○7
ベルウッドの外観は綺麗で、観光地としても素晴らしいとアリシアは言う。
しかし、最近近くの山で危険な魔物が発見され住民が怯えて暮らすようになったのは最近のこと。
「ところで、貴方は基礎知識はどれぐらいあるの?」
「この世界のことはよく知らないよ。」
「金銭の使い方や食事のマナーは?」
「さすがにそれくらい分かる。」
「そう。安心したわ。」
「一体お前は僕をなんだと。」
「だって。抵抗せずに奴隷になることを受け入れたじゃない。それだけ、実はかなり危ない人の可能性だってあるわ。」
「もしかして、奴隷になる事自体はやばい事なのか?」
「奴隷の言葉は分かるくせにそういった中身は知らないなんて。変わった人ね。笑い話にはなりそうだけど、あまり変なことはしないように。一応、仕事中の身だから。」
まだ15のくせに大人っぽく見えるが、この世界では彼女はどこまで凄い存在なのか。
宿屋の中に入ると、すぐに宿屋の主人と思われる人がやってくるし。
「おお、アリシア様。おかえりなさい。そちらの方は?」
「私の新しい奴隷よ。」
「ど、奴隷ですか。」
「一応部屋を用意できる?後、新しい彼の服が欲しいわね。」
「なぜあのような服装を?」
「いいから早くなさい。」
「か、かしこまりました。たった今手配致します。」
そう言って彼は去る。
「もう少し丁寧にできないのかしら。客の持ち物に疑問を持つなんて。」
「別にホテルじゃないんだから。」
「はぁ。あまり時間が経つと評価が下がりそうね。魔物の方はともかく、屋敷はどうにかしないと。」
「屋敷の方は何か問題あるのか?」
「そうだけど。とりあえず貴方はここで待機してくれる?私はすぐに任務を終わらせたいの。」
「え?」
「え?って何よ。まさか、私と戦う気?」
「あ、まあそうだよな。僕だったら普通は最初の魔物で殺されてそうだよな。」
戦う気がある方が確かに間違いだろう。
しかし、それでも何か力があればいいのだが。そんな特殊なイベントは簡単には出てこないだろう。
「おまたせしました。彼に似合いそうな服です。」
主人が持ってきた服を渡される。
とりあえず、自分はこの服を着て部屋に入れば寒さには困らないだろう。
「すぐに出るのか?」
「ええ。貴方も、逃げようとしたらその首輪で痛い目にみるわよ。」
「どうなるんだ?」
「そうね。それは使ってのお楽しみ。」
そう言ったけれど、別に逃げようとしても無駄だからどうしようもない。
自分の部屋に案内され、僕はそこで服を着替える。
青いその服は自分によく似合っていた。