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32. ゴブリン探検隊(4)

ヤマダはにげだした

しかし、まわりこまれてしまった

 森の木々をかき分けて蟻熊が俺の方に向けて突進してくるのがわかった。まだ姿は見えないが、おおよその場所に向けて、手裏剣を生成しては投げ、生成しては投げを繰り返した。時々、蛇行するようになったのでので嫌がっているのは間違いない。そんなことを繰り返しているうちに樹々の間から蟻熊の姿が見えた。


 殺意の波動を周囲にまき散らしているのが遠目にもわかる。そして蟻の複眼が非常にグロテスクで気分が萎える。

 どうやら肩周辺に手裏剣が何本か刺さっているようだ。だが、蟻熊の勢いは止まらない。本当にただの嫌がらせ程度の効果しかないみたいだ。


 一方のロアンと言えば、まだまだ村にはたどり着きそうにない。少し離れたところでヘロヘロ走っているのが感じ取れた。時間を稼がないとロアンが殺されてしまう。そう確信できる程度の速さだ。あいつは何をやっているんだか。


 俺はいまいち効き目のない手裏剣を投げまくった。どうやら頭の部分は甲殻に覆われているらしく、手裏剣が弾かれる。首から下は毛皮の熊なのに、頭だけ甲殻に覆われた蟻とは何がどうなったらこうなるのかよくわからない。だが、魔物らしいと言えば魔物らしい。ただの狂暴な野生生物とは違う恐怖を感じる。


 そうこうしているうちに、蟻熊がほんの数メートル先まで近づいてきて、やおら立ち上がり顎をカチカチと鳴らして威嚇しはじめた。威嚇しなくても十分ビビッてるから、効果は無いぞと伝えたい。


 こちらも山刀を抜いて近接戦闘の準備を整える。


 十分威嚇して満足したのか何なのかよくわからないが、蟻熊は地面に前脚を着けると、猛然と飛び掛かってきた。俺はバックステップで避けようとしたものの、避けきれず胸を爪で切り裂かれてしまった。ただ、皮膚だけを裂かれたようで、大した痛みは無い。いや、すごく痛いが動けないほどではないが正しいか。すぐに蟻熊は追撃をしてきた。そのたくましい前脚をぶんぶんと振り回す。俺は前脚の動きを見極めながら横に転がり避けた。振り回された前脚はは俺の後ろに生えていた木にぶつかり、それをことなげになぎ倒した。


 これはヤバい。すごくヤバい。婆さんが逃げ出すのもわかる。そこそこの太さがある木が前脚の一振りでなぎ倒された。あの前脚が直撃したら俺の頭はもげるだろう。果物みたいにもぎ取られて、顎でバキバキ砕かれる。間違いない。

 

 近接戦闘どころではないと感じた俺は、山刀をしまって、ひたすら回避に専念することにした。とにかく、当たったら死ぬと言う恐怖だけが俺を支配した。心臓が高鳴り息が切れる。振り回される前脚を、今度は掻い潜り、蟻熊の後ろに回る。が、すぐに振り向かれて隙を見せてくれない。その後も、轟音を立てながら前足が振り回される。その度に死の恐怖を感じながらひたすら避け続けた。


 しばらく、蟻熊の攻撃を転がり飛び跳ね避け続けていると、蟻熊の方も苛立ってきたのか、またも立ち上がり顎をカチカチと鳴らし始めた。何の意味があるのか分からないが、怖いのでやめて欲しい。と思いながらも、この機を逃さず俺は飛び上がって、こっそり生成していた結界石を蟻熊の四方に投げつけた。


 結界石が地面に着弾すると同時に、蟻熊を取り囲むように白く輝く四角錐型の結界が張られた。先生直伝の結界魔法だ。これと手裏剣ぐらいしか戦闘に役立つ魔法は使えない。行く先が思いやられる。だが今はそんなことはどうでも良い。とにかく、結界に蟻熊を閉じ込めることに成功した。


 結界の中では蟻熊が暴れまわっている。が、白く輝く膜に触れるたび静電気の様なバチバチと言う音を立てて弾かれている。こうなれば、こっちのものだと俺は手裏剣をひたすら投げつけ続けた。何十本もの手裏剣が胴体に突き刺さっている。少しづつだが蟻熊の動きが鈍っているように見える。しかし、いかんせん決め手に欠けている。魔力が枯渇するまで手裏剣を刺しても、倒れることは無さそうだ。このまま待ち続ければ失血死させられそうな気がしないでもないが、結界の持続時間が限界に近い。


 そろそろ引き上げ時かと、ロアンの居場所を探りはじめたらすぐに見つかった。後方数メートルの距離に突っ立っていた。


 なんでなん?


 自殺志願か? それとも俺の死にざまを見に来たってのか? 俺の頭が、バキッともがれて砕かれる様が見たいってのか? それとも笑いに来たのか? そうか俺がバキバキに砕かれる様を笑いに来たんだな。とんでもねぇサイコ女が身近にいたもんだ。きっと俺の頭蓋骨で杯とか作っちゃうタイプのやつだ。ヤバい。前門の蟻熊後門のサイコ女とは、ヤバすぎる。俺の命がヤバい。また死んじゃう。嫌味な上司に怒られちゃう。何でこんなことになったんだ。俺はなんか悪い事したのか?


「ガズ! 心配で見に来たけど、化け物を捕まるなんて!? すごい! すごい! 本当に強いんだあんた!」


 心配で見にきただぁ? 誰がそんなことを頼んだよ。お前が居ると俺が逃げられねぇんだよ。


 なるほど。いま、俺の英雄力が試されていると言う事か。ここで、この魔物をぶっ殺してロアンを無事に村に連れて帰る。やるぞ。俺はやって殺るぞ。簡単なことだ。いつも通り山刀を突き刺すだけだ。


「絶対に、そこを動くなよ! もうすぐ結界が切れる! マジで動くなよ! 絶対だぞ! ふざけんなよ! クソ! やればいいんだろ! マジ何なんだよお前は! お前が居ると逃げられねぇんだよ! 畜生! 俺は英雄なんだ! もう俺のせいで人が死ぬのは嫌なんだ! 俺は英雄だ! 英雄だ! 英雄だ! あぁクソがホントやってられねぇ!」


 俺は山刀を抜き放って腰だめに構えると。深呼吸をして、蟻熊に向かって突貫した。

ヤマダはできる子なので、魔物から女の子を守るなんて朝飯前!

次回、ヤマダ死す!?

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