第五語 嘘吐き
皆様、こんにちは、こんばんは。
人は誰しも、嘘をつくことがあると思います。
人を騙すため、自分を守るため、誰かを守るため。
嘘をつく理由は様々です。
しかし、嘘をつくと、その場はやり過ごせても、後々に後悔となってのしかかり、嘘をついたことに対しての責任の沼へと沈まされることも多くあります。
今回は、嘘のせいで取り返しのつかない深い沼にはまってしまった人のお話。
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ある町に、ある青年がいました。
青年は、同じ学校に通う、女の子に好意を寄せていましたが、周りに茶化されるのが嫌で、いつもそれを否定して、隠していました。
ある日、いつも青年のことをふざけて茶化す、青年の友人が、廊下で、
「やっぱりお前、○○(好意を寄せている女の子)のこと、好きなんだろ?」
と、青年に言いました。しかし、そんなことを言われた青年は、
「いっつもいっつもしつこいなお前は。んなわけないだろ!あ、あんな奴、大っ嫌いだよ!」
と、叫んでしまいました。すると、ちょうど廊下の角から、話題の人物となっていた彼女が出てきました。
彼は聞こえていたかもと、焦りましたが、彼女は二人の横を何事もなく通り過ぎていきました。
通り過ぎた後、隣にいた友人は、小声で、
「危なかったな、聞こえたかと思った…」
青年は、小さく頷きました。
しかし、彼は見ました。
彼女の少し小さめの手がきつく、きつく握りしめられていたことに。
彼女は聞こえていたのです。
彼はそのことに気づいて、酷く後悔しました。
しかし、その事を謝ることも、訂正することも出来ないまま時は過ぎ、彼女と学校は離れ離れになって、それ以来、会うこともありませんでした。
そして、彼はその時から、自分の嘘で取り返しのつかないことをしたショックで、周りの言うことは勿論、自分のことさえ、信じられなくなってしまいました。
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どうでしたでしょうか?
今回は、自分を守る嘘のために、愛していた人を傷つけ、それによって自分も傷ついてしまいました。
ところで、自分を守る嘘にも、ふたつの種類があることをご存知でしょうか?
ひとつは、自分を守るため、相手を欺く嘘。
もうひとつは、自分を守るため、自分自身を欺く嘘。
今回のお話は、後者です。
自分に嘘をつく。
それがどれだけ哀しいことなのか、彼は身をもって体験してしまいました。
それでは、次回は彼女の視点で話を見ましょう。
では、次の語り部まで、
Au revoir。