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ゴブリンから始まった!  作者: 冷星 夜姫
迷宮都市シェリザル
16/18

16=迷宮都市、ガブリエル


 「終わったか。何だったんだ、あれ?今までとは違ったけど」


 そう言いながらも、キルはなんとなくその理由に気づいていた。キルはステータスを開いて確認する。


■□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

名前:キル・ 魔人族:俊風鬼

スキル:【暗殺術】【特殊進化決定】【言語】【疾走】【危機察知】【飢餓耐性】【跳躍】【無呼吸】【魔力吸引】【激痛耐性】【刹那】【俊敏】【風魔法】【斬撃】【回避】【ガブリエル】

称号:【異世界人】【女神の注目】【特殊進化魔人族】【新種】【始祖】【人となりし者】

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□■


 キルはステータスを見て、やっぱりというように頷いた。


 「よし、一回で魔人族になれたな。なんかスキルも増えてるけど………」

 『それについては、私が説明を』

 「………あれ、今誰かの声が………やばっ、もしかして見られてた!?」

 『えっ、あの、ちょっと?キルさん?貴方の頭の中から話してるんですよ』

 「違う、絶対に違う!俺は頭の中に二重人格とか、そんな厨二病じゃねぇ!しかも、それが女なんてあり得ない!」

 『そんなこと言われてもですね。事実は事実ですから。それに、私は貴方の別人格じゃありませんし』

 「え、そうなの?」


 頭の中に聞こえるその声に、やっとキルは話を聞く気になった。謎の声は、どこか安心したように話し始める。


 『はい、私はガブリエル。貴方のスキルです』

 「ガブリエル?ああ、そういえばあったな、そんなスキル。ガブリエルか………それって、天使の名前じゃなかったっけ?」

 『はい、私は天使です。そのガブリエルで間違いありません』

 「あれ、さっきはスキルって言ってたよな?」

 『私達上級天使は、一回はスキルとして誰かに宿らなければならないのです。それでそのスキル保持者に顕現させてもらい、それで晴れて天界へと戻れるのです』


 ガブリエルの説明に、キルはわかっているのかいないのか、曖昧に頷く。


 「成る程な。でも、どういう条件でそのスキルは宿されるんだ?」

 『それぞれの天使が出した条件に合致した者にスキルは宿ります』

 「ガブリエルはどんな条件を出したんだ?」

 『強くて、生後一年以内で、魔物から魔人族になった人で、異世界人、です。まさか、こんな条件に合う人がいるなんて………うぅぅ~』


 頭の中で泣き出したガブリエルに、キルは何も言い返せない。


 「だけど………随分特殊な趣味だな、お前」

 『違いますっ!ただ絶対に居なさそうな条件にしただけです!私は天界での仕事が気に入っていたので………』

 「ふ、ふーん」


 先程の泣き声は何だったんだのか。もの凄い勢いで話すガブリエル。

 それから少しするとようやく落ち着いた。


 「それで、【ガブリエル】はどんなスキルなんだ?」

 『私は、神からのお告げ、つまり神託を告げるスキルです。おまけとしてですが、アイテムやスキルの説明もする事が出来ます』

 「おまけの方は便利そうだけど…………神託って、どういうのだ?」

 『簡単に言えば、神からの試練です。それをクリアすれば、なにかしらのクリア報酬を授かる事が出来ます』

 「試練、ねぇ」


 それを聞いたキルは、面倒な予感しかしなかった。今気にしてもしょうがない、とそこで考えるのをやめたキルに、ガブリエルが言った。


 『ところで、キルさん。このままここに居ると、他の者に見つかってしまいます』

 「ん?もう魔人族になったんだから、見つかっても平気じゃないのか?」

 『そうではなく………大きな声で独り言を言っているキルさんは、端から見るとかなり奇異なのでは、と』

 「あ、それもそうか」


 ガブリエルの言葉に冷や汗を流しながら周りを見回したキルは、誰もいない事を確認し胸を撫で下ろす。


 「良かった、誰もいないな………ところで、他にガブリエルと話す方法はないのか?」

 『頭の中で念じれば、それで話せる筈です』


 ここですんなりと出来れば良かったのだが、そう簡単にはいかない。数分ほどの後に、やっとキルは出来るようになった。


 『これが、頭の中で喋る感覚か。なんか変な感じだな』

 『いずれ慣れるかと。それで、この後はどうされるのですか?』

 『そうだなー………神託ってのは今はないのか?』

 『はい、正確にはあったのですが、キルさんは既にクリアされているので』

 『そうなのか………とりあえず、一旦領主邸に行くよ。そうしたら、スキルと一緒にクリア報酬も確認しよう』

 『了解です、キルさん』


 とりあえず次の目的が決まったので、キルは早速上に上がる階段に向かって歩き出す。


 『さあ、行くぞ、ガブちゃん!』

 『ちょっと!?ガブちゃんって何ですか!?』



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