表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/34

6. 無事に成長しています

う うま うまれたぁ(曖昧)

 お犬様と別れてから、意識を失い夢を見た。


 長い長い夢だ。とても長い夢だった。


 俺はある時は魚だった。魚だけど水の上に何があるのか知りたかった。どうしても知りたかった。ヒレを使って懸命に川の淵をよじ登った。そして、川辺に出た。青と緑の世界が広がっていた。空だ。空がある。とても高い。どこまでもどこまでも空が続く。とても綺麗だ。俺はここに住むんだ。空が見えるここに住むんだ。でも息ができない。苦しい。けれど、それもすぐに慣れた。水の中じゃなくても息ができる。水の上は暖かい。太陽の光がポカポカと温めてくれる。それに空だけじゃなくて緑もいっぱいだ。俺は土の上を這いずり回った。俺は自由だ。


 俺はある時はネズミだった。周りは敵だらけだ。山のような大きな敵たちが、自由に闊歩している。俺は自由じゃなかった。怖かった。とても怖かった。隠れる事しかできなかった。とにかく、隠れて生きていた。あんな山のような敵には勝てっこない。だから隠れた。ずっと隠れながら暮らした。暑くても寒くてもずっとずっと隠れて暮らした。ある時、気づいたら山のような大きな敵はいなくなっていた。また俺は自由になった。


 俺はある時ついに2本の足で立ち上がれるようになった。前足で色んなものを持てるようになった。石を投げたり槍を投げたりできるようになった。でも、俺よりずっと大きくて強い動物がいっぱいいた。一人でいると食べられてしまうと、何となくわかった。怖かった。でも、みんなで集まれば、ずっと大きくて強い動物を倒すことができた。一人じゃ生きていけないけど、みんなと一緒になれば生きていけた。いつだったか誰かが、とても熱くて明るいものを持ってきた。お日様が近くにあるみたいだ。これがあると夜も明るい。強い動物も逃げてくれた。それからみんなで色んなお話をした。色んなお話をして、色んな物をを作った。一人じゃできないことも、みんなと一緒ならできた。だけどみんなが居ないと、生きていけなくなった。俺は自由じゃなくなってしまった。


 その頃からだろうか、空の上から声が聞こえてくるようになった。何を言っているのかよくわからないけれど、とても安心できた。とても優しい声だった。その声を聴いていると眠くなってきた。夢の中なのに眠ってしまった。


 ある時、急に苦しくなった。とにかく苦しくてもがこうとした。もがこうとしても、どうにもならなかった。苦しいけれど、とにかく我慢した。色んな声が聞こえてくる。怒っているのか、なだめているのか、安心させてようとしているのか、わからない。とにかく色んな声がきこえてきた。世界がぐるぐる回るような感覚のなか、苦しさに耐えていた。耐えて。耐えて。耐えた。そうしたら急に目の前が眩い光に包まれた。


 その時、俺は何となくわかった。俺は産まれたのだと。


 そこから、また夢のように幻のように、全てが曖昧な日々が続いた。 


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ぼくはパヌゥイ・ガズ3歳。今日は晴れ。お空は紫色。気持ちがいい。今日もアルちゃんと遊ぶの。


「アルちゃん!今日も一緒にあそぼ。」


「ガズ!今日は天気が良いわね!外でおままごとしましょ。」


 アルちゃんは近くに住んでる友達。いつもアルちゃんと、村のお兄ちゃん、お姉ちゃんたちとで、一緒に遊んでるの。


 今日はみんなでおままごと。お兄ちゃんたちは、きし?と、まほうつかいでケンカしてる。お姉ちゃんたちはお母さんとお婆ちゃんになってくれた。アルちゃんはお姉ちゃんで、ぼくは弟。


「みんな!今日のご飯は特別にモンスブフのスープよ!お母さんの自慢料理よ。」


 お母さん役のお姉ちゃんが言った。モンスブフはとっても強い魔物なんだ。魔物っていうのは怖い生きものなんだよ。


「わたしが魔法で倒したの!」


「アルお姉ちゃんすごいね!ぼくも魔法使いたい!」


 大人はみんな魔法を使える。でもぼくはまだ使えない。子どもは魔法を使ったら危ないんだって。だから使わせてくれないの。ぼくとアルちゃんで、魔法を教えてって大人にに言っても教えてくれない。


「ガズちゃんには、まだ早いわねぇ。もう少し大きくなったらお婆ちゃんが教えてあげるわぁ。」


 お婆ちゃん役のお姉ちゃんが言った。うちのお婆ちゃんも同じことを言う。


「ガズにはわたしが魔法を教えてあげるわ。」


「アルお姉ちゃんありがとう。」


 アルちゃんは手のひらをぼくに向けた。ぼくも手のひらを前に出して、アルちゃんの手のひらと合わせた。


「まりょく?の流れを感じるんだよ。ガズ。そうすれば魔法が使えるようになるわ。」


 こうやって村のお姉ちゃんたちは魔法を使えるようになったんだって。不思議だな。ぼくとアルちゃんもよく真似してみてるけど、わかんないや。


 天気のいい日は、こうやってみんなで遊ぶの。雨の日は、お婆ちゃんと神殿にいって神様にお祈りするの。いつもありがとうって。でも遊べないからつまんない。

 

 うちにはお母さんがいない。お母さんはいないけどお婆ちゃんがいる。あとはお父さんとお兄ちゃんがいる。お父さんはあんまりぼくとお話してくれない。


 ぼくはときどき変な景色を思い出す。ぼくは小っちゃい頃から、変な事を言ってたみたい。ぼくもよくわかんない。わかんないけど、ぼくは何かをやらなくちゃいけないんだ。そのためには強くならないといけないの。でもどうすればいいのかわかんない。魔法を使えるようになればいいのかな?お婆ちゃんに魔法の使い方を教えてもらえたらいいな。

先生!魔法が使いたいです……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