かれは果たしてメシアだったのか・・
地獄百景もまだ5話目です。しかも、マンネリ気味のこの感覚・・・このペースだといったい100話完結するのはいつになることでしょう。
いや、それよりも、100話分のネタが思いつくのかどうか、少し自信がなくなって来ました。
いやでも、この位の超短編ならば、できないことはないはずです。一話分を短くしてでも、100話完結を倉本保志は、目指します。作品へのPVの続く限り頑張る所存でございます。応援をよろしく・・
「えっ、応援していないって・・?」あなた、そんなこと言ったら、今や、死語となっているあの昭和のフレーズを地獄から引っ張り出してきますよ「トホホ・・・・・」
地獄から引っ張り出してきますよ・・・
地獄百景 第5話 薬毒地獄
生前、化学薬品を投与散布などを行い、人々を、苦しめ殺害したものは、自らが使用した薬品によって、拷問を受ける。拷問は昼夜を問わず、無限に実施され、肉体を持ち得ていれば、とうに絶命して感覚というものは、おそらくは無くなってしまうが、痛み苦しみという、感覚は地獄界においては、どんな状態になったとしても、最後まで持続するため、生前の苦しみの数億倍の苦痛をあじわうこととなる。
Kは、うっすらと靄のようなものが、辺りにかかった場所にたどり着いた。
鼻の奥に、つんとくる異臭、レトロの負の遺産、嘗ての大都市での、大気汚染、公害をその臭いから否が応でも意識する。
Kは、あるひとりの男(罪人)が、両腕を、鬼に捕まれ、天を仰ぐように顔を向けられて大きく開いた口に、ジョウゴをくわえさせられているのを見た。
鬼たちは、数え切れないほどの一升瓶をわきに置き、その一本を持って、股を開き、大きな目でその罪人を凝視している。
・・・・・・
「なんだい・・? 酒なら俺も頂きたいもんだが・・?」
「ま、そんなわけは、ないよな・・」
Kは、口に ジョウゴを加えて、苦しそうに上を向いている罪人の顔を見た。
髪の毛、ひげを無造作に伸ばし、ぽんぽんに腫れた、顔は、贅肉が、幾重にも重なっていて、深いしわになり、上のまぶたが眠そうに塞がっている。
「・・・・・・」
「あれ、あいつ・・・どっかで見たことがあるな、」
「うん、確か見たような気がするが、
「ええと、ほら、」
「お笑いの、竹二軍団にいた、デリシャス浄瑠璃・・だったっけか、」
「懺悔にきた連中に水をぶっかける・・」
「いや、違う・・・」
「こいつは平成の世に何か、とんでもないことをしでかしたやつだ・・」
「胸にバツのゼスチャー」
「あれは、ジーザスのオマージュだったか・・?」
「違う違う・・・キリスト教なんかじゃない・・」
「ルート5の、数列暗記するのに、先生に覚えさせられた・・語呂合わせ」
「富士山麓・・オーム鳴く、2.2360679・・?」
「え、いや、まてよ・・」
「地下バス・・?」
「いや、地下にバスなんか走ってないし・・」
「サリー・・?は、インドの女性服・・・」
「・・・・・・・・」
「違うよ・・・俺の・・・・勘違いだ」
Kは、錯綜する記憶を、なんとか、繋げようと、必死だったが、結局は無理だった。
そして、生前の記憶が、ここにきて、どんどん薄れているのに気づいた。
「・・・・・・・・・・あっ始まる・・・」
「おおおらああ・・・」
「たっぷり頂くがいいぞ・・」
そう言ってこの拷問場の担当の鬼は、手にもった一升瓶を、その男のじょうごに、トクトクと注ぎ込んだ。
罪人は、注ぎ込まれた、液体を口に含んだかと思うと、そのほとんどをブワアアと吹き出し白目をむいてビクビクと痙攣を始めた。
「おう、おう、目をむくほどか・・・? そんなにうまいか、」
「うわはははは・・・」
「いくらでもあるぞ、遠慮せずに、どんどんやってくれ」
「そおおらあ、」
鬼たちは、笑いながら、再び、落ちたジョウゴを男の口に戻して、さらにそれを注ぎ込む男の、鼻から、目から、その液体はあふれ、シュウウという、音とともに、どんどん気化し、そのせいで、Kからは、様子がよく見えなくなってしまった。
「くそ、なんだ、
「よく見えないぞ・・・」
Kは、さすがに、余り近づくのはまずいと思ったが、なぜか、その時ばかりは、気がはやっていた。そして、急いでその拷問の場に近づいた。
なぜだかわからない、しかし、ここにいる罪人が、もがき、酷く苦しむ様子を、この目で、しっかりと見てみたい・・・Kは、そんな感情に駆られていた。
地獄にきて、おそらくそれは、初めてのことであった。
・・・・・・・
Kが、かなり近づいたときには、一頻り、事が終っていて、その男の顔は、目鼻の区別がつかないほどに、ただれ、赤黒く変色していた。手足は、相変わらず、かすかに痙攣をおこし、口からは泡をとばしている。
生きた人間ならば、とうに絶命し、おそらくは、肉体的な苦痛は持ちえないはずなのであるが、ここは、地獄・・ すうーっと男の顔を生暖かい風が吹けば、たちどころに意識が回復し、その絶叫に値する苦痛を、再び味わうこととなる。
「ウオオオウ、オオウウム・・・」男は、苦しさの余り、その薬品を口に含んだまま、喘ぎ声をあげた。
・・・・・・
「ふふ、なんだそれは・・・?呪文か何かか、?」
「ああ、きっとそうだ。一切の苦しみが解脱されるんだ・・その言葉で・・」
鬼たちは、笑い合っていた。
・・・・・・・・・
「ははは、ざまあみろ・・・」
かじりつくようにその様子を見ていたKは、自分の口からこぼれ出た言葉にはっとした。
「・・・・・・・・・」
「ざまあみろ・・?」
「いったい、俺は何を言ってるんだ?」
・・・・・・・・
Kには、自分の気持ちが判らなかった。一つ言えることは、今回は、鬼たちの拷問に対して、やけに手ぬるさを感じているという、これまでにない、不思議な感情に、躍らされているということである。
なんなら、自分がこの手で、この罪人にこの液体を容赦なく浴びせてやりたい・・・
それは、ここに来た自分の、果たすべき、重要な責務であるかのような錯覚にKは、陥っていた。
・・・・・・・・・・・・・・
Kは、やっとのことでその感情を抑えた。
そしてまた、前に延々と続く、果てしない一本道を、歩きはじめていた。
おわり
「トホホ・・」で思い出しましたが、昔使われてた言葉かなり、死語になってますね、ボインとかも言わないですし、(母印のことではなくおっぱいのでかいこと)ポンコツ(使い物にならないこと)なんかもそうじゃないですか・・・あ、とんこつは、いまでもOKですけれど・・・
ジェネレーションギャップを言うわけではないですが、言葉の持つ独特の質感を伝えるのは、だんだんと難しくなっているのかもしれません。言葉の持つ悲しい性 なのも知れませんが