閑話 ウォルター 帰宅予定
だいぶ王都も騒然としてきましたね。
兵長の動きも怪しいです。
まずは王都に流れている噂の真相を確認しておきますか。
「国王様、王妃様、王都では第2王子なる噂がありますが問題はありませんか?」
国王は不機嫌に即答する。
「第2王子など存在しない。そんなありえない噂にかまっている暇はない」
1日中暇な人間が良く言う。
「では、第2王子を大貴族が匿っているという噂についてはどうですか?」
またもや国王は不機嫌に即答する。
「私の忠臣に裏切り者などおらん。疑わしいのは公爵家だけよ」
公爵家の私を前にして…。
本当に頭の悪い人は扱いが難しい。
「現実に王国兵の中に怪しい動きをしている者がいるようですが?」
私の言葉を聞いた王妃が、何か思い当たる事があるのか話し出した。
「やはり、裏切り者がいるようですね。私の実家、去年起こったダグラス侯爵家を公爵家に粛正させ様としたのも、その貴族の可能性が高そうです」
「何か狙われる要素でもあるのですか?」
私の言葉を聞いて何が可笑しかったのか王妃は笑っている。
「秘密裏に側室を匿っていたのですよ。おそらく馬鹿なリチャードが漏らしたのでしょう。第2王子を表に出す為には側室の存在が邪魔でしょうからね」
王妃が側室を匿うのは不自然ですが?
「あなたの宿敵じゃないですか?なぜ匿う真似を?」
王妃が横を向いて笑っている。
「夫は子供を作る事が出来ないからですよ。流石に同じ女としてお役目として呼ばれたのに役目が無い何て可哀想でね」
何と、第1王子が誕生して間もなくの事、ご機嫌でお酒に酔った国王は階段で転倒、股間を角で強打し玉無しになってしまったそうだ。
あまりにも恥ずかしい国家機密だ。
よく隠し通せたものだ。
王妃の力かな?
今、暗躍している貴族ですら想像出来無いだろう。
第2王子の可能性すら無かったとは…。
王妃に考えがあるようだ。
「ガードナー家に王国兵を派兵すべきでしょう」
国王はまだ不機嫌だ。
秘密をばらされたからかな?
「一番の忠臣だぞ?」
王妃が直ぐに反論する。
「第2王子を匿ったと言う為には城に何度も上がっている必要があります。それに最初の噂が10歳の第2王子だった事から考えても、かなり長期的な計画を立てているはず。該当する貴族はガードナー家しか無いわ」
国王はまだ不機嫌だ。
常に不機嫌に見える顔付きなだけだったかな?
「あやつ今まで良くしてやったのに裏切りおったか。今すぐ出兵だ!」
しかも短慮。
出兵ですがどうなる事やら。
「では王国兵を広間に集めて来ます。国王様より出兵のご命令をお願いします」
国王は「早く動け」とか喚いていますが自分の事を棚に上げ過ぎですね。
総勢500名、ただ飯喰らいの王国兵。
どうなる事でしょう…。
「聞け、我が精鋭たちよ。ガードナー侯爵家が王家乗っ取りを企み、存在しない第2王子を作り上げ王位簒奪を狙っておる。直ちに向かい制圧せよ。当主ブライアンは必ず討て」
「かしこまりました。直ちに向かいます」
兵長の声と共に500名がガードナー侯爵家に向かい、そして何も起こらなかった。
国王は何時もの顔だ。
やはり何時もあの顔付きなのだな。
「どうなっておる。何故、何の音沙汰も無い。宰相、確認してまいれ」
前にも思ったが宰相の仕事ではないでしょう。
まぁ城から出れるから良いですけどね。
「では、確認に向かいます」
国王は「とっとと動け」とか喚いてますが、たまには自分も動きなさい。
さて、ガードナー侯爵家はどうなっていますかね。
おやおや、庭で立食パーティーですか。
王国兵の皆様も食べる事だけは立派に出来る様です。
とにかく報告に戻るか。
「どうだった」
もう、その顔は見飽きましたよ。
他の表情は無いのですか?
「庭で立食パーティーをしていましたので寝返りましたね」
「前々から怪しいと思っておったが遂に尻尾を出しおったか」
国王は馬鹿なんだろう。
私の予想以上に。
「都民から兵を集める。至急、募集をかけろ!」
ほら、やっぱり私の予想を上回る。
都民からの評価を知らないのだろうか?
「何時頃、何処に集まる様にしますか?」
「明日の昼、噴水前だ。1人金貨1枚出すと伝えて来い!」
そもそも、どうやって都民に声をかけるのか。
気晴らしに繁華街でも散歩しながら声でもかけてきますか。
「では、出発します」
恐らく人から人に伝わって5000人以上には伝わったはずだ。
「およそ5000人以上には伝わったと思われます」
「ご苦労。くっくっく、明日が楽しみだな」
私も楽しみにしていますよ。
王族の評価が目に見えるので。
そして翌日の昼。
国王は噴水前に堂々と歩いて行き、誰もいないのを見て静かに帰って行った。
「おい、今偉そうな服着た奴、噴水の所にいなかったか?」
「もしかして昨日の話で国王が見に来たか?」
「そこまで馬鹿じゃないだろ?集まる訳がない」
「「「だよなー!ははは」」」
(私も楽しませて頂きました。城に戻りましょう)
「宰相、誰もいないぞ。どういう事だ!」
「それが都民の答えなのでしょう」
国王はいつもうるさいな。
「じゃあ誰が俺を守るんだ?」
「ご自分で守って下さい」
あ、ついに本音が出てしまった。
「何の為にお前がここにいる?」
「公爵家への人質のつもりでは?」
「じゃあ公爵家をここに呼べ」
「公爵家に王家を滅ぼして欲しいのですか?」
「お前を人質にすれば良いだけだ」
「私に人質の価値などありませんよ。知りませんでしたか?私の両親や兄弟達を皆殺しにしたのは愛娘なんですよ。公爵家は民を第一に考えています。私の命では止まりません」
国王は茫然としている。
王妃は何か考えているのだろう。
ぶつぶつ呟いている。
幽閉している第1王子の事は忘れてしまっても問題無いですね。
まだ生きていますよね?
私も家に帰りましょう。
いや、その前に2人の娘に会いに行きますか。
こうしてお城は静かになりました。
階段で転んだ時、手術する必要はありませんでしたが、王妃が医者を脅しました。




