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第一章

短編として書いたお話なのですが、始めたばかりで勝手が分からず、短編なのに48000字書いてしまったものを分割して再投稿します

よろしくお願いします

「はい、いっくんあ〜ん」

「ちょ、姫奈抜け駆けすんなし〜」

「おーい真白胸当たってっから!」

「ちげーし当ててんよ」

「はー?マジビッチじゃん!?」

「家庭的なギャルアピってる裕美子に言われたくねーし」


 ぎゃいぎゃいぎゃいぎゃい、僕の頭上で三つの黄色声が良く響いてる。

 髪は皆染められてて、金髪の人も居れば、赤い人も居て、銀色?灰色?みたいな人もいる。

 赤い人はツインテールで、金髪の人はボブカット。銀の人はポニーテール?一つ縛り?よくわからないけど、皆髪型も違くて、個性が出てる

 ただ一つ共通なのは、皆…お化粧が派手で、露出が多い。

 その、ワイシャツは第三ボタン位まで開いてて、そこから、凄く…とっても大きなおっぱいが良く見えてる。

 銀髪の人は日焼けした肌の胸の谷間と、そこの下着の日焼け跡まで見えてて、凄い目のやり場に困る。

 スカートも短い。太ももが凄い出てる。

 もうすぐお尻が見えそうな位だ。


 兎に角、今僕の周りには、三人の女の子がピッタリくっついてて、皆お弁当を持って僕に食べさせようとしている。

 三人の…ギャルの女の子達が



ーーーーーーーーーー


「えっ?また転校?」

「うん。こっちの支社無くなっちゃうみたいでね、向こうの本社に異動ってか転属になるの」

 一ヶ月半前。ゴールデンウィーク明けでまだ頭がパッとしない、朝ご飯を食べ終えて流しに食器を持ってく僕の耳に、人生何度目かの、母さんからのいきなりな報告が届いた。

 危うく味噌汁椀を落っことしそうになるのを、どうにかバランスを保たせながら聞いたけど、流石に高校入学して一ヶ月ちょっとでそんなことになるとは、思いもしなかった。

「向こうって…そんなに遠くになるの?」

「そりゃそうよ。一応全国展開してる会社だもの。だけど壱正も知ってると思うけど、本社自体はおじいちゃん家の近くだから、そこから通えると思うわ」

「おじいちゃん家って…凄く山奥の田舎じゃない!?」

「そうねー、一日バスニ、三本しか通らないもんねー」

「もんねーって…」

 随分他人事だなぁと思う。そりゃ母さんは自分の車で通えるかもしれないけど、僕はどうすれば良いんだろう。母さんに送ってもらうのかな?

「母さんと一緒なら何時に起きれば良いの?」

「あー大丈夫大丈夫!壱正はそんな早く起きたら、若い子が睡眠不足になっちゃうもの」

「じゃあどうすれば…」

「ハイコレ、今から通って取っといて」?…へ、バイク?」

「田舎の高校だから小型二輪?ってのまでは良いみたいだから、コレで125ccのバイクの免許取って通ってね?一正昔から仮面ライダー好きでしょ?」

「いや、好きだけど…母さん最近のライダーは全然乗らないんだよバイク…劇場作品とかはまだしも…」

「じゃ、行って来るわね〜!分かんないことあったらおじいちゃん詳しいし、聞いとくのよ〜!」

「あっちょっ…」

 そんな訂正に聞く耳も持たず、バダバタと出て行く母さん。

 父さんが居なくなって女手一つで育ててくれたバイタリティには感謝だけど、コレはいくら何でも急だなあとは思った。

 ただ、今住んでるそれなりに公共交通機関が発展してる住所の高校じゃ取れないだろうから、そこだけは楽しみな僕だった。




 そうこうして、転校までの間にちょこちょこ自動車学校に通って、小型バイクの免許を取った僕。

 そのまま余り仲良くはならなかった元の学校とクラスメイトに別れを告げて、引っ越し初日。

 おじいちゃん家に着くや否や、おばあちゃんの良く冷えた麦茶と共に待っていたのは。


「うわ…おじいちゃん良いの?」

「うむ。壱正ももう一丁前にオートバイ乗れる男になったからな、プレゼントだ」

「ありがとう…!」

 元白バイ隊員のおじいちゃんが、僕用のバイクを用意して待っててくれた。ピッカピカの新車って訳じゃ無いけど、スクーターじゃなくてちゃんとマニュアルのだし、綺麗だし、凄い…コレ僕が乗って良いんだ…。

