自己紹介と言い訳
「ありがとうございます。大切にしますね。えっと……」
ここで俺はまだ自己紹介をしていないことに気づく。
「俺は大山 正和だ。大山が……」
「前に来るのがファミリーネームなんですよね。名前の事も過去の勇者の伝説とともに伝わっております」
「そうなのか」
そう聞いて、俺は帰れるのかが気になった。
「その勇者って元の世界に帰ったの?」
「いえ、そんな話は聞いたことがないです。ただ、言い伝えではその勇者は三度世界を渡ったと」
「へぇ……」
三回渡った。
という事は前に召喚されて、一度元の世界に戻っている?
そして、元の世界に戻ったのち、こっちに来た?もしくは、頻繁に呼び出されるような人だったとか?
様々な案は出たが、情報が足らず、途中で考えるのを断念した。
ふと彼女を見ると、指輪を見てほほ笑んでいた。
「それで、ソフィの用事ってなんだ?余計なことで時間を取られたが、話が合ってここに来たんだろ?」
「あ、そうでした!」
どうやら忘れていたようだ。
彼女は「コホン」と咳ばらいをすると、まじめな表情になり、話を始めた。
「この度は突然の召喚、誠に申し訳ございませんでいた。
お話はすでにお聞きになっているかと思いますが、知っての通りこの世界は危機に瀕していて、この手段を取らざるを得なかったのです。
一度断られているのは、十分承知しております。ですが今一度、考え直してはいただけませんでしょうか」
ソフィはさっきまでの雰囲気とは一変して、一国の王女としての威厳と風格があった。
そりゃ、救ってあげたいけど、それよりも帰る手段を知りたい。
「ごめん。やっぱり……」
「また!」
彼女は大きな声で俺の声を遮った。
「……また、聞きに来ますから、」
その言葉を残して扉は閉まった。
「(自分の力もわからない中で安請け合いはできない。それに、前にも考えたじゃないか。元の世界じゃないとダメなんだよ)」
俺は残された部屋の中で一人、言い訳をしていた。
みなさんこんにちはyoshikeiです。
今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。
みなさんは気づいていましたか? 異世界に来てから、一度も自己紹介をしていないという事に。
そんなこんなで、ソフィが主人公の名前を知ることが出来ました。今後の二人にこうご期待。
今後ともよろしくお願いします。