ハノン
探索者ギルド受付嬢
金髪碧眼。冷静沈着で愛想がない。グロッケンの愛人という噂を流した者は、割りの悪い依頼しか回されずすぐ謝罪する羽目になったという。
ザンクード
荷持ちの老探索者 / 酔いどれ
いつも酒場で飲んでいる爺さん。喉の矢傷のせいで声が掠れる。半世紀を迷宮で費やした古強者で、流派の名を持たない我流の槍を振るう。型が無いぶん軌道が読めない。
ソニア
「ブルーソニアの隠し牙」リーダー
軽装の女戦士。まともに死ねなかった哀れな女。
ケイセルカット
斥候 / 「隠し牙」メンバー
運が良い若者。仲間がジャーヒルの歌に呑まれていく中、唯一正気を保ち、逃げ切った。
▼ カナン神聖国/オルセイン王国
法皇レダ
カナン神聖国 法皇
年齢抑制の恩寵で三十代半ばの外見を保つが、実年齢は六十を超える。彼女を「お飾り」と呼ぶ者がいる。傀儡の玉座で微笑むだけの女だと信じている者がいる。確かにそうかもしれない。レダは神聖術が絶望的に下手糞だし、政治を知らない。それでも彼女以外に法皇は考えられない。彼女がカナンで最も強いからである。
大主教ヒュレイア・フォン・ハーデン
六大主教 / ルクレツィアの上司
齢三十半ばで六大主教に昇り詰めた才媛。人間を道具として値踏みする。法皇を「お飾り」と見なし、いずれは自身がと考えている。彼女はレダよりよほど政治ができる。ただ、政治では魔を討てない。
宰相ジャハム
オルセイン王国宰相 / 大魔導師《アーク・ウィザード》
この男の全ての行動は、一つの名前で説明がつく。ザビーネ。亡き王妃の名だ。醜悪という言葉が人の形を取ったような男が、全存在を賭けて死者を蘇らせようとしている。クーデターでオーム王を追放し、ベルンハルトを裏切りの駒として迷宮へ送り込む。ただそれだけのために一つの国を大悪に捧げる。
ベルンハルト
近衛騎士団長 → 魔騎士
近衛騎士団長だった。過去形で語るしかない。ジャハムの策略で大迷宮に送り込まれ、大悪の力で魔騎士に堕ちた。
敵対者
囁く者とは人間が名付けた。名前をつけなければ、恐怖を語ることすらできなかったからだ。
囁く者
囁く者
歴史を紐解いてみれば、災厄と呼んでよい厄の陰には必ずこれらの存在があった。
ジャーヒル
ジャーヒル
暗黒の大母 / 二邪の一
肉を堕とす者
シェディム
シェディム
深淵の聖母 / 二邪の一
魂を堕とす者
▼ その他の脅威
エリゴス・ハスラー
カル・ローンの悪魔 / 首狩りハスラー
傭兵国家カル・ローンの筆頭傭兵団長。愛剣ローン・モウアで数え切れぬ英雄首を狩り獲った。最下層の宝剣を求め、第5層でルクレツィア一行と邂逅。情報を交換して一度は引き返したが──
魔将《デーモン・コマンダー》
大迷宮を狩り場とする上位悪魔族
悪魔は悪魔であって魔物ではない。囁く者たちとも無関係だ。彼らには故郷があり、大迷宮はその魔界との境界が薄い。だからこそ顕れる。中位、下位を従える様が将軍のようだから、人間が魔将と名付けた。
グレーターデーモン
上位悪魔
レッサーデーモンと並べて語られる事があるが論外である。レッサーより強大だからグレーターと呼ばれるのではない。その強さ、その恐ろしさゆえにグレーターデーモンと呼ばれるのだ。
その他の人々
主役だけが物語を動かすわけではない。名もなき者たちの選択が、時に世界の天秤を傾ける。
聖騎士サンドロス 異端審問官上がりの偉丈夫。法皇への不敬に義憤を感じ君に掴みかかり、べっこりへこまされた。残念ながら生存。
国王オーム クーデターで追放された元国王。その血は第10層への扉を開く鍵となる。──王の血とはつまり、そういうものだ。
ザビーネ 死者。亡き王妃。ジャハムの愛の歪みは、何人がそのために死んだかで測ればいい。
ゼナ 新米探索者。賊の襲撃で真っ先に立ち向かい真っ先に殺された。まあ、どこぞの冒険者に蘇生されたようだが。
ケージ 上位冒険者として稼ぎは十分あるはずなのに、全て賭博でトバすほどのカス。
ラーナラーナ レダの娘。くりくりとした眼にふわふわの栗毛。歳の頃は十かそこら。
国家と勢力
三つの国がアヴァロンの地下を巡って交わる。一つは戦いを神と崇め、一つは神に戦いを捧げ、一つは戦いの上に街を建てた。
ライカード王国
ライカード王国
超好戦的魔導国家 ── 死は風邪のようなもの
ライカードから来た男に、死をどう思うかと訊いた。少し重い風邪のようなものだ、と笑った。翌日、コボルトに殺された仲間を蘇生教会へ担ぎ込み、三十分後には酒場で一緒に飲んでいた。この男たちの国では、死は本当に風邪なのだ。
魔法体系は七段階の位階制で、各位階の呪文を一日九回まで使える。「絶対的な神などいない。いたとしてもそれは殺せる存在であり、神みたいなかんじの魔物である」と教育する国。
余談だが、ライカードにはNINJAとよばれる者たちがいる。忍者ではなくNINJAだ。全裸で戦い、手刀で首をはねる。諜報活動は行わない。
迷宮都市アヴァロン
迷宮都市アヴァロン
大迷宮の上に築かれた街
