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守りたいという信念は多少なりともあったとしても、この世界では僕の本来の力は基本的に無力である。
鼻がおかしくなりそうな程の悪臭がある暗い場所で、僕の目の前に少女が倒れていた。
僕よりも先に部屋の中にはいっていた少女は、突如現れた何かにより敗北して流血している。
あの美しい少女にも血がある事は当然であり、だからといってその事実から逃げる事はできなかった。
壁、家具、床に噴出してしまった彼女の血はより流れ続けているのは分かる。
彼女は、どう見ても致命傷を受けているように見えた。明らかに尋常ではない光景を僕はどうする事もできない。
少女が倒れた後、彼女を刺した張本人はゆっくりと動く。
包帯が体中に巻かれていて、表情も分からない。それもまた少女だということは理解できている。
異常なほど流れてしまった血の海を歩き、徐々に僕の方へと歩いていく。
赤い瞳を見た時は、僕はもう動く事さえできていなかった。
死臭が漂う場所で、一体僕は何を見ているのかさえ理解できていない。
少女が近づき、ゆっくりと僕に跨る・・服も、髪も汚れていてとてもではないが彼女を見る事はできていなかった。
彼女を一瞬人間だと思いたくはなかったが、他に助けてくれそうな人間は居ないだろう。
向こうに居る少女は僕から見れば明らかに死んだとしか思えない状態になっている。
ここまで、普通の人間が大量の血を目撃することは普通無いのだから。
彼女をすぐに付き飛ばして逃げる方が明らかに利口なはずなのに、体は全く動く事ができない。
小さな体なのに、彼女から感じる事はほぼ脅威でしかなかった。
まるで獣のような見た目、本来なら感じる事のない異常性が目の前にある事で思考がおかしくなりそうだった。
いっその事、彼女の言う事を否定して外で待って居ればよかったが。今更後悔したところで、目の前に居る猛獣をどうにかする事はできない。
その少女は、自分の手で顔を覆っていた包帯を取る。
血で汚れているせいで、その表情はまず分かるはずが無かった。
体を動かす事ができないのに、目の前の獣はどんどんと迫ってくる。
首元に、噛みついてくるまで僕はすぐに死ぬ事を受け入れてしまいそうになった。
ある意味、こんな世界に来てしまった時点で殆ど罰ゲームみたいなものだが。その罰が正しかったとしても僕は受け売れたくはなかった。
悪魔のような少女が目の前に居る時点でそんな事を考えた所で、自分の間違いをどう否定する事もできない。
「おいしそう。」
ふと、そんな声が聞こえていた気はしたが。僕はこの時のことはあまり記憶に無い。