「早速家から学校まで走って来てみたらどうだ?慣らしといた方がいいだろ」

「そだね…うん。ちょっと行って来る」

「気をつけるのよ〜!」

「はーいおばあちゃん!」

 おばあちゃんの言伝はちゃんと聞くけど、やっぱり今の僕にはこのバイクに乗れるのが楽しみで。

 まだちょっとおっかなびっくりだけど跨ったらエンジンを掛けて、ハンドルの所のスマホホルダーにナビを点けたスマホをセットして、学校までの道を走り始めたんだ。


「…道が結構空いてて走り易いなぁ」

 走り始めて二十分位。元いた街とは違って、何車線もある大きな幹線道路みたいなのは無いけど、程々に車が通ってて、見通しの良い道が出て来た。

「ココが郵便局でコッチが交番か」

 おじいちゃん家は流石に山奥だったけど、この辺りまでこうやってバイクで来られるなら不便でも無いかな?

「えっと…僕の行く高校は確かこの先の交差点を右折して…?」

 ナビの順路を見て、もう直ぐなのを確認する。

 すると、曲がった先の道の方から、制服を来た人達が沢山歩いて来た。

「あの制服…確か僕が行く高校の…じゃあやっぱりもうすぐそこだ」

 安堵して右折。対向車も二台位しか来なくて曲がり易い道だなぁ。

 おっと、でも渡ろうとしてる高校生が居るから横断歩道の手前で止まらないとね。

「よし。じゃあとは…あ、見えた」

 右折したら、直ぐ先の脇道を斜めに左折すれば、まだ少し遠いけど、視界に新しい高校が見えた。

 良かった。コレで一安心……?

「あ、なんか…凄いカッコの人達だな」

 目の前から歩いて来た、派手な格好をした人達。 

 その、お化粧が濃いっていうか、肌の露出も多いっていうか、髪の色も凄く明るい人達。

 いわゆるギャルの人達かな。ココまでコテコテな人達は初めて見るけど…。

「(まぁ…僕は関わり合いにならないまま卒業しそうだなぁ)」

 なんて、思って通り過ぎたら、遠くの対向車のスクーターの動きが、やけに気になった。

 ノロノロノロノロ。幾ら原付でも少し遅すぎる。

 明らかに、ワザと遅く走ってる動きだ。

「…何か、嫌な予感がす「ちょっ!!!何すんだよぉ!!!」!?あっ!」

 考えてたら数秒、後ろから女の人の驚いた声。

 振り返ればあのスクーターの運転手が、あのギャルの人達の一人から鞄を引ったくって、走り去ろうとしてたところだった。

「いった!?おいお前ふざけんなよマジでェ!!」

「裕美子大丈夫か!?」

「ましろぉ…あーどうしよう…あのバッグおばあちゃんから貰った財布入ってんのにぃ…」

「ちょ、あーし走って取り返してくっから!」

「無理だよ姫奈ぁ!」

 いきなりの出来事に、慌てたり怒ったり悲しんでるギャルの人達。

 関わり合いにならない気がしてたけど、でも…もしかしたら、こういう事で、関わる事もあるかもしれない。

「えっと…右にウインカー出して、ハンドルを思いっきり切って、シートの外側の角に座る様にして回れば…出来た!」

 気付いたら、Uターンをしてた。

「っ…」

「あ…」

 女の子達も追い抜きながら、一目散で追いかけ始めてた。擦れ違う時に、一瞬だけ目が合って。

 免許を取って、初めて公道でバイクに乗った日なのに、なんでこんな事してるのかなって思ったけど、でも僕は、ココでUターンしない考えが、その時は全く無かったのを、良く覚えてるんだ。



