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月明かりの王女

ラットは大扉のドアノブを握ると、天びんに重りを載せるよう、少しずつ力を入れる。

僅かに扉を開けると、中からは廊下の窓と同様の濃い月光が差しこんできた。

(明りは……ついていない)

 これに、ラットは薄ら笑みを浮かべる。中に人がいて、なおかつ、起床しているのならば、なにかしら明りを燈しているはず、それがこの部屋の中になかったからだ。

ほぼ間違いなく無人。最悪の場合でも眠りについているはず。ラットはそう確信し、扉をさらに押し開け、中を覗き見た。

 しかし、次の瞬間、その考えはたやすく裏切られることとなった。

 ラットが覗き見た先の光景、それはまるで一枚の絵画のような風景だった。白の布地に銀装飾のカーテン。それに包まれるような大きな窓。そこからは青みがかった銀色の光を注ぐ、満月が顔を覗かせている。

そして、

(…………女の子?)

その窓辺には一人の少女が佇んでいた。

少女はラットに背を向けたまま、輝く月を見上げている。腰まで伸びた白い髪、上等な布で織られた純白のドレス、それらに負けないほどに透き通った白い肌。その後ろ姿だけでも、その少女が『アルビノ』であるとわかる。

「天……使……?」

月の光を一身に受ける少女の神々しい姿を目にしたラットは、無意識に言葉を溢した。女性を天使に例えるなどと、詩人ですら憚るであろう表現だろうが、そう形容してしまうのがごく自然であるほどに、その少女の後ろ姿は神憑っていた。

 すると、その言葉が聞こえてしまったのだろう。少女はラットの方へと振り返る。その顔は驚いているような、はたまた、どこか嬉しそうなようにも見える。

(……しまった!?)

 ラットは急いで口を塞ぐが、時すでに遅く。その少女と視線は、疑う余地なくラットと交錯している。

 自分のしでかしたことの重大さに、ラットの顔面は蒼白に染まった。

しかし、それも当然だ。もしこの少女が悲鳴の一つでも上げようものなら、すぐさま近衛兵が駆けつけることになる。そうなれば、非力なラットに抗うすべはなく、あっけなく捕らわれた後、明日の昼には首に縄をかけられることになるだろう。

そうなる前に、この少女の“口を封じる”という手段もあるのかもしれないが、非情に徹しきれない、ある意味で“未熟”であるラットにそれを実行する度胸はない。

つまりはこの状況、ラットにとっては最悪の事態に直面しているに等しい。

(す、数秒前の自分をぶん殴ってやりたい……!)

 直前の行動を悔いる言葉が、ラットの頭の中で反すうする。

「――ふふっ」

「…………えっ?」

 そうしてラットが絶望に打ちひしがれる中、視線を交わしていた少女は突然に微笑むと、小さな笑い声を溢した。

 思いもよらないこの反応に、ラットの方が驚いてしまう。

普通ならば、驚いて表情を固めるべきは少女の方なのだが、その少女の表情にはまったく陰りはみられなかった。むしろ、その微笑みは徐々に広がり、直に純粋な笑顔に変わる。

「あなた、お名前は?」

 少女はラットに名前を問うてきた。

「な、名前……?」

 ラットは未だに混乱したままであり、少女の問いに即答できない。

しかし、少女はそんなラットを急かす様子もなく、柔らかい表情のままラットの返答を待っている。

「あ、ああ。……ラットだ、ただの『ラット』。そんな風に“呼ばれてる”」

 そんな不思議な雰囲気を持つ少女に、ラットは半ば無意識に名乗ってしまう。

 名乗った、とはいっても、『ラット』という名は本名ではない。というよりは、物心ついた時から孤児だったラットには、元から名前がないのだ。『ラット』いう名は “他称”に過ぎない。しかも、その意味合いは『人間に害を及ばせる』、『人間のものを盗む』という、悪意のある呼び方だ。

 ラットは自分の名前が女性に名乗れるようなものでないことを理解している。だからこそ、恥じらいもあって“呼ばれてる”などと言葉尻に付け足した。

 しかし、ラットの名にそんな意味があることなど、赤の他人にわかるわけもなく、少女はラットの名前を聞き届けると、無垢な笑顔で嬉しそうに頷いてた。

「ラット様ですか。よいお名前ですね」

 悪意のある言葉だとは露とも思っていないのだろう。少女はラットの名前を気に入った様子だ。いい名前などという台詞が、ラットにとって皮肉なのだとは気づいてもいない。

「……ああ! 申し遅れました。わたくしは『ベラ』。『ベラ・ローザ・フリチラリアⅧ世』と申します。以後、お見知りおきを、ラット様」

 そして、すぐに自らも名乗りを上げた。少女はドレスの両裾を軽く上げ、ラットに向けて軽く会釈し、丁寧に自己を紹介をする。

「フ、フリチラリアⅧ世!?」

 その名を聞いた瞬間、ラットは飛び跳ねるように驚く。

(……ってことは、次期女王! “王女様”じゃないか!?)

