○6
アリシアが宿泊している宿屋が存在する村まで歩いていく。
「かなり寒いな。」
「何言ってるの。まだ11月よ?」
「11月!?なのにこんな寒いのか。」
「その反応からすると、本当に貴方はこの場所の人間じゃないわね。どこからか瞬間移動してきたって感じだけど。」
「アリシアはよく平気だな。」
軽装の鎧を着ているとはいえ、そこまで着込んではいない。
「そうね。これから先厳しくなるけど。魔法で何とかなるし。」
「寒中水泳していたときもだけど。よく風邪ひかないな。」
「まだ覚えていたの?本当、男はいやらしいわね。」
「いや、この寒さの中ではちょっと。」
「私のような人間となれば、あの程度は必須科目よ。湖で私のような騎士の身体を見たのだから。少しは喜びなさい。」
「自信ありすぎじゃないか?」
確かに偶然裸の女の子が水遊びしていた所を見てしまうのはロマンはあるけど。
僕があの湖に入れば凍死してしまう可能性はある。
「身体が痛くなる時はあるけど、それも魔法次第ね。」
「便利なんだな。魔法って。」
「別に大したものでもないけど。」
「僕を無能力者とか言ってたけど、他にも居るのか?」
「基本的には多数派よ。その大多数の無能力者を従い、自分の配下や奴隷にすることが私のような魔法騎士の特権なの。」
「何だか凄そうだけど。もしかして偉い人なのか?アリシアは。」
「多少はね。今はギルドの任務をこなして生活しているから、別に豪華な生活はしていないわ。」
「まだ15歳なんだよな。よく一人で仕事してるのか?」
「そうね。でも、これから先長い間ギルド協会に命令されるとなると。あまり気分は良くないわね。」
「普通ならどれぐらいギルド任務で生活できるんだ?」
「記録されている限り、最長50年ぐらいかしら。でも、人によっては最短一年以内で殉死を遂げるわね。」
「訴えられたりしないのかそれ。」
「危険な仕事だもの。建設現場で死ぬ人と同様、ギルド協会の任務の中で死ぬことは普通よ。一応、保険には入っているけど。」
「保険は一応あるんだ。」
「もし、私が死ぬようなことがあったら、貴方は守ってくれるかしら。」
「頑張ればアリシアがやってた魔法も使えるのか?」
「いいえ。無理ね。」
「えっと、とりあえずアリシアが危険な目にあったら僕も死ぬよ。」
「逃げないの?」
「今のところアリシア以外に頼れる人が居ない。」
「それもそうね。」
もうそろそろ村が見えてきた。
ベルウッドという小さな村が、ナガトが初めて訪れる人が住む場所だ。