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結界の中まで入って来たアリシアは確かに三つの武器を持っていた。
「まさかこんな所に居たなんて。」
「私たちは今、貴方の奴隷を人質に取って居る。返してほしければさっさと大罪を寄越せ。」
「ねぇ。先に聞いていいかしら、この武器って結局何なの?武器としてはランクが低いし、見た目だけの中身は意味不明なマジックアイテムじゃない。」
「おしゃべりしている時間は無いの。いいからそれを全部寄越せ。」
アリシアはそのまま暴食、そして無名の武器を地面に落とす。そして、彼女はそのまま高慢の柄を握り、魔力を流した。
その魔力の流れにより、剣が黒い渦に取り囲まれ暴風を起こした。
「何、あいつ使えるの!?テレジア!」
「あれ?そういえばあの人の持っている剣って高慢・・・。」
「・・・・・・・後でゆっくり話そうね。」
どうやら、テレジアはアリシアが持っていた剣が高慢だと気づいていなかったようだ。もしくは、忘れていたと言っていいのか・・。
「忘れてた・・。で、でも今ここで奪えばいいじゃない!」
「じゃぁさっさと前に出てよ。」
「うぅ・・・分かったわよ!!」
とりあえずリノンの一押しによってテレジアは前に移動した。
憤怒、それを構え魔力を発揮するものの目の前のアリシアに比べるとあまり勢いがない。
が、彼女たちに戦う前にリノンは自分が持つ嫉妬をナガトへ向けた。
「動かないで。別に戦う必要なんて最初からないもの。アリシア?こっちに人質が居ること忘れてる?」
突然、リノンは声を大きくだして言った。
「いきなり人を呼び捨てなんて、一体どういう教育受けてるのかしら・・。」
「この人を今すぐにでも危害はいれられるもの。そっちの馬鹿と違って私は容赦しないから。」
「だ、誰が馬鹿よ!?っていうかお兄ちゃんに手を出さないでって言ったじゃない!?」
「そんな言動聞くと思ってるの馬鹿猫・・。」
「ば、馬鹿って言う方が馬鹿なんだから!!ちょっとリノン!?」
杖の先に魔法陣が現れ、丸い光の弾が出現する。
近くに向けられるととんでもなく熱く、明らかに彼女は殺意を持っている気がした。
「さぁ、貴方が今持っている物も今すぐ渡して。でもなければ彼を・・。」
「・・・ふふふ。誰だか知らないけど、不敬にも程があるわ・・!!」
アリシアは柄を両手で持ち構える、その次に魔力がより総動員されていった。
僕が居る所までその魔力によって作られた暴風が来ており、彼女の魔力が段違いだということが分かる。
「嘘!?何あの魔力・・!?」
「私たちとレベルが違う・・!?でもそんな事をすればこの人だってただじゃすまない!」
確かにリノンの言う通りだが、アリシアは容赦はその魔力の渦を彼女たちに向けた。
「ナガト、おすわり!」
と、その一言で僕は地面へと強引にめり込んでしまった。というより、更に強い魔法が発揮して本当に地面に押しつぶされていくのは予想にしなかったが。
そのまま彼女は最大限に高まった魔力を彼女たちへ放出する。
純粋な魔力の塊、それを叩き込むというだけでも十分な影響力は出るだろう。
三人はすぐに散開し叩き込まれた渦を回避しようとした。その力はナガトにはギリギリ直撃せず、前方の木々を一方的に薙ぎ払っていった。
「あら、ナイスな回避するのね。」
回避、というよりはその渦によって吹き飛ばされていったと言うのが適切だが。まさかここまで威力があるとは思っていなかった。
とりあえず、ナガトの顔が土まみれになっている所を除けば、命は大丈夫だったのだけれど。
「無茶苦茶だ・・。」
「顔がおもしろいことになってるけど。」
「誰のせいだ!背中が無茶苦茶熱かったぞ!?」
「大丈夫、直撃さえしなければ死にはしないわ。」
それはあまり言い訳になっていない気はするが、他の三人もとりあえず無事なようだ。
ふと、ナガトはいつの間にかアリシアの背後にリノンが居たのを理解した。
「この、化物・・!!」
杖の先に現れる光の刃を、彼女へ向けた。
しかし、それはすぐに察知したアリシアによって防がれる。
「誰が化物よ。」
「こんなの絶対に認められない・・貴方に、そんなにまでして・・業なんて無いはず。」
「貴方・・・何処かで。」
「いっそここで、強引にでも倒してあげる・・!」
「っ・・!?」
リノンはそのまま突撃し、彼女を倒そうと攻撃していく。
彼女の謎の執念に気おされそうになるが、しかしそこまで手強いわけではない。
その迫ってくる光の刃に対し、アリシアは左手の魔力で弾いた。
強引にも極まったパリィ、しかしそれが成功したからといってリノンに手が無いわけではない。
既に展開されていた魔法陣から、魔弾が発射されアリシアをかすめて飛んで行った。
そのせいでリノンを追撃するスピードが遅れてしまい、更に別の方向から飛んできたテレジアの一撃が来る。
それを何とか飛んで回避するアリシア。リノンに追撃されるかと思われていたが、その前に走って来たナガトが無名を回収し、彼女の攻撃を防いでいた。
「なっ・・!」
「アリシア、とりあえずここから逃げよう!」
「意外と根気あるのね。とりあえず暴食も回収・・!?」
アリシアは地面に置かれていた暴食を回収しようとしてたが、突然遠方から飛んできた魔弾によって暴食が弾かれて飛んで行ってしまった。
向こうには、色欲を構えたミーアが居る。
「そう簡単には渡せないけど。今は3対2で圧倒的にこっちが有利だもの。」
「大体、こういう事をして分かって居るんでしょう?アリシアのせいで人質が殺されてもいいの?」
そう言われたが、アリシアは黙っていた。
非常に拙い状況になってきたが、しかし彼女たちを倒さなければいけないのも確かだ。




