表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
グリーンスクール - 主人公  作者: 辻澤 あきら
8/23

主人公-8


          *


 バックネット裏に立った仙貴は、活気のある愛球会の面々の中でも、駆けめぐるしのぶと朝夢見の姿を目で追っていた。

 練習終了後、ゆっくりとグラウンドに入ってきた仙貴に、朝夢見はいち早く気づいた。

「どうしたの、仙貴?」あゆみ

「いや、朝夢見が、クラブに入ったって聞いたから」仙貴

「見にきたの?」あゆみ

「まぁね。やぁ、しのぶちゃんも、入ったんだね」仙貴

「ぅん」しのぶ

しのぶは泥だらけの姿が少し恥ずかしく、はにかみながら答えた。

「よかったら、仙貴もどう?」あゆみ

「ふふ。野球、っか」仙貴

「嫌い?」あゆみ

「打つくらいなら」仙貴

仙貴は近くにあったバットを掴んだ。

「いいわよ、投げてあげようか?」あゆみ

朝夢見はそう言うとマウンドに駆けていった。そして、池田を呼んだ。

「ちょっと、捕ってくれない?」あゆみ

「ぅ、うん」池田

池田は、言われるままに座った。

「いくわよ」あゆみ

 大きく振りかぶった朝夢見の左腕から繰り出された速球は、重い音を響かせてミットに飛び込んだ。と、池田は、体勢を崩して倒れた。唖然とする周りとは裏腹に朝夢見は、ニコニコしながら、平然と言った。

「どうしたの、仙貴。打てないの?」あゆみ

言われた仙貴もにやにやしたまま、

「いや、大丈夫だよ」と答えた。

ボールが池田から朝夢見に返った。朝夢見は、注目の集まる中で、ゆっくりと振りかぶって、投げた。剛速球がキャッチャーミットに収まった。池田は辛うじて支えることができた。しかし、掌はじんじん痺れて、しばらく動けなかった。

「なんだよ、あの球は」山本

「サンディより速いんじゃない」小林

「バカ、江川より速いよ」高松


 朝夢見はボールを受け取って、次の投球動作に入った。仙貴のフォームに緊張が走った。朝夢見が投げた。剛速球。仙貴が振った。と、快音を放って、ボールは高々と舞い上がり、バックスクリーン、スコアボードを直撃した。

 感嘆の声が漏れた。朝夢見もバックスクリーンを仰いで、ボールの行方を見つめていた。が、ホームに振り返ったその顔には、笑顔が溢れていた。

「やるわね」あゆみ

「まぁ、よく飛んだね」仙貴

「じゃあ、本気でいくわよ」あゆみ

その言葉に池田は慌てた。

「ち、ちょっと待ってよ。これ以上速かったら、捕れないよ、俺」池田

「いいから、座ってなよ」仙貴

「いくわよ」あゆみ

完全に二人のペースだった。投げる朝夢見の剛速球。それに相対する仙貴のスイング。信じられないような剛速球に、仙貴は振り負けず合わせてきた。しかし、打球は、前に横に、飛んでいき、二人の対決は五分に見えた。

 注目を集めた対決は、二人の笑顔で幕を閉じた。仙貴は、笑みを浮かべたままバットを寝かし、朝夢見も笑顔でマウンドを降りた。

「さすがだね」仙貴

「なに言うのよ」あゆみ

二人が振り向くと、愛球会の面々は唖然とした表情で二人を見つめていた。

「どうしたの?」仙貴&あゆみ

「どうしたの、って」一同

朝夢見と仙貴は顔を見合わせて不思議がった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