アンジェリカ 悪役令嬢に一歩前進?
入学式で驚かされました。
まさか、ただのクズ王子だとは。
頭を切り替えないといけませんね。
授業初日、何事も初めが肝心と言いますから。
さて…、何をしましょう。
あら?
授業まで時間があるのに教室が騒がしいですね。
何かあるのでしょうか?
喧嘩をしているみたいです。
でも人数が多いですね、派閥の方達でしょうか?
大勢で1人を囲んでいるようです。
「あなたみたい子が何故、この学園に入学しているのかしら?はっきり言って我が家の名を汚すだけです。早々に退学しなさい」
あれ?
必死になって色々と考えてきた言葉が既に使われている?
これを許しては悪役令嬢の資格がありませんね。
「そこのあなた達、何をしているのかしら?」
私の言葉で数人がこちらを振り向きます。
1人だけ席に座っていて、俯いたままなのが気になります。
彼女の前にいるのが先程から話していた人でしょうか?
「私はアンジェリカでございます。あなたの名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「私はアディ伯爵家長女、アイリーンでございます」
なるほど。
他の方達は爵位が下位の取り巻きですね。
「アイリーン様?今なにをなさっているのですか?座っている女性に対して退学を促していた様に聞こえましたが」
アイリーンは私を仲間に出来ると考えたのでしょう。
「アンジェリカ様ならご理解頂けると思います。このエイリーンは妾の子、本来であれば学園に通うような身分ではございません」
妾の子が学園に通っていけないとは聞いた事がありません。
「現在通っているのは何故でしょうか?」
アイリーンは忌々し気に
「エイリーンの母が亡くなったのを不憫に思ったお父様が、少しでも償いになればと学園に通わせたのです」
気になる点があります。
「学園に通わせるのが償いになるのですか?」
理由は父親から聞かされていたのでしょう。
エイリーンを小馬鹿にしている様に答えました。
「適当な相手と結婚をさせて、少しでも良い暮らしをさせてあげたいと考えている様ですが、おかしな話ですわ。エイリーンに靡く男がいる訳が無いと見れば分かるではありませんか」
エイリーンは化粧もしてない様ですし服もボロボロです。
しかし、良く見ると綺麗な顔をしていると思います。
あえて顔を隠している様にしか見えません。
「確かに貴族の女性としては不合格と言って差し支えないかと思います」
私の話を賛成と取ったのでしょう。
「アンジェリカ様もそうおっしゃっているの。恥をかく前に退学しなさい」
恥ですか。
それは面白いですね。
「エイリーン様、あなたに聞きたい事があります。よろしいですか?」
エイリーンは少しビクッとしてから答えました。
「はい、何でございましょう?」
「あなたは、ご自分がこの学園で恥をかくと認識されているのですか?」
私の質問にエイリーンは少し口ごもった後に
「私は、貴族としては確かに未熟で恥をかくことがあるかと思います」
なるほど。
それは良いですね。
「それでは、あなたの恥は全て私の責任としなさい。問題が起きた際、公爵家アンジェリカが後ろ盾になっているとお答えになって下さって構いません」
私の答えを聞いてアイリーンが飛び付いてきました。
「それならば、問題を起こさない私の方がアンジェリカ様に相応しいのでは?」
本当にそうなのかしら?
