伝説の勇者
王様は首だけを下に向けた。
そう言えばギックリと行っちゃったんだっけ……
「いえ。ですが、俺たちは戦いの素人です。戦闘とは無縁の世界で生きてきました。なので、そんなことを突然言われてもできるはずがない」
「ああ、そのための訓練期間も作ってあった」
「もちろん理由はそれだけではない。今のままでは情報が少なすぎるんです」
「というと?」
王様は試すような目をした。
「この世界のステータスという概念は、元いた世界にはありませんでした。いえ、架空のものだったといったほうが正確でしょう」
「それは、本人の強さはわからないという事か?」
「そんなものですね。創作物の中でしか、ステータスは見ることが出来なかったのです。
その創作物の中には、今回のような異世界召喚の物語もありました。
今回同様に危機に陥った世界を救うという物語です」
「まさに君たちのようだな」
「いえ、その物語ではすぐに冒険に出ていたので、少し違うでしょう。
また、その物語の主人公は自分の元いた世界よりも、召喚した世界を優先したのです。
帰ることのできる保証もない状態で、死ぬかもしれない旅に出たのです」
「伝説の勇者の物語のようだな」
「こちらの世界の物語には疎いですが、正義感にあふれた人物、とでも言っておきましょう。
ですが、俺たちは違います。見知らぬ者のために命を捨てる。そんな選択はできません」
「そうだな」
王様は大きく頷いた。
「俺たちはあくまでも一般人です。自分の命が、そして、人生がなによりも大事だ。だから前回は、断らせていただいたのです」
「わかった」
「そして、現在もいまだ自分の力はわかっていません。
ですので当面はなにが起ころうと、自分のことを優先させていただきたく思います」
「承知した」
「それと、これは俺個人の意見ですので、父さんや母さん、妹がなにか言ったなら、そちらを優先していただけると、嬉しく思います。お願いできますでしょうか」
「それは、戦いに出るといった場合は、その通りにさせてもよい。という事か?」
「その通りです。先ほどは家族の安全と情報の保守のため、俺の独断で断りました。
ですが、もう一度個々に話せば、討伐に向かうと言うかもしれません」
「本当にいいのか?君のご家族が死ぬかもしれないのだぞ?」
「わかっています。ですが、この類の物語をよく知っているのは俺だけです。そのせいで余計に警戒しているのかもしれません。ですから、それぞれの判断で行動させたほうが良いと考えました」
「わかった。約束しよう」
「ありがとうございます」
俺は深々と頭を下げた。
みなさんこんにちはyoshikeiです。
今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。
前話の答えはギックリです。そろそろ引っ張るのはやめようかなって思ってます。
今後ともよろしくお願いします。