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しかし、この状況を打破する自由は僕には無い。
「それで、名前はあるの?」
「綾瀬永人。」
「身分は?見たところ、普通の人間だけど。」
「学生だよ。僕自身が普通かどうかはともかく。」
「普通じゃないの?」
「・・僕は、どうやら別の世界から来てしまったらしい。」
そのセリフを言うと、彼女は少し固まってしまった。
「私の裸を見た人間から別の世界から来たとか言われるなんて、少し身の危険を感じるわね。」
「寒い時期に寒中水泳していた奴に言われたくない・・。」
「じゃぁ、とりあえず別の世界の人だという証拠は見せたらどう?」
「ん?まぁ、できないわけでもないけど。」
この場合、昭和の時代に転移させられてしまった人はどう言うんだろうか。明らかに自分が異世界の人間だと言える証拠品など持っていない場合を思考しても仕方が無い。
「証拠はこれだ。」
僕が証拠としてスマホを出そうとしたが、その時に突然異常な発熱を発生させていた。
その熱さに耐えられずスマホを落としてしまうと、そのスマホはパチン、と爆発してしまう。
普通なら壊れないはずなんだけれど。何が起きたのだろうか。
「今のは何なのかしら・・?」
「僕の人生の一部・・?まぁいいや。学生証とお金もやる。」
そう言って意味も無く学生証と金を彼女に譲渡してしまった。
「なにこれ・・?読めないし、財布なのこれ?」
殆ど怪しさしかないけれど、こんな状態で僕は生活できるわけでもない。
「本当、怪しさしかないけど。だからってこのまま放置するわけにもいかないわね。」
「殺すのは待ってくれないか?」
「殺されたいの?」
「待てって言ってるだろ!?」
「まぁ、どのみち貴方に自由など無いのは事実ね。怪しいし、何より私の体をみたもの。責任を取ってくれないと。」
「取らないとどうなるんだ?」
「そうね。この先、私はまだ仕事があるから何もしてあげられないのだけど。もし貴方が私に協力する意思があるのなら、考えてあげなくもないか。」
「助けてくれるのか?」
「貴方が、私の奴隷として生きていきたいのなら。別にいいわ。」
「はい?」
「ギルド騎士には、従者や奴隷を一人選ぶ風習があるの。15になったら決めなくちゃいけないけど、仕事のせいで中々できなかったのよね。」
何故か物凄く嫌な予感がしたけれど、彼女は恐らく半分は冗談で言っているのだろう。
「貴方、私の奴隷になれば許してあげるわ。この私に対する不敬罪を免除する代わり、貴方はこれから一生私の奴隷として生きていくの。」
「物凄く不道徳的な匂いしかしないんだけど。それで僕が生きていけるのか?」
「私の気を悪くしなければね。」
本当なんだろうか、僕はかなり不安しかなかった。
「大丈夫、貴方は一応守られる側にはなるもの。」
「まぁ、君の奴隷になるのならいいけどさ。」
「誠意がこもって居ないわね。やっぱり見捨てようかしら。このあたりの魔物の餌にならないといいけど。」
「ど、奴隷にしてくださいお願いしますお嬢様・・?」
「お嬢様だなんて、私は騎士よ?」
「・・・・。」
つい口走ってしまったけれど、正直もし僕が本気でまた不敬な事をしでかしたら死ぬかもしれない。
「じゃぁ、貴方にはこれをあげるわ。」
そう言って、彼女は突然どこからか出した鉄製の首輪を僕に付けた。
突然の行為だったので、抵抗することもできなかったが本当にこれは大丈夫なんだろうか。
「私はアリシア。よろしくね。奴隷君。」
「この首輪、もしかして今まで持ち歩いていたのか?」
「察しがいいのね。その通りよ。この私に相応しい奴隷が居ないかを、仕事の途中で探していたのよ。」
それで僕を選ぶ時点でかなりおかしいと思うのだけれど。
「僕を奴隷にしたい気持ちってなんなんだ?」
「そうね。この状態だと、仕返しに首輪の魔力を利用して貴方を裸にできるわ。」
「止めてほしい。」
「冗談よ。私がそんな悪趣味な事するわけないでしょう?」
「そうか。それならいいんだけど。」
こうして僕はアリシアという騎士の奴隷となってしまったが、果たしてこの先本当に大丈夫なんだろうか。
僕にはよく分からないけれど、多分大丈夫な筈だろう。




