表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/34

34. 不死人ヤマダ

家に帰るのが嫌になる年ごろ

 俺は蟻熊の死体の下でひっそりと息を吹き返した。俺に覆いかぶさった蟻熊の死体から流れ出る血で全身が染まってしまっていた。だが、俺の服はだいたい血で染まってしまっているので、大して気にならない。日本基準で考えると完全にヤバい奴だが、ここは日本ではないし、それに人の血では無いのでセーフ理論が俺のノーマルさを確固たるものにしている。


 無駄だと思いつつも、辺りを見回してみるがロアンは見つからない。なんとも虚しい。結果が分かっているのに、それを否定するために無駄に足掻いているような気持ちだ。ただ、蟻熊だけは殺せたであろうことが多少の達成感を感じさせてくれる。仮にロアンが何かにやられていたとしても蟻熊にやられたわけでは無い。つまり俺の命懸けの攻撃はロアンの命を多少なりともながらえたのだ。流石、俺、よくやったと言えるだろう。


 ロアンがつっ立っていた付近をよく見ると、村に向かって血痕が続いていた。もしかしたら、怪我をしつつも村に逃げ帰ったのかもしれない。そんな期待を抱かせた。


 俺の英雄力をもってすれば、少女が無為に死ぬことなど無いのだ。間違いない。なんと言っても、地球の神の御力を賜りし英雄なのだからな。ロアンがどうやって魔物を追い払ったのか、見当もつかない。だが、あいつが本当は魔物より強い可能性が無いとも言い切れない。実は凄腕の戦士で、血痕も魔物のものだったりするのかもしれない。可能性の話をしだすときりがないが、万が一と言う事もある。


 血痕を追ってぶらぶらと村に向かって歩いていくと、道半ばで血痕が途切れていた。辺りを見回してみるが、やはりロアンの姿は無い。

 もう何があったのかよくわからない。この辺で、ロアンが倒した魔物を投げ捨てたのかもしれない。そして俺に見つからないように埋めたに違いない。流石、俺、なんという迷推理なんだ。全く意味が分からない。


 ロアンの痕跡を探し回っていると、こちらの迫ってくる人を探知した。この素早さは婆さんに違いない。婆さんが俺を探して森にやってきたのだ。


「ガズ! あんた生きてたのかい!?」


「婆ちゃん、僕の事は良いんだ、ロアンを見なかった!?」


 俺の事は良いんだ。ロアンはどうなったのかを教えてくれ。道すがらみていないのか?


「あの娘さんだったら、ナーシル先生が連れて帰ってきたよ。大怪我してたみたいだけど、ナーシル先生が治してくれたみたいだねぇ。あの娘が、あんたが頭をねじ切られて死んだって言うから、探しに来たのに、ピンピンしてるじゃないかい。婆ちゃん、気が気じゃ無かったよ。」


 なんだよ。生きてたのかよ。あの犬っころめ、思わせぶりな事を言いやがって。やっぱり俺の英雄力の前には少女が死ぬことなどないのだ。流石、俺。


 それより、俺の首がねじ切られるところをばっちり見られてたんだな。安易に死ぬと辻褄合わせが大変になりそうだ。そういう意味でも、ここぞ、という時以外は極力死なないようにせねば。


「な、なんか見間違えたんじゃないかな。えっとこの通り頭と胴体は繋がってるよ。」


 俺は婆さんと手を繋いで村に帰って行った。久しぶりに繋いだ手は、ザラザラで思ったよりも小さかった。そして何だか胸が暖かくて、誇らしい気持ちでいっぱいになった。



 村に着くと青い顔をした先生が俺たちを出迎えてくれた。


「何があったのかわからないけれど、無事に帰ってきてくれて良かったよ。ロアン君が、君の頭がねじ切られたってしきりに言うもんだから、半ば諦めかけていたよ。」


 諦めんなよ。俺を英雄にするのが先生の仕事じゃないのか。もっと粘れよ。


「まぁ、その、おかげさまで、この通り無事に生きてますよ。」


 話を聞くと帰りが遅いことが心配になった先生が森に入ると、魔物に追われているロアンを見つけたらしい。そして、魔物を追っ払って怪我を治してあげたんだとか。その時に、俺の首がねじ切られたと何度も聞かされたらしく、悲嘆に暮れていたらしい。嘆いてる場合か!?


 次の日、俺はロアンのお見舞いに行った。しかし、ロアンは俺を見た瞬間にガタガタと震えだし、

「ふ、不死人! 首をねじ切られたの見たもん! 目があったもん!」

と叫んだあと、ゲロを吐きやがったので、何とも納得のいかない気持ちを抱いて帰宅したのだった。


 その話を先生にしたところ、

「ガズ君、残念だったね。ガズ君は若いからこれからも沢山の出会いがあるよ。気落ちしないでね。」

 などと、のたまいやがった。


 先生はいつから、こんな風になってしまったんだ。何でもかんでも恋愛に結び付けるなんて思春期の女子か。先生の頭の中が気の毒に思えたので、ロアンの事をどうとも思っていなかった事は告げないことにしたのだった。

先生ぇ……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