「えっと何処…あ!居た!」

「…」

「どうしようクラクションを鳴らし……たら逃げられちゃうよね」

 入って来た脇道を右折して、暫く走ったらもう居たスクーター。

 相手も125c cだけどコッチの加速が良いお陰で直ぐに追い付けた。でも余り近付き過ぎたら気付かれて逃げられちゃうだろうし…。

「どうし…!しまった!」

 迷ってる間に気付いたのかもしれなくて、一気にスピード上げるスクーター。ナンバーは隠されてて、証拠の印が殆ど無い。

 このままだと土地勘活かして逃げられちゃうかも…。

「なら、その前に…ちょっと飛ばそう…!ゴメンおばあちゃん!」

 ギアを六速まで上げて、アクセルを全開で加速した。

 初めてで首が後ろに置いてかれそうな感じだったけど、お陰で…。

「ーーーっ!!返せーッ!!!」

「ッーー!?」

 追い抜き様に左腕伸ばして、思いっきりバッグを引っ張った。

 どうにか取り返せたけど、スクーターは怒ったのか取り返しに来ようと迫って来た。

 でも…ココは…。

「ッ…」

「残念だけど…交番の前だよ」

 逃げてく引ったくり犯。このまま追いかけようかとも思ったけど、先ずはコレを、隣のココに、届けないとだ。



「えっと、お兄さんが、バイクでひったくり犯から、このバッグを取り返したって事?」

「そういう…事ですね」

「お兄さん凄く勘違いされそうな事してるね…」

「まぁでも、自分から交番に行くひったくり犯も居ないでしょうし…」

 交番にそのまま届け出て、事情を色々説明する。多分…もしかしてだけど…。

「それもそうだよね…とりあえず「あーー!裕美子のバッグー!」?もしかして…」

「あ、僕はそろそろコレで「おめーかよ!裕美子のバッグひったくったのはよぉ!」あぁ〜やっぱり〜お巡りさぁ〜ん」

「だからややこしくなるって言ったでしょ…」

 ギャルの女の子達がドバッと交番に雪崩れ込んで来たら、その中の金髪の女の子に思い切り胸倉を掴まれてしまった。

 案の定、僕を犯人だと思ってしまってるみたいだ。またお巡りさんにした説明をしなきゃいけなくなっちゃったかな…。

「あの、僕は「真白ちょい待ち。犯人が交番来る訳無いっしょ」あっ…」

「あー…それもそっか…」

「それにそこに停めてあるバイク、さっきのひったくりヤローの原チャじゃないし」

「確かに…」

 銀髪のポニーテールで、日焼けした褐色肌の女の子、さっきは良く確認しなかったけど、少しだけ目が合ったバッグを取られちゃった本人の子が、冷静に友達を宥めてくれた。良かった…。

