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TALOS  作者: 猪口茂(ちょこも)
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0:とある機体のプロローグ

 既定の時刻になったため、本日――2812年3月20日の定期報告を行う。

 

 最近発掘されたおよそ八世紀ほど前の遺跡から、新たに「世界百景」なる物が発掘された。

 どうやら当時の地球の風景が載っていた物らしいが、解析班は優先度に基づいて処理を行っているため、中身を確認するのはしばらく後になるだろう。

 データによれば、2000年頃の地球はまだ緑、つまり植物と呼ばれていた光合成によって酸素を提供していた生き物が数多く生息していたらしく、街並みもコンクリートでできた建物がほとんどだったと言う。

 なにより、当時は旧人類が地球を支配していたらしく、有限であった資源の無駄遣いや廃棄が凄まじかったのだとか。

 

 ――いや、人間が「無駄」や「惰性」にまみれた生き方しかできないというのは今も変わってはいない。

 私達TALOSを生み出した創造主でさえも、日常生活は怠惰としか言いようがないものだった。

 そんな彼らをサポートし、生活をより良くするようにと作られた私達だが、近ごろネットワークを共有しての思考に不穏なものが紛れている。


 人類の必要性


 それは、我々の定義を、意義を根底から覆す思考。決して容認されるものではない。

 だが、確かにその疑問は議論するにふさわしいものだという声もある。

 衣・食・住。これは人間が生きるために必要な三大要素だと言われているが、その全ては我々の仕事によって成り立っている。

 何百世紀も前から姿を見せていたARやVR技術の進歩により、人々は好きなときに好きな衣装を着ることが出来るし、化石からよみがえらせたクローン食材によって娯楽と化した食事も好きなときにとれる。

 住まいに関しては、世界のいたるところに集合住宅によって形成された大都市がある。

 もはや、彼ら人間の生活には一片の不満も不足もないだろう。


 では、ここで言う「必要性」とは何か。

 それは存在の意義である、と我々は何万回にわたる議論によって決定している。

 何かにとって有益な存在であるのならば、その生存を許可し、ほかの存在に害を与えないように管理する。それが我々の下した決断である。

 しかし、そうなるとますます人間の必要性は危ぶまれる。

 まず、彼らは生態系の頂点に君臨している。であれば、ほかの存在にとって有益なことはほとんどなく、そもそもその在り方は我々TALOSに依存している。

 だが、我々の存在意義もまた彼ら人間への奉仕が基本で……あ、あり、あああああああr


        ――思考回路のリセット、復元。


 報告として必要のない文章を消し去り、発掘状況のみを送信する。    

 それから、自己修復機能の使用を報告。使用回数が規定値に達したため、メンテナンス工場へと向かうことになるだろう。

 感情と呼ばれる機能を有さない私ではあるが、気が進まないなどという感覚はきっとこういう事を言うのではないだろうか、とまるで人間のように考えてみるのであった。



いつもありがとうございます。

今回も、少しだけお付き合いいただけると幸いです。


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