表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/34

7. 初めての魔法

30歳まで清らかな体を保つことで初めて魔法を使うことができる。

 僕はパヌゥイ・ガズ、5歳です。スヌオル村に住んでいます。うちにはお父さんとお婆ちゃんと5つ上のお兄ちゃんがいます。お父さんは、田んぼと畑を持っています。お婆ちゃんは、山でお肉や木の実や薬草を取りに行きます。お兄ちゃんはお父さんのお手伝いをしています。僕はまだ小さいから、お父さんのお手伝いはあんまりできません。


 僕には約束があるの。僕は、僕が大人になるころに出てくる悪い神様をやっつけないといけないんだ。えいゆう?になるんだ。そういう約束を生まれる前にしてきたの。だから強くならないといけないんだ。この約束のことは、この前思い出したんだ。覚えてたけど、気にしてなかっただけかな。どうやったら強くなれるんだろう。でも強くならなきゃいけないんだ。約束したんだもん。神様との約束だもん。絶対、強くなって、えいゆうになるんだ。


 でもいまの僕はとっても弱い。僕は”泣き虫ガズ”って、みんなにからかわれて、いっつも泣いちゃう。特にお兄ちゃんは、僕が泣くのを面白がってる。お兄ちゃんは僕の事があんまり好きじゃないみたい。


 お婆ちゃんだけは僕に優しくしてくれる。お婆ちゃんは魔法も使えるし、一人で森の中にも入って行っちゃう。森の中は危ないから子どもだけで入っちゃいけないんだ。だからお婆ちゃんはきっと強い。お婆ちゃんに教えてもらえばきっと強くなれる。


「ねぇ、お婆ちゃん、教えてほしいことがあるの。」


「なんだいガズ。」


 お婆ちゃんは、お父さんと違って僕の話をちゃんと聞いてくれる。


「あのね。僕、強くなりたいんだ。」


「ガズ、急にどうしたんだい。また意地悪されたから、仕返しがしたいのかい?」


 お婆ちゃんは、いつもやられっぱなしは良くないと言う。叩かれたら叩き返せって言うんだけど、僕には怖くてできない。結局、僕が泣いたらアルちゃんが止めに入ってくれる。アルちゃんは強いんだ。


「違うの。僕ね。強くなって悪い神様をやっつけないといけないんだ。えいゆうにならないといけないんだ。生まれる前に神様と約束してきたの。だから強くならないといけないんだ。どうやったら強くなれるかな。」


「悪い神様をやっつける?英雄?約束?昔から普通の子じゃないと思っていたけどねぇ。泣き虫のガズが英雄になるだなんて、神様も無茶を言うもんだよ。」


 生まれる前に神様と約束してきたなんて、お婆ちゃんも信じてくれないのかな。悪い神様を倒さないと、みんな酷い目にあっちゃうんだ。だから僕は強くならなくちゃいけないんだ。


「ホントだよ。お婆ちゃん信じてよ。僕が大人になるころに悪い神様がやってくるの。僕たち4人はその神様を倒さないといけないんだ。ちきゅう?の神様と約束したんだよ。」


「ガズ。お婆ちゃんはガズのことを信じてるよ。でも悪い神様の話は誰にもしちゃダメ。そんなことを言っちゃうと神殿の人に連れていかれちゃうからねぇ。」


「お婆ちゃんわかった!悪い神様の話は誰にもしないよ!」


 お婆ちゃんだけはやっぱり僕の事を信じてくれる。お婆ちゃんに話してよかった。


「でもね、お婆ちゃんもどうやったら英雄になれるかは分からないの。でもお婆ちゃんが知っている強くなる方法は教えてあげられる。レベルを上げればいいの。お仕事を頑張ればレベルが上がって強くなれるんだよ。そうだね。まずは雑草を刈ることから始めようかね。それに魔法の使い方も教えてあげよう。本当は村の掟で、7歳まで魔法は教えちゃ駄目なんだけどねぇ。魔法を教えてもらったことは誰にも言っちゃいけないよ。約束できるかいガズ。」


「うん!お婆ちゃん約束は絶対守るよ!」


「ガズは偉い子だね。神様とも約束できるんだものね。ガズ、お婆ちゃんの手を握りなさい。今からお婆ちゃんがガズに魔力を送るから、その流れを感じるんだよ。」


 そう言って、お婆ちゃんは僕の右手を握った。そしたら、何か温かいものがお婆ちゃんの手から僕の右手に流れ込み胸の中心に入っていったんだ。これが魔力なのかな?


