アンジェリカ 悪役令嬢の誕生
お茶会の後、直ぐにお父様のもとに向かった。
「お父様、何故あの王子の婚約者が私なのでしょうか?」
お父様は苦い表情です。
「王家の体裁を保つ為だ。アドルフ王子は確実に上位の貴族令嬢と結婚は出来ないだろう。それを王家の恥と考えた国王が今回の婚約話を持ってきた」
お父様の表情を見ていたら、それだけでは無い気がします。
「本当にそれだけのお話でした?私を生け贄に出した見返りは何も無かったのですか?」
お父様の表情がさらに苦くなります。
「宰相の地位を約束して頂いた。2人の婚約が発表された今、私は宰相になる」
お父様に権力欲などあるとは思っておりませんでしたが、違ったのでしょうか?
「宰相の地位がそれほど魅力的でしたか?娘を娼館に売ってでも手に入れたい程でした?」
少しがっかりした表情でお父様に話しましたが、お父様が直ぐに反論されました。
「違う!決してアンジェを売りたかった訳では無い。こうしないと、王国の存続に関わる為、必要な措置だったのだ」
王国の存続という言葉を聞いて
「公爵令嬢に次世代の王子を産んでもらう必要があったのですか?」
お父様は観念したのか、現在の状況を教えて下さいました。
「アドルフ王子の醜聞はあまりにも酷い為、貴族派閥がこのままでは黙っていないだろう。王子を国王とする為には地位のある家の娘でなければならない。アドルフ王子はあくまで繋ぎだ。国王としての役割は期待されていない。国王となるのは君との間に産まれた子である必要がある。アンジェには国母として、立派な王子を育ててもらいたい。本当にすまない」
お父様に本音を話しました。
「私は顔合わせで妾候補の1人目と言われました。婚約者も娼婦も変わりないともおっしゃられました。それに私の体の成長が楽しみだそうです。それでもお父様はこの婚約に賛成なさるのですか?」
お父様は、私の顔を見て下さいません。
「すまない。本当にすまない」
分かりました。
多くの大人がいて、たくさんの知恵を絞った結果が私1人の犠牲で良しとするならば…。
この国の為に犠牲になるつもりなどございません。
例えこの国が滅びようとも王子との結婚だけはありえません。
公爵令嬢アンジェリカ。
いいえ、今日から私は悪役令嬢アンジェリカです。
私の存在が王国として問題になるように。
そして王家側から婚約破棄を告げられるように行動してご覧に入れましょう。
悪役令嬢アンジェリカの誕生です。
彼女は本当に悪になりきれるのでしょうか?