「とりあえず…説明します…ね?」


「マジでゴメンッ!!」

「ああいや!僕も紛らわしい事してごめんなさい!」

 パンって大きな音立てて両掌を合わせて謝ってくれた金髪の女の子。

 少なくとも誤解は解けたみたいで良かった…。

「ていうか…キミ、さっきアタシら追い抜いてったバイクの人だよね?」

「ああ…ハイ。分かり…ました?」

「まーね。そっか…ありがと」

 ニコって笑って、お礼を言ってくれた銀髪の女の子。

 お化粧は派手だけど、笑うと穏やかな顔に見えるんだな、ギャルの人達も。

「にしてもやるね〜キミ。そんな草食顔で根性あんじゃん〜」

「姫奈、馴れ馴れしくすんなし」

「あはは…」

 赤い髪の人に頭ポンポンされて褒められてるのを銀髪の人が宥めてて。やっぱりギャルの人達って距離の詰め方が早いなぁなんて思ったりした。

「そういえば中身は大丈夫ですか?おばあちゃんからのっていう…」

「ああ、うん、ちゃんと入って……てか何で知ってんだし…」

「あ、ごめんなさい、盗られた時近くに居たから、結構おっきな声で聞こえちゃって…」

「マジか…ハズ…」  

「でも、あったなら良かったです」

「うん…ホントありがとね」

 ペコってお辞儀してくれた銀髪の人。なんか…凄い恥ずかしそうな感じだ。

 何にせよ、何も盗られなくて本当に良かった。

「ゆみこ〜顔赤くね〜?」

「キュンでーす?」

「ばーかそんなんじゃねーし…良いからもう行くよ」

「あ、ちょっと待ってね。取り敢えず調書必要だから」

「あ、ハイ…」

話が纏まりかけたところで、お巡りさんにちゃんと色々聞かれ始めた僕達だった。




「ん。取り敢えずこんな所かな。それじゃ四人共気をつけて帰りなさい」

『はーい』

 30分位掛かって、漸く解放された僕達。もう日も大分沈み始めたから、皆そそくさと帰る準備だ。

「あ、そういえば」

「?」

「アンタ…アタシらと同い年位に見るケド、何処高?」

「あー僕、今日引っ越して来たばかりで、明日、皆さんの高校に、転校する予定なんです…」

 帰り際に銀髪の人が訊ねて来た。確かに高校一つしかないから、見慣れない僕はちょっと浮いてるよね…。

「マジ?って事はもしかしてウチ等とタメなん?」

「姫奈ガッついてんじゃねーし」

「あんだよ真白もちょっと面白がってん顔してんじゃんよー」 

「そりゃおもしれーべ」

「お前ら楽しんでんなよ…ゴメンね。アタマは軽いけど根は良いやつらだから許して」

「ああいや…」

 ケラケラ笑う赤髪の人と金髪の人を嗜める銀髪の人。

 この人がリーダーっていうか纏め役の人みたいだ。

 なんか…三人仲良さそうで良いな。

 僕も…明日からの学校で、仲良い友達、出来る…かな。 

「そうだ、名前何?」

「僕の…ですか?」

「それ以外無いっしょ」

「あっ…結城…壱正です」

「いちまさか。わかった。じゃあ…バイバイ」

「はい」

 小さく手を振ってくれて、帰ってった女の子達。

 僕はそれ以上に小さく手を振って、一応姿が見えなくなるまで手を見送った後、漸くバイクのエンジンを掛けて帰った。

 転校前から一騒動でちょっと大変だったけど、転校前に知り合いが出来たのは…良かったかな…?

「まぁでも…ああいう子達とは、学校じゃ関わり合いにはなれないよね…あはは…」

 なんてちょっと、自虐的に思ったのだけれど。

 因みに、帰ったらおばあちゃんに大分心配されちゃって、ちょっと申し訳ない気持ちにもなったりしたんだけどね。




 転校当日。午前中はつつがなく自己紹介とか、色々当たり障りの無い対応で、クラスに馴染むのを頑張ってた。

 そんな中での昼休み。母さんから貰った昼食代で、僕は何処でご飯食べようかななんて思ってた所で、とりあえず購買へ向かったんだけど…。

「うわぁ…人凄いなぁ…買えるかな…」

 購買も学食もごった返してて、全然レジまで辿り着ける気がしなかった。

 この街は高校が一つしかないけど、それでもそこに沢山の生徒が居るから、そりゃこんな風にもなるよね…。

「どうしよう…待ってたらお昼休み終わっちゃうよ「よっ!いっくん!」…へ?」

「いっちーウチの学食今から並んでもムダだぞー?ウチらと食おーぜ!な?裕美子」

「う…壱正…ちょっと…用あんだけどついて来てくんない…?」

「あ…皆さん!」

 後ろから肩を思いっきり叩かれたと思ったら、昨日の赤い髪の女の子。

 勿論金髪の子に銀髪のあの人も居て、意外にも早く、再会の時は訪れたんだ。


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