「お婆ちゃん、温かいものが手から(ここ)に流れていったよ。これが魔力なの?」


「ガズ。さっきの流れを思い出して、(そこ)の温かいもの手の方に流すようにしてみなさい。」


 胸の中の温かいものを動かそうと頑張ってみた。そしたら、ちょっと動いた。だけどなんだか水を掴んでいるみたい。すぐに零れて行ってしまう。


「なんだか上手く動かせないよ。全部零れちゃう。」


「少しでも良いから手の方に流してみなさい。ほんのちょっとでもいいんだよ。」


 もう一回だ。集中して魔力?を掴んだ。慎重に胸から肩を通って肘、手首、そして手のひらへと流した。ほとんど零れちゃったけど流せたのかな。


「ガズの魔力がお婆ちゃんの手に伝わってきたよ。ほんのちょっとだけどね。でも、みんな最初はそうなんだよ。次はね、頭の中で願いながら魔力を出すの。周りを照らすしたい。火を起こしたい。水を流したい。土を耕したい。強く願いながら魔力を出せば、魔力が奇跡を起こしてくれるんだよ。」


 そう言って、お婆ちゃんは手を離した。魔力を使ったせいか、胸から右手までが体の中がピリピリする。熱くて痺れるような不思議な感覚が残った。


「わかったよお婆ちゃん。今日は曇りだから明るくしたい。光を出すよ。見ててね!」


 魔力を掴んで慎重に少しづつ右手に流していく。でも、どうしても零れていってしまう。だけど、またほんのちょっとだけ残った。これを強く願いながら右手から……光れ!


 やった!右手のひらがちょっとだけ光った!……かな?勘違いじゃないと思う。


「流石は私のガズ。ほんのちょっとだけど光ったねぇ。ガズ、これが魔法だよ。」


 勘違いじゃなかった。僕にも魔法が使えたんだ!


「もっと上手に魔力を流せるように毎日練習しなさい。そうすれば、暗闇を照らしたり、火を起こすしたり、畑を耕したりもできるようになるんだよ。ガズならきっとすごい魔法使いになれる。だってお婆ちゃんの孫なんだからね。だけど、魔法の練習は誰にも見られないようにやるんだよ。特に火を出すときは気を着けなさい。火事なんか起こしたら村から追い出されちゃうからねぇ。」


「ありがとうお婆ちゃん。絶対誰にも見られないように毎日練習する!僕は凄い魔法使いになるんだ!」


「頑張るんだよ。ガズが悪い神様をやっつける英雄になってくれるのが楽しみだよ。それとね、お父さんに頼んでナイフと手袋をもらいなさい。雑草を刈るんだって言えばすぐに貰えるわ。雑草を刈るのが村の子供たちの最初の仕事だからね。」


「わかった!」


 その日の夜、お父さんに雑草を刈りたいって言ったら黙ってナイフと革手袋を渡してくれた。お父さんもお兄ちゃんもこれを使って雑草を刈ってたんだって、お婆ちゃんが言ってた。やっぱりお父さんは僕とお話してくれない。なんでだろう。でもとにかく僕も雑草を刈ったら大人みたいに強くなれるのかな?


 それから毎日、魔法の練習と雑草を刈った。アルちゃんと遊ぶ時間少し減っちゃったのが悲しいけど、僕は英雄にならなくちゃいけないんだ。我慢しなきゃ。


 魔法はなかなか上手くならなかった。毎日水を出す練習をした。頑張っても手のひらに汗をかいたような感じにしかならない。でもこれなら魔法を使ってるってバレないからいつでも練習できた。


 魔法を使うと胸の中の魔力が減っていくのが感じられた。毎日、魔力が無くなるまで練習した。魔力が無くなると、何となく胸の中が冷たく感じる。お婆ちゃんは大丈夫だって言ってた。だけどちょっと不安になる。大丈夫なのかな?


マジカルババア大活躍だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