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私は楽しく生きたくて  作者: めのおび
2章 東の国イルミール
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20話 私は今新たな魔法を試します

 ダンジョン入口にあったゲートを抜けると、その先は見たこともない草や花が生い茂る空間となっていた。


 「これなんて花か分かる?」


 黒はオレンジ色のパンジーに似た花を指さしながら、2人に問いかける。


 「ん?それは発火花じゃな。直接、魔を流し込めば発火するんじゃ」


 「へー。じゃあこのでっかい花は?」


 今度は毒々しい色をした約2mほどもある花を見上げながら黒が言う。


 「それ魔物だよ!」「魔物じゃそれは!」


 レェーヴとシュテンは慌てて黒に大声を飛ばす。


 「やっぱりそっか」


 言いながら黒は花形の魔物へ急接近すると、茎の部分へ蹴りをお見舞いする。

 すると、プギュッと何かを潰したかのような音がした後、茎が折れ、魔物は魔魂へと変わった。


 「分かっとったんならそう言ってくれんか...」


 「そうだよー」


 「いやぁごめん。魔物探知に反応があったんだけど本当に魔物なのかなって思っちゃって」


 「まぁ初めて見るのでは分からんかもしれんな」


 「クロの魔物探知って凄く便利だよねー」


 「でしょー。あと、新しい探知系の魔法を考えたんだ」


 「ほう、なんじゃ?」


 「敵意探知なんだけど、私たちに悪意や敵意を向けてる相手がいればそれが分かるってやつ。カーサイブリースの件があったからね」

  

 「それも便利だねー」


 「でしょ」

 

 「敵意ってことは魔物なんかも引っかかるのか?」


 「人間が出すあのイヤーな感じのやつだけ引っかかるイメージで発動したから魔物は引っかからないかな」


 「人間の感情が鮮明に分かるクロだからできる魔法じゃなそれは」


 「だね」


 ずっと嫌っていたこの力が役に立つことに黒はもやもやした気持ちを抱いたが、これでレェーヴとシュテンの2人を守れるのならば結果オーライだと気持ちを切り替える。

 

 そういえばこっちの世界に来て、大学などで学んだ知識が役に立ったことがないなとも思いつつ、道中に現れる花草を模した魔物を倒し歩いていると、見晴らしのいい開けた空間に出る。


 「ここらへんでちょっと休憩したら色々試そっか」


 「そうじゃな」


 「うん」


 そう言いながら、3人は黒が作ったレジャーシートに腰を下ろす。


 「こういう時、結界的なやつがあるといいよね」


 「ワシの妖術の一種の幻術で大抵の魔物を近寄らせなくは出来るぞ」


 「あの私がかけられたやつ?」


 「それに近いやつじゃな」


 「でも妖術も魔量を使うんでしょ?」


 「そうじゃな」


 「それだったらやっぱり魔量がたくさんある私がなんか使えたほうがいいよね」


 「たしかにの」


 「だね」


 「じゃあ早速試してみるね」


 そういいながら黒は手を前に出す。


 イメージするのは球状に囲まれた空間だ。その中心に私たちがいる。そして私たちを覆うその球殻は透明で、いかなる魔物の侵略を許さない最硬の盾だ。


 イメージし終わるのと同時に、黒は魔法名を述べる。


 「守護する乙女(バル・ガルディエーヌ)!」


 黒が魔法を発動すると、約半径3mほどの透明な球状の壁が黒たちを覆う。


 「「おおー」」


 レェーヴとシュテンが同時に声を上げる。


 「やはりいきなり成功とは、さすがじゃの」


 「すごいよクロ!」


 「えへへ、ありがと。でも、強度はどうだろ」


 「この壁はワシらでも触れられるのか?」


 「そこまでイメージしてなかったからやってみないと分かんないや。ちょっと触ってみるね」


 そういいつつ、黒は透明な壁に触ろうと手を伸ばす。


 「触れるね」


 「それじゃあ攻撃してみればわかるのではないか?」


 「そうだね」


 言いつつ、黒は殴ってみようと拳を作る。


 「まってまって!私がやってみていい?」


 そういいながらシュテンが駆け寄ってくる。


 「じゃあお願いしよっかな」


 そう言って、黒は横に退く。


 「せーのっ!」


 シュテンは力を貯めて、渾身のパンチを壁にお見舞いする。

 瞬間、鈍い音が鳴る。例えるならば、かなり大きな岩を殴ったときのような音だ。


 「いったぁぁあ!?」


 シュテンが右手を上げながら、涙を浮かべつつのたうち回る。


 「ちょっ、シュテンちゃん大丈夫!?」


 「たぶん...」


 シュテンの右手を見ると、かなり真っ赤に腫れている。骨をやってしまっているかもしれない。


 「ちょっと待って、治療ポーションAがあるから」


 そういいながら、黒はリュックからポーションを探す。こういった小物を取り出す際はリュックのほうがいいということで、新しく購入したのだ。


 「ありがと...」


 シュテンは飴型の治療ポーションAを受け取ると、それを舐める。すると、あっという間に手の腫れが引いていく。


 「頑丈さは十分のようじゃな...」


 その様子を眺めていたレェーヴがぽつりとこぼす。


 「だね...」


 「うん...」


 「次回からは素手ではなく物を使って試すことにしようかの...」


 「だね...」


 「うん...」



 魔法の壁を不用意に素手で殴ってはいけないと学んだ3人だった。 

いつも読んで下さり有難うございます。

感想、ブックマークとても励みになっております。


次回もよろしくお願い致します。

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