表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は楽しく生きたくて  作者: めのおび
1章 異世界へ
12/62

11話 私は今調整を試みます

 小夜世 黒(さよせ くろ)はマレザに借りている宿の自室に戻ると、ベッドに倒れるように横になる。


 「はぁ...」


 やっと一息つけた。さすがに少しは慣れたが凄く疲れる。早くスキル『共感覚』を制御できるようにならねば。常時発動している今は黒を苦しめる毒だが、相手の本質を一瞬で見抜けるのは武器になる。この世界で生きていくには必要だろう。


 まずはオフに出来ないかを試してみる。これは昨日も試したことだ。知識が増えた今なら何か変わるかもしれない。

 

 共感覚がない状態をイメージする。しかしやはり上手くいかない。何かが足りないのか、見落としているのか。黒はエユエの言葉を思い出す。確か『意識型は意識できる範囲であれば自由にオンオフやランクの範囲内で強弱を変えられます』と言っていた。


 「あ...そうか...」


 そこで、単純な見落としに黒は気づく。あくまでオンオフを行えるのは『意識できる範囲』だ。今ほど強力ではないが、黒はもともと物心ついた時から相手の感情や性格を感じ取ってしまう体質だった。それ故にそもそも共感覚が()()状態を知らないのだ。普通の人の感覚がイメージできないほどに根強く残ってしまっている。意識するべきイメージが分からないのだから、出来ようはずがなかった。


 しかし、ならばせめてこちらの世界に来る前の強さには落とすことができるだろう。

 思った通り、弱くすることには成功した。これでやっと普通に冒険ができそうだ。


 「いつか普通の人の世界が分かるのかな...」


 この世界ではイメージさえ出来ればこの能力をオフにできる。元の世界では叶わなかったことだ。諦めずに頑張ってみよう。



 ◯●◯●



 あの後、丁度昼時だったのでアヤ達3人と昼食を摂った。


 そして黒は今、森の中を走っている。倒したドラゴンの魔魂が落ちているかもしれないからだ。


 お金を持っていない黒は、生活に必要な最低限のものですら揃えられない。そのため今は、マレザにお世話になりっぱなしである。『共感覚』をどうにかできた今、最優先事項はやはりお金である。


 「この辺りだったと思うんだけど...」


 黒は記憶を頼りに、森の中を走る。

 少しして、目当ての場所にたどり着く。腐臭がしたので、その臭いを捉えてからは早かった。


 「ひどい臭い...」


 そこには胃液によって溶かされたのであろう残骸が転がり、地面は腐っていた。本体は見当たらないので、魔魂になったのだろう。しかし、体外に排出されたものは魔魂にはならないようだ。


 「浮遊(ふゆう)


 黒がそう唱えると、黒の足は地面から離れ宙に浮く。空に浮く魔法だ。飛行というとどうしても飛行機などが先に頭を過ぎりうまくいかなかったので、浮遊になった。

 黒はネーミングセンスが普通の人とはズレているらしく、よくクラスメイトに笑われた。なので、変に名前は考えずに無難なものを選んでいる。結構ショックだったのだ。


 黒は鼻をつまみながら魔魂を探す。すると、バスケットボールぐらいの黒い球体を発見する。見たことはないが、おそらくはこれが魔魂で間違いないだろう。球の内側から魔力を感じる。


 黒はちょこっとガッツポーズをする。いくらになるのか分からないが、ドラゴンの魔魂だ。きっと高いだろう。


 重さは10Kgぐらいだろうか。以前の黒なら持ち運ぶのは困難だったが、今は楽々持てる。黒は魔魂を抱えてルンルン気分で街に向かって歩を進めた。



 街まであと少しというところで、黒はふと思った。このまま魔魂を手にもって街に入れば少なからず注目を浴びてしまうだろう。そこで黒は、魔魂をワンピースの中に入れてギルドへ向かった。

いつも読んで下さり有難うございます。

感想、ブックマーク励みになります。


次回もよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