一緒にお風呂に……いや、描写はしませんよ?
「それでは、本当の食堂へ向かうとするか」
「へ?」
「呼んでないといったがな、この部屋はもともと食堂ではないのだよ。だから、ここには呼んでいない」
「時間を取るだけなら、普通にお呼びくだされば向かいましたが?」
「いや、できる限り本音で話したかったのでな。かといって、風呂を共にするのは嫌であろう?」
「広さにもよりますが、特に問題はないです」
「え」
王様は扉の手前で止まった。
「風呂でもよかったのか?」
「はい。さすがに狭い中に入るのは嫌ですが、俺の借りている部屋と同じくらいの広さであれば、全く問題はないです」
俺と美咲の借りている部屋は三十畳以上ありそうな、かなり大きな部屋だ。
俺たちは話をつづけながら、部屋を出た。
どこに本当の食堂があるのかは知らないが、王様も自分の城のことくらいは熟知しているだろう。
自分の家で迷う奴なんてそうそういないよな?
「なら、あとで一緒に入るか?息子も紹介しておきたい」
「息子というと、王子ですか?」
「もちろんだ」
「わかりました。それと、出来れば手伝いなどはなしで……」
俺の偏見だが、王族やくらいの高い貴族などは、自分ではやらず使用人にやらせることが大半だと思っている。風呂でも主人公の体を洗いに来た使用人に驚く、という描写もなくはない。
よって、先にくぎを刺しておくべきだと思ったのだ。
「何を言っているのだ?着用に手間のかかる服を着るわけでもないのに、なぜ手伝いが必要になる?」
「あ、そうですよね。すみません」
やっぱりラノベの中とは文化が違うよな。
そのことを再認識していると、
「なんだ?正和殿、そういうのが好みか?」
王様がにやにやとこちらを見ていた。
「違います」
そんな変態趣味はない。
「年齢も17くらいであろう?まさにお年頃ではないか」
さらににやにやとしながら言ってくる。
正直、うざい。
「だから、違いますって。それと、俺は十五才です」
「おや?ソフィと同い年だったのか。てっきり年上かと思っておったのだが」
予想通りソフィも十五才だったのか。
「みたいですね」
「それなら、どうだね?ソフィをもらっては……」
「すみませんが、私ではとてもとても。あれほどの美人とは釣り合いません」
無駄に仰々しく辞退する。
「嫌いなのか?」
「まさか。そんなことはありませんよ」
実際、お願いを断り切れなかった部分もあるし。
「それならよかろう。ソフィは王女と言っても継承権は低い。私としては、自分で好きになったものと結婚してほしいのだよ」
なんと。これまたびっくり。
どこかの貴族に嫁がされるんじゃないかと思っていたが、この世界は王族も自由結婚なのか。
「そうですね。なら、なおさら、俺なんかに進めるべきではないのでは?」
「ふむ。君がそう思っているなら、今はそうしておこう」
王様が立ち止まった。
「ここが食堂だ。中に入るぞ」
「はい」
王様に続き中へと入る。
「お父様」
「お兄ちゃん」
ソフィと美咲が俺たちが入ってきたことに気づき、声を上げた。
俺と王様は目くばせすると、それぞれの家族の場所へと移動した。
みなさんこんにちはyoshikeiです。
今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。
あの後、彼らは実際に入ったんですかね。
ご想像にお任せしますけど。
今後ともよろしくお願いします。