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ゴブリンから始まった!  作者: 冷星 夜姫
異世界アーシカル
9/18

9=異世界、今度こそ 前編


 キルが目を覚ましたのは、昼になった後だった。魔核による回復で疲れはなく、充分な睡眠で爽快感だけが残っている。


 「あー、よく寝た。って、これは………」


 目を覚ましたキルは驚く。進化直前に感じていたあの感覚。それがあったのだ。

 まあ、あれだけのスケルトンから魔核の魔力を吸ったのだから、当然なのだが。


 「じゃあ、後はこいつのやつを食べれば……………」


 そう言ってキルは亀の魔物を見る。そう、こいつの魔核を食べれば、もう二度目の進化が出来る筈だった。

 だが、その前に…………。ぐぅぅぅ~、と大きな音がキルの腹から鳴った。


 「まずは腹ごしらえだな。こんなにあるし、余裕で足りるだろ」


_____________________


 「ふぃー、食った食った。満腹だ」


 そう言ってキルは地面に寝転がる。その横には、骨だけになっあ亀の魔物があった。


 「さて、と。じゃあ、やるか」


 キルは起き上がり、亀の魔物から採った魔核を見る。その魔核は今までの紫色とは違い、澄んだ青色をしていた。これは、亀の魔物が一段階上の相手だった証明だ。

 キルは痛みに備えながら、魔核を口に放り込む。魔核を飲み込むと、やはり、強烈な痛みが襲ってきた。

 今度はくるのがわかっていたからか、なんとか意識を失わずに耐え抜く。数分後、痛みが収まったキルは、息を整えながらステータスを開いた。


■□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

名前:キル サイレンスオーガ

スキル:【無音】【潜伏】【夜目】【暗殺剣】【特殊進化決定】【言語】【疾走】【危機察知】【飢餓耐性】【気配隠蔽】【跳躍】【無呼吸】【魔力吸引】【激痛耐性】【刹那】

称号:【異世界人】【女神の注目】【特殊進化魔物】【新種】【始祖】

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□■


 「何か色々変わってるな。名前は、直訳すると沈黙の鬼、かな?新しく増えたスキルが【魔力吸引】と【激痛耐性】。それに【刹那】か」


 【魔力吸引】は、あの煙を吸い込んだからだろう。たぶん、魔力を吸う効果がある。


 【激痛耐性】は、進化時の激痛に耐えきったからだと思われる。激痛を和らげる効果だろう。


 【刹那】は、意味合い的に【疾走】と似たような効果だろう。


 「それに、何か称号も増えてるな。相変わらず意味はよくわかんないけど。とりあえず、新種になったのはわかった」


 そう、キルは新種の魔物になったのだ。キルは気づいていないが、進化による強化に【始祖】の効果が加わり、あり得ない程の成長をみせている。


 「んー、なんか、凄い強くなった気がするんだけど………」

 (これは、あの熊よりも………いや、まだアイツの方が上だ。だけど……)


 対等に戦える、と。キルは気分を高揚させる。思いの外、早く決戦の時は来た。

 キルは戦闘意欲を高めながら、静かに山を下っていった。


_____________________


 あの洞窟へは直ぐにたどり着いた。【危機察知】によって、中にあの魔物がいないのはわかっている。

 キルは待った。熊は現れないまま、時間だけが過ぎていく。やがて空が暗くなり始めた頃、そいつは漸く現れた。


 「グルゥゥゥゥ」

 (…………っ!、来た!)


 短剣を握りしめるキルの視線の先には、赤黒い毛皮の、熊の魔物が立っていた。


 戦闘は静かに始まった。キルは音をたてずに熊の後ろをとる事に成功し、その勢いのまま熊を斬りつける。その一撃が当たる直前、熊がキルに気づき、振り返った。

 それにより狙いがずれ、後ろ足の付け根を狙った一撃は、膝あたりを軽く切り裂く程度にとどまる。

 キルは怯まず次の攻撃に移ろうとしたが、その前に熊が腕を振り下ろしてきて、キルは仕方なく一旦距離をとった。

 その短い間のやり取りで、キルはある程度の自分と熊の魔物の実力差を定める。


 (なんとか避けれる………速度はこっちが上か。それに、攻撃も通用する)


 キルは焦ることなく、極めて冷静に熊の魔物を睨みつける。


 (それに、【刹那】の効果も大体わかった)


 【刹那】の効果は、【疾走】と同じ様な効果も持っているが、それはおまけのようなものでしかない。

 【刹那】の本来の効果は、集中時の視界認識速度の低下だ。つまり集中すればするほどに、ものの動きがゆっくりに見える。それは、ギリギリの戦いでは、かなりの切り札になる。


 互いに睨みあっているなか、キルが動く。その動きに合わせて熊の魔物が腕を振り下ろすが、キルもそれは当然予測している。

 腕の軌道をよく見て、当たるすれすれのところで体を回転させ、腕に片方の短剣をつきたてる。キルはそれを支えに跳び、回転蹴りを熊の魔物の鼻に叩き込む。予想もしていなかった攻撃をくらった熊は、怯み後ろに下がってしまう。

 キルはそうはさせまいと更に踏み込み、右腕の付け根を深く切り裂いた。致命傷をくらってしまった熊の魔物は、痛みにくぐもった呻き声を洩らしながら、後ろに下がる。キルも、今度はその場で待機した。

 熊の魔物は、右腕から血を大量に流しながら、キルを怒りの形相で睨み付けている。その右腕は力なく垂れ下がっていて、もう動かす事すら出来ないだろう。

 キルは有効打を与えた事に、ひとしれず笑みを浮かべた。



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