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「結局これは戻って来たわけだけれど、またあの娘が襲ってくると困るわね。」
アリシアは大罪をまた自分の物にできたのはいいものの、前戦いでは三人を相手に苦戦していた。
ナガトの場合、相手が女の子なので明らかに本気で攻撃をする事は無かったが。それでも油断は多少はあっただろう。
「三人に負けそうになったけど、エクレールのおかげで何とかなっただろ。」
「そう。まぁ、確かにそうだろうけど。いまいち納得できないわね。」
下手をすれば彼女はまた生死を彷徨う事になったのかもしれない。
その意味ではアリシアは二度もエクレールから命を救われた事になるわけだ。
「アリシア、女の子なんだから無理はしないでね。」
「貴方もでしょう?大体、あの武装こそ反則じゃない。協会に秘匿されている場違いの加工品、あれをまた貴方が扱うなんてどういう理屈なの?」
「ユリナさんから、非常事態宣言を受けて・・それに、あれを使うのはもうあれで最後だと思う。」
「まぁ、今回の戦いについてはエクレールのおかげでなんとかなったけど。明日からどうするの貴方?」
「え?」
「そもそもどうして貴方が家出しているのかは私知って居るんだから。」
「ん?私家出なんかしてないよ?」
「何言ってるの?スフレから既に聞いてるし、貴方他の貴族に対してパイを投げ込んだんでしょう?」
「あれは、その。わ、私を見る目がいやらしかったの!!」
「まぁ、エクレールのする事だからいいけど。明日から本当にどうする気?協会に入る気じゃないんでしょう?」
「うーん。何とか仕事を探してみます。」
「これから先、貴方を見ていると少し不安になってくるわね。」
「何で?」
「貴方がまた変な事を起こさないのかよ。」
「大丈夫、昔みたいにいつもアレを持ってるわけじゃないし。」
「はぁ・・それもそうね。」
「でも、どうしよう。もし見つかったら私は・・・。」
「そうなったらナガトを盾にしてみたら?」
「何で?」
「何でって・・。」
エクレールが家出の最中だということはいいけど、このまま彼女がどうやって生活できるかは謎だ。
「私、これから自分の夢を探したいんです。だから、アリシアも気にしないで。」
「夢って?」
「そう。例えば私が世界に称賛されるアイドルになれたら・・。」
「ちょっとエクレール?話をはぐらかそうとしてない?」
「だから、大人になりきれていない私を止めないで!私だって女の子なんだから!!」
突然意味不明な事を言い出してエクレールは走り出し、会議室を出て行った。
僕とアリシアは茫然とした状態で居たが、多分エクレールも疲れているに違いない。
「そんなに嫌なのね。ケッコン。」
「じゃぁ、破棄すればいいんじゃないか?」
「それができたらいいけど。とりあえず私たちも戻りましょうか。武器は全部貴方が持ってくれる?」
そう言われ、高慢、暴食、無名の三つを担ぐことになった。武器である以上地味に重い。
なんていうか、また次の日も酷い目に遭いそうな気がしたが考えないようにしておこう。




