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公爵令嬢の矜持  作者: 大介
第1章 王立学園1年生
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アンジェリカ 貴族と平民と悪役令嬢

最近、視線が凄い集まってくる。

悪役令嬢なら多くの視線を集める事は問題無いけど。


多くの視線を集めているのは横にいるエイリーだ。

ブレンダの言った通りになりました。


エイリーは私の友達だから不埒な真似は決してさせない。

私は男達を威嚇するように歩く。


ここの所、悪役令嬢らしい事をしていない…。

学園生活は長いのだから焦る事は無いのだが、ブレンダに教えてもらった内容を自分で実践する事は出来ないだろうと内心では分かっている。


自分だけにしか出来ない悪役令嬢を目指そうと気持ちを入れ替えた。


そんな時に事件は起きた。

教室に入るとゴミ箱から教科書を拾っている男の子が目に入ったのだ。


本当にする人いるんだ。

「おはようございます、私はアンジェリカ。あなたの名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」


教科書を捨てられていた男の子は私の方に振り向くと

「おはようございます、お恥ずかしい所をお見せして申し訳ございません。僕の名前はロイです」


挨拶をあまりにも自然に返して来たので、もしかして初めて教科書を捨てられたのでは無いのかもしれないと思い聞いてみた。


「教科書を捨てられていた様ですが、今回が初めてですか?」

「いいえ。毎日、教科書をゴミ箱に捨てられているのです」


学園が始まって数日とはいえ毎日と聞き、流石にそれは問題だと思った。

「こんな事を聞いて良いか分かりませんが、どうして教科書を捨てられているのか分かりますか?」


この質問が来るのが分かっていたみたいだ。

「僕が平民だからです」


貴族の通う学園に平民がいるのですね。

少し疑問に感じましたが、貴族だけが通う学園とは聞いていませんから。

「どうやって平民がこの学園に通う事が出来たのですか?」


この質問は意外だったみたい。

少し間を置いて話し始めました。

「僕の両親が男爵様の家で文官として働かせてもらっているのです。それで今後の役に立つだろうと男爵様の推薦を頂いて入学する事になりました」


なるほどね。

貴族の推薦があれば平民も入学する事が出来るのですね。

「ところで、教科書を捨てた貴族の方は同じ1年生ですか?」


ロイはこの質問に答えるのを躊躇った。

これは問題児の予感がします。

「ロイ様、よろしければ私があなたの後ろ盾になっても構いませんよ?」


ロイは驚いているようだ。

私が後ろ盾になるのは驚かれる事かな?


「しかし、それではアンジェリカ様の名前に傷が付きます」

「問題ありません。私の名前に傷など、どれだけ付いて良いのです」


ロイは唖然としている。

やはり悪役令嬢は理解されませんね。

「アンジェリカ様のお考えが分かりませんが、問題無いのでしたらお話しします」


ロイの話を聞いて悪役令嬢として何をするのか決めた。

相手は同じ1年生、授業が終わるタイミングも一緒なので都合が良い。

「ロイ様、今日の授業が終わったタイミングで1年生全員に、私があなたの後ろ盾になったと伝えます。よろしいですか?」


ロイはまた驚いている。

1年生全員は予想外だったのかな?

「それは大丈夫なのでしょうか?」


私は自信満々に答えた。

「悪役令嬢アンジェリカ。全ての悪名を集めて見せます」


私は自分が言っている事を考えた。

かなりおかしな事を言っているよね?

それなのにロイは普通に話してくれたよ。

「僕からはこれ以上何も言う事はありません。アンジェリカ様にお任せします」


お任せと聞き、やる気が出てきました。

「あと、ロイ様も私が後ろ盾になるのですから、アンジェと私の事をお呼び下さい」

「分かりました。アンジェ様と呼ばせて頂きます。僕の事はロイと呼び捨てにして下さい」


そして授業が終わり教師が部屋を出て行った。

生徒が退室しようと動き始めた所で声をかける。

「1年生の皆様、お話がありますので少しだけ私にお付き合い下さい。本日、私はロイ様の教科書が捨てられていた現場を目撃しました」


この言葉で犯人の貴族は内心冷や汗ものに違いない。

「ロイ様が学園にいるのは何ら問題無く、私達と同じ授業を受ける資格をお持ちです」


皆の視線が集まる。

「ロイ様の教科書は今日限り私が用意した物に替えさせて頂きます。教科書には公爵家の家紋が入っておりますので、何かあった際は公爵家に敵対したと判断させて頂きます」


皆の視線か心地良くなってきました。

「本来、貴族たるもの自分の領土に住む平民を守るのが務め。それを忘れ貴族は偉いからと平民を蔑むような行為を私は許しません。ここにいる皆様にはそんな事をする方はいないと考えておりますが念のため、忠告させて頂きました」


みんな私にくぎ付けだ。

きっと貴族らしくないと考えているのだろう。

私は悪役令嬢、普通の貴族とは違う事を皆に理解してもらえた良い機会になった。

「皆様の貴重なお時間を頂きありがとうございます。私からのお話は以上です」


話の後、すぐに退室する者。

数人で集まってコソコソ話す者など教室は騒然とした。


今が絶好の機会です!

悪役令嬢らしく振舞うチャンスだと考えました。

「エイリー、ロイ、帰りますわよ」


皆が騒然としてる教室の中、堂々と視線を集めて帰っていく。

ふふふ、今日は収穫ありですね。


ここで一人の男の子が呟いた。

(アンジェリカ、君は最高に面白いね)


誰かが私の名前を呟いた気がしますが、悪役令嬢ですから無視で良いでしょう。

教科書をゴミ箱に捨てていたのは、彼を推薦した男爵家の息子です。

自分の家が平民を推薦したことに腹を立て、嫌がらせをしていました。

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