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ファンシーピープルといっしょ!  作者: 偽ゴーストライター本人
1/6

OPENING

 異世界は実在する。

 それは僕にとっては当たり前の常識だし、先進国に住む人聞ならテレビやネットで誰もが知りえる情報だ。今さら異世界を否定するなんてナンセンスな話であり、日本の東に太平洋が広がっているように、北極点の向こうには異世界が広がっているのだった。

 今から三十年ほど前、北極の氷の大半が溶け落ちた北極海で異世界の入口が発見された。北極点の海上を特定のルートで航行すると異世界に突入するというもので、今でこそGPSのナビに従えば異世界に迷い込む心配はなくなったものの、当時の北極海は船舶が謎の消失をするミステリーゾーンとして話題だったらしい。やがて人類はその謎を解明して異世界の海へ進出し、そこで人類の生存に適した新大陸を発見したのである。後に人類は本格的に新大陸への入植を開始したのだが、それはコロンブスがアメリカ大陸を発見した時代よりエキサイティングな時代だったかもしれない。異世界には貴重な地下資源や鉱物資源が大量に眠っており、それを求める人類にとっては新たなゴールドラッシュの到来だったのだ。

 こうして人類が新大陸に進出してから二十年が経過して、人類は異世界で安定した社会基盤を築くことに成功していた。このまま異世界も人間界と同じように発展していくだろうと思われたし、異世界では発展の障害になるような問題も起こらないだろうと考えられていたのだ。

 しかし今から一ヶ月前、そんな楽観的な考えを正すような出来事が起きた。

 異世界に『魔法』が出現したのである。

 しかも魔法を使えるのは異世界に住む『獣人』だけだった。

 獣人は人類とは異なる進化を遂げたニ足歩行の知的人種であり、全身を毛皮で覆われた異世界の先住民だった。先祖となる動物によって多くの種族が存在し、それぞれが独自の言語や文化を持っていた。種族によっては人類を上回る体格や身体的能力を持つ者もいたのだが、獣人全体としては人類の中世以前の文化レベルしかなく、科学力や軍事力に優れた人類と比べると問題にはならなかった。その結果として異世界の主導権は人類が握っていたのだが、魔法の出現によって獣人と人類の関係に微妙な変化が起きようとしていた。獣人にとっての魔法は人類が蒸気機関や電気を手にした時と同等の事象であり、その使い方によっては異世界の文明を発達させることもできるし、逆にこれまでの文明を破壊することだってできた。そして力を手にした者がその力を使いたくなるのが世の常であるように、魔法を手にした獣人がその力を使いたくなるのは当然のことだった。

 ここで人類は試されるのかもしれない。

 あるいは審判が下されるのだろうか?

 僕が異世界で暮らし始めてから六年ほど経つけれど、これからの異世界で何が起きるのかは僕には想像できなかった。でも仮に僕が魔法を使えるようになったと考えると、僕の周りでトラブルが起きるだろうことはなんとなく想像できた。小さい頃に買ってもらったおもちゃのピストルの時も、初めてスマホを買った時に自分から発信したSNSでも、僕は今まで色々な失敗をやらかしているのだ。これも一種の力の乱用と考えることができるわけで、過ぎた力や便利な技術も使い方次第では馬鹿を見るということの典型だった。

 この異世界で人聞が魔法を使えないことは人類にとっては不利益なことかもしれないけれど、僕のような未熟な人間にとっては幸運なことなのかもしれない。


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