不味いエールで知られる安酒場がある。壁際に座ると怒号と笑い声が頭上を飛び交う。生きて帰った者が飲み、帰らなかった者の席には新しい誰かが座る。それがアヴァロンだ。
オルセイン王国に属するが実質は探索者ギルドの自治領。酒場と武具店と命知らずがひしめく。迷宮からは希少な資源、武具、魔法の道具が出土し、それを求めて各国から傭兵が集まる。
カナン神聖国
カナン神聖国
信仰の国 ── 白壁の都ユーガリット
白亜の城壁には退魔の力が込められている。ただし材質は白鳥石で脆い。
神を国として奉じる宗教国家。指導者は法皇レダだが、実質国を動かすのは六名の大主教。神聖魔法は信仰の深さで出力が変わる。応用は利くが不安定で、術者の心が揺れれば威力も揺れる。なお、カナンはヒト種のみで構成される。異種族の姿は見られない。それが何を意味するかは、各自の判断に委ねる。
囁く者とは何か
あなたの中に、それは既にいるかもしれない。
それ
「それ」の正体
見た目は生白くぬらっとした卑小なヒル。踏めば潰れる。焼けば死ぬ。──だが見た目通りの存在ではない。次元間の行き来を可能にする一種の生体ゲートである。一匹では意味を為さない。門を開くには膨大な数が要る。だから「それ」の目的は増えることだ。多く、多く、限りなく多く。それ以外の目的を持たない。
「それ」は増える
増殖手段は寄生。宿主に取り憑きエネルギーを搾取する。宿主が生きようとする限り、その行為は「それ」を守ることにもなる。──エネルギーとは栄養に限らない。感情だ。激しいほど上等の餌となる。信仰、愛、憎しみ、誇り。人間が最も尊いと思うものが、最も美味いらしい。
「改善」
効率よく餌を得るため「それ」は宿主を「改善」する。最初に恐怖を消す。次に哀しみを消す。すると宿主は囁きを天啓と受け止め始める。声に従えば辛いことが消え、喜びに満たされていく。──その喜びが「それ」を太らせているとも知らずに。
門が開く時
限度を超えると宿主の体内で際限なく増殖し、最後には宿主ごと破裂する。──ぱぁん、と。
破裂の直前、宿主は正気に戻る。自分を「こんなふう」にした存在への怒り。戻れない哀しみ。そして恐怖。その爆発が「それ」を爆発的に増やし、膨大なエネルギーが生体ゲートを起動させる。──つまり、絶望が門を開く。
なお「それ」は善でも悪でもない。だから破邪の力は痛痒を与えない。ルクレツィアほどの聖女の信仰すら、むしろ良質な餌だった。
門の向こう
歴史が一定の周期で大災厄を繰り返すのは、門が何度も開きかけているからだ。
アヴァロン大迷宮
潜った者だけが知っている。あの暗闇には温度がある。匂いがある。──息をしている。
第1層
F1 ── 薄暗回廊
松明の光が届く範囲だけが世界だった。石造りの回廊が続き、小鬼の爪が壁を掻く音が響く。新米はここで魔物の血の匂いを嗅ぎ、命の値段を覚える。
第2層
F2 ── 屍涼荒野
地下なのに空が見えた。説明はつかない。魔力の歪みが外界を投影しているとされるが、あれがどこの空なのかは誰も知らない。スケルトンの徘徊する荒野。
第3層
F3 ── 坑道層
至る所の松明は不思議と消えない。が──その影に悪魔が潜む。光が多いほど影も増える。安心と危険が同じ源泉から生まれる、嫌な構造。この辺から新米は遺書を書き始めたほうがいい。
第4層
F4 ── 迷宮層
側壁に装飾の施された「迷宮らしい迷宮」。人の手が入っているが建造者は不明。やけに寒く、湿った空気が流れる。墓場に似ている、と誰かが言った。
第5層
F5 ── 血渇円堂
通路はない。すり鉢状の広間が一つ。観客席に囲まれた円形の舞台。──かつて何者かがここで戦いを見物していた。そう思わせる構造だ。敵は出ない。ただしセーフエリアとは、あくまで人間の線引きである事を思い返すべきだ。
第6層
F6 ── 沼地層 / 下層回廊
上層は沼地。足元は緑と茶の泥に覆われ悪臭が漂う。触手の集合体と保護色のトカゲが襲う。長居すれば体が蝕まれる。下層は石の通路型回廊に変わる。
第7層
F7 ── 黒死聖堂
光が死ぬ。松明を掲げても闇に飲まれる。魔法の光も同じだ。ギルドの記録にすら情報のない未踏の領域。囁き声だけが耳元で鳴り続ける。
奥に至った者は見るだろう。墓石が円形に並び、中央に巨大な石棺が浮いているのを。暗黒の中で、それだけが明瞭に見える。
第8層
F8 ── 肉の回廊
生物的な質感の壁面が呼吸するように収縮を繰り返す。もはや迷宮ではない。上位の悪魔族が跋扈する魔界。
最深部
F9-10 ── 最深部
全ての道はここに至り、ここから先はない。
ダンジョン仕草
この魔導書はギルドの記録、生還者の証言、
そして迷宮から回収された断片から編まれた。
― 新着の感想 ―
[良い点] 息をするようにグレーターデーモン養殖がレベリングの基本なのこわい。あくまをころしてへいきなの?
感想一覧
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