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ただ、僕からしてみればあまり説明してもらっていない部分も多い。
先ほどのエクレールが突然変な事を言って逃げたのも、そのエクレールが明らかに僕が持つ武器よりも強いアイテムを持っているのも。
僕が知らなくてもいいことかもしれないが、ただエクレール自身は聞いてほしくはないようにも感じた。
過去を聞いた時も一瞬エクレールは固まっていたし、あまりいい思い出が無いのかもしれない。
「あのさ。エクレールって、実は物凄く強い魔法使いだったりするのか?」
「・・・・。」
歩いている最中に話しかけてみたが、彼女はすぐには口を開かなかった。
「まぁ、事情が複雑かもしれないけど。一応、情報ぐらい聞いてもいいんじゃないか?」
「彼女は10歳の頃には協会に居て、私は初等訓練施設に居たから。正直知らないのよね。私が13から14の間に彼女と少し仕事をした事があったけれど。私が15歳になったその年にエクレールは協会から脱会。彼女が所有していた場違いの加工品は協会に没収されたの。元々彼女の所有物だったのに、本当に酷い人たちね。」
「その、場違いの加工品ってなんだ?」
「言葉通りよ。彼女が持っている武装、アクエリオンっていう名前みたいだけど。飾りみたいな物体から武器を形成する辺りの術式は解読不可能、その中にこの世界では使われていない可能性のある文字もあるから。技術的には現在作る事ができないという意味で、それは場違いの加工品と言われているの。」
その場違いの加工品をどうして持っているのか、ある意味謎だけれど。
「私が彼女の戦闘を最初見た時と、今のイメージはかなり違いはあるけれど。あれはもう協会によって監視されている状況だし。またエクレールが活躍できる可能性は無さそうね。」
「何か問題があるのか?」
「すぐに何かの理由で協会を脱会する人なんて何処にでもいるわ。危険な仕事だし、何時までも協会に居たい人なんて少数派でしょうね。」
「何か嫌なことでもあったのは事実なのか。」
「聞きたいの?」
「別に。いやならいいけどさ。」
「正直、私としては今のエクレールに戦ってほしくないのよね。そういう意味では、協会の判断は信頼を損ねた感じかしら。」
その協会はアリシアを助けるためにエクレールを特別に派遣したんじゃないか。
別に、何か危害を加えたりしているわけでもないのに。
「もし、エクレールが助けに来なかったらアリシアは大丈夫じゃなかったけど。」
「あんなもの、どうにかなっていたわ。大体、貴方が女の子と戦えないのだから、一方的に私に負担が回って来たのよね。」
明らかにあの三人は僕が本気で攻撃しないのを分かって居て行動していた。
そういう意味では、確かに僕にも責任の一端はあるんだろうけど。
「血生臭い世の中だな。もう少し平和だったらいいんだけど。」
「何それ、嫌味?」
これから先、また変な問題が起きたら僕はどう対処するべきだろうか。
というより、本気で戦った方がいいのか。そんな判断すらできていないけれど、平和を願っても悪くはないと思っている。




