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その村で起きた惨劇の話は、最終的には少女が拿捕される所で終わって居る。
魔女を信じていた少女たちがその後どうなったかは分からないが、以前にも増してその村は平穏さが漂っていたという。
誰もが恐怖心で口を利かなくなり、常に魔女に監視されているかもしれないという被害妄想を抱いていた住人たち。
惨劇が起きてからかなり長い年月が経ってから、その惨劇は殆どの人は忘れているという。
アリシアは協会で偶然入手したベルウッドの歴史資料を見て、当時の惨劇を知ったらしい。
正式には魔女は重大な疾病を防いだ村の英雄と称されているが、その中で魔女を崇拝していた少女は殺人を繰り返した。
その惨劇よりも、協会にとっては疾病を防いだ事の方が重要みたいだ。
魔法使いですら防ぐのが難しかったその疾病を予防し治療する事ができたためだろう。
「魔女に関しては今はもう情報が殆どないし、少女たちの記録も殆ど無いわね。疾病の治療法も確立されているから、また再度似たようなことで人が死ぬ事はないから。今はほとんど怪談みたいになっているけれど。」
怪談のネタとして消費されるようになった魔女の話は、更に誇張されて魔女本人が復活したり謎の悪魔が人間を襲うようになっていく。
ベルウッドにはそんな被害は無論記録されていないため、嘘ではあるのは保障できるけれど。
「魔女が凄いのは分かったけれど。あまり平和的ではないんだな。もう少しファンタジーな世界だと思っていたけど。」
「貴方が住んでいた場所がどういう所かは知らないけれど、基本的には魔法使いによって監視される以上はあまり自由ができないのは事実よ。だから、無能力者に関しては悪だくみはすぐにばれてしまう。例え貧困層があったとしても、そこでもし妙な事を考えている人間たちが居ればそこで制裁が下されてしまう。
ただ、中には魔法使いが無能力者を利用して他の魔法使いの風評被害を企む人も居るし。似たような力を持っている人間同士でも決して仲がいいわけではないわね。」
「あまり楽にはなれそうにない世界だな・・。その魔法使いの監視って、防げるものか?」
「透視魔法の場合、相手が魔法使いであればすぐにバレるし。使い魔に関しても不自然な動きをしている動物が居れば射殺すればいいもの。最近は村全体に結界を覆っている所もあるから、魔法による権利の侵害を防ぐ試みは行われているけど。」
魔法使いに対するセキュリティが強化される事は自然な事ではあるけれど、考えている事は普通の人間とはそう変わらないというわけだろう。
その気になれば、魔法使いは一方的に無能力者を蹂躙する事ができる。
例えどんなに無能力者の権力があったとしても、魔法使いにとって魔法の力を持たない存在は赤子みたいなものだ。
「なかなか酷い話は聞かせてもらったけど、魔法使いって実は嫌な奴だらけなのか?」
「さぁ。何処にでも悪い人は居るわよ。大体、貴方を突然攫った女の子たちだって善人ではないでしょう?」
「ミーアは、見た目はかなり可愛い女の子だと思うけれど。」
「そんな事を言っていると最終的に全裸になって裏路地に捨てられるわよ。基本的に彼女たちだって別に貴方の事は役に立たない無能力者としか思っていないもの。」
確かにアリシアの言う通りなのかもしれないけれど、ミーアに関してはそこまで悪者ではないと思いたい。