「あなたは家が大切なのでしょう?家名が落ちる事になっても良いのですか?私は公爵家の名など気にせずに落ちる所まで落とせば良いと考えていますよ?」
アイリーンは私の言葉が意外だったのか少し困惑気味ですね。
「アンジェリカ様は公爵家、貴族の代表ではありませんか!それなのに家名が落ちることを望みますの?」
やはり困る様ですね。
「当然です。今までの常識など私には通用しないと思いなさい。どうしますか?」
アイリーンはやはり家名が大切な様です。
「アンジェリカ様の考えには付いて行けそうもございません」
そうでしょう。
悪役令嬢たる私の考えに付いて来れる方などいる訳がありません。
「エイリーン様、あなたは私の派閥に入って頂きます。よろしいですか?」
エイリーンはやはり口ごもった後
「私の至らない所を全て庇って頂けるのであれば是非もありません」
問題児1人確保ですね。
想定外の流れですが良しとしましょう。
「エイリーン様は私の派閥の一員という事になりました。学園から退学などさせませんのでご了承下さいませ」
アイリーンは口惜しそうに告げます。
「アンジェリカ様、絶対に後悔なさいますよ」
アイリーンの言葉に嬉しさが込み上げてきます。
「それは楽しみでございます」
エイリーンを綺麗に整える必要がありますね。
「エイリーン様は私の派閥に入るのですから今日の放課後、私の部屋に来なさい」
「はい、かしこまりました」
やって来ましたね。
「お嬢様、エイリーン様がお見えになりました」
「エイリーン様、今後はエイリーと呼んでも良いですか?」
「もちろん問題ありません」
「私の事はアンジェとお呼びください」
突然ブレンダからストップがかかりました。
「お待ち下さい、お嬢様。エイリーン様がアンジェと呼ぶと、かなり問題になるかと思われます」(天使の作戦ですね)
「問題になるのでしょう?私に相応しいではないですか」
「それをしてしまうと、エイリーン様だけが肩身の狭い思いをすることになってしまいますよ?」(天使は優しいのです)
それは駄目ですね。
私が守る必要があります。
「エイリー、あなたは私に付いて歩きなさい。それで問題無いでしょう?」
「確かに、お嬢様に常に付いていれば問題は起きにくいかと思いますが、大丈夫ですか?」(天使に密着、羨ましいです)
「はいアンジェリカ様の後ろに常に付いて行動します」
「違いますアンジェです、復唱してください。それに後ろではなく横です」
「せめてアンジェ様と呼ばせて下さい。それに横になって歩く等…」
ふふふ、やはり問題児ですね。
簡単に言う事を聞いてはくれません。
「分かりました、その呼び方で構いません。ただし後ろでは守れませんので横です。それよりも何故、制服がボロボロなのですか?」
エイリーは悲しそうに呟いた。
「私に用意して頂けた服はこれだけでしたので」
なるほど。
計算通りです。
私の準備に抜かりはありません。
「ブレンダ、さっそく準備したものが役に立つ時が来ましたよ。エイリーの服を用意して差し上げて。手直しは明日の朝までに出来るでしょう?」
「もちろんでございます」(天使の無茶振り)
後は、エイリーの事をもう少し詳しく知っておきたいですね。
「エイリーは家でどのような事を言われましたか?」
「とにかく目立つ様な事は避けろと」
あまり目立って欲しくない。
つまり目立つだけで問題児ですね。
「エイリーの得意なものはなんですか?」
「得意なものはありません。私は本を読み、勉強をしている事しか出来ませんでしたから」
なるほど、テストで目立てそうですね。
「では、テストで1番を狙いなさい」
「それでは目立ってしまいます」
そうでしょう?
それで良いのです。
「構いません。公爵家アンジェリカの後ろ盾があれば問題等ございません」
「かしこまりました。テストでは全力で臨みます」
あと、口ごもる話し方と化粧も気になりますね。
「話す時はハキハキと、化粧もしっかりしなさい」
ブレンダにお願いしてしまいましょう。
「放課後、部屋に来てブレンダにメイクを教えてもらいなさい。ついでに発声練習も追加です。
ブレンダ出来ますね?」
「もちろんでございます」(天使の友愛)
「エイリーも問題無いわね?」
「はい。問題ありません」
授業初日としては及第点かしら。
これで悪役令嬢に一歩前進ですね。
アンジェリカ様は深窓のお嬢様なので少しずれてます。
そこが可愛い、天使です。 byブレンダ