2=異世界数日後
「ああー、何にもわかんねー。女神は何にも役にたたないなー」
現在、キルは丁度見つけた洞窟に入って、女神に喧嘩を売っていた。端から見るとかなり変な行動だが、これもちゃんとした作戦だ。
キルが考えた結果、情報が足らなすぎると判断した。そこでキルが考えたのが、女神に情報を提供させる、という考えだ。
婆さんと言った程度で怒ったのだから、少し挑発すれば情報を差し出すのでは?と考えたのだ。そして、その考えは的中した。
「女神、あの婆さ、いたっ!?な、なんだ?」
キルが婆さんと言おうとした途端、キルの頭に何かが落ちてきたような衝撃が起こった。慌てて周りを見ると、地面に重そうな分厚い本が落ちている。
「ああ、もうくれたのか。もう少し丁寧に渡してくれても良かったのに………」
キルはそう言いながら本を拾い、表紙を開く。中に書かれていたのは知らない文字だったが、【言語】の効果か普通に読めていた。
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「大体わかったな」
数時間後、キルは本を読み終えた。あれほど分厚い本に入っていた情報を簡単にまとめるとこうだ。
・この世界の名前は「アーシカル」。女神が担当している世界で、世界は他に無数にあるらしい。
・人間族、妖精族、獣人族、魔人族が存在する。一番数が多いのが人間で、他は大体同じ位の数だそうだ。
・この世界には魔物が存在し、魔物は死亡時に胸部分に魔核が生成される。魔核は全て同じ大きさで、その中に内包されている魔力の大きさによって色が変わる。
・魔物は魔核を食べる事で強くなり、その肉体の限界まで達すると、より強い肉体へと進化する。
・この世界には魔力が存在し、肉体の強化や魔法の行使、時には魔道具の使用など、様々な事に使われる。
「さて、これでさっきの現象の正体はわかったな。これで次の目標は決まった」
キルが食べたのは、あの兎っぽい魔物の魔核だったのだ。キルがそれを食べたという事は、食べる前よりも少しは強くなった筈である。
それに、ゴブリンは弱い魔物だ。なら、肉体の進化も早く訪れる筈。なら、次の行動は簡単だった。
(魔物を殺して、魔核を食べる。そうすりゃ、強くなれる筈だ。それに、食料も手に入るしな)
時間が経って音を鳴らす自分の腹を見ながら、そう考える。早速洞窟から外に出ると、何かにぶつかって転んでしまった。
「いてて、なんだ?いっ、た、い………………」
キルが見上げた視線には、巨大な体を持つ熊らしき魔物が映った。キルはその緑色の顔を青くして、慌てて短剣を手に取った。