 フリチラリアは代々、女王が治める女君制の国だ。そして、目の前にいるこの少女が、いずれこの国を治める正統後継者だとわかり、ラットは言葉を失ってしまう。

(女王には娘がいると聞いていたけど、俺と同じくらいの年ごろだったんだ。しかも、こんな美人な……)

 正面を向いたベラの容姿に、ラットは目を奪われていた。

ガラス細工のように華奢で透き通った手。蒼玉のような青い瞳と、それを包む白いまつ毛に、人形のように整った小さな顔。どれをとっても非の打ちどころがない容姿だ。

ただ、アルビノという人種が珍しかっただけではない。まるで子供向けの絵本から飛び出してきたような、非現実的な美しさがベラにはあった。

「そんなところにお立ちになっていないで、お入りになってください」

 ベラはそんなラットに対し、にこやかな表情で入室を促してくる。そこにはラットに対する警戒感や、不信感といったものは感じられない。まるで旧友を招くかのような、不自然なほどに友好的な態度だ。

「あ、ああ……」

 ラットは最初こそ困惑するが、不思議とその言葉に抗えず、おずおずと部屋に足を踏み入れてしまう。

室内に入ったラットが大扉から手を離すと、その重量のためか、意思があるかのようにひとりでに閉まってしまった。

盗賊としての性分だろう、ラットは入るや否や、部屋の中を値踏みするよう見渡してしまう。

室内は流石は王女の私室といったところで、見るからに豪勢だった。磨き抜かれた大理石の床と壁。個人の部屋とは思えないほどに巨大な暖炉。足が埋まってしまいそうなほどに厚みのある絨毯。一家族が余裕で寝ころべそうなベッド。そのなにもかもが庶民のそれとはかけ離れている。

(こ、こんなに違うもんなのか? 同じ人間のねぐらが?)

あまりに住む世界が違いすぎて、思わずラットは大口を開けて呆けた。

「……ラット様?」

 部屋を見回して立ち尽くすラットに、ベラが不意打ち気味に話し掛けてくる。

「あ、ああ! な、なにかな、王女様」

 その言葉に我に返ったラットは、体を縮み込ませながら返答する。

そんなラットに対し、ベラはなにやらもじもじとしながら、呟くように質問してくる。

「そ、その、つかぬことをお聞きしますが。もしや、ラット様は城下よりお越しになったのでは……?」

 ベラは自分の両指先をこねくり合わせながら、なにやら期待した眼差しでラットを見つめている。

「えっ? そ、そりゃあ、まあ、一応は……」

 その純粋無垢な眼差しに、ラットはつい正直に答えてしまう。そんなことを言えば、自分が侵入者だと自白するようなものだと、わからないわけもないはずなのに。

「やっぱりそうでしたのですね!」

 ラットの返答を聞くと、ベラの表情ははち切れんばかりに輝き出す。

そしてなにを思ったのか、小走りでラットの下に駆け寄ってきた。

「うわっ!?」

 驚いたラットは後ろに下がろうとするが、それよりも早く、ベラがラットの手を両手で捕える。

「わたくし、町の方とお話しするのが夢だったんです! よくいらっしゃってくださいました、ラット様!」

 ベラは掴んだラットの手を自分の胸元まで寄せると、包むように両手で握り絞めながら、ラットに微笑み掛けてきた。

「あ……あ……」

 自分のすす汚れた手を、真珠のように輝く白い手がやさしく包んでいる。そんなあまりに不慣れな光景に、ラットは身が竦み、怯えるように固まってしまった。

「……あっ! も、申しわけありません!」

 ベラはラットの様子に気付くと、慌てて手を放し、一歩下がって頭を下げる。

「どうしても感極まってしまい、自分を抑えることを忘れてしまいました。……どうかお許しください、ラット様」

「……あ? い、いや、そんな……」

 自分のようないやしい身分の人間に、一国の王女が頭を下げる。このあまりに不釣り合いなできごとに、ラットは慌てふためきながら恐縮する。

そんなベラは申しわけなさそうな表情を見せた後、再び柔らかい顔で向き直ってきた。

「そうです、まずはお客人のご用件を聞くことが礼儀でした。……では、改めて。ラット様、本日はどのようなご用件でわたくしの下を訪ねてくださったのでしょう?」

「えっ!? あ、えっと、その……」

 ラットはこの質問に目に見えて狼狽してしまう。全身から冷たい汗が湧いてくる。心音も太鼓のように耳に響いていた。

 ラットからすれば、この問いにばかりは正直に答えるわけにはいかない。金目の物目当てに盗みにはいったなどと言えば、絞首刑は免れないだろう。

(ま、まずいな、なんて誤魔化せばいいんだ? 新しい使用人だとでも言うか? それとも、兵士かなにかの振りでも……)

 なんとかして誤魔化そうと、脳内でいくつもの案を並べるラット。

 見たところ、ベラは酷く世間を知らないように見える。それは、見ず知らずのラットを部屋に招き入れたことからも察せるだろう。そのことから、口から出まかせでもごまかせるのではないかと、ラットは当初考えた。

しかし、ふと気付く。

(……あれ? でも、この状況じゃあ、どうやったって逃げられないんじゃ……)

 仮にこの場からうまく脱したとしても、顔を見られてしまった以上、遅かれ早かれ捕まるのではないか。そう、考えが至る。

 嘘は必ずばれるもの。嘘を吐くときは、必ずそれを想定しなければならない。

 その場をしのぐことが重視される状況ならば、嘘も方便だろう。しかし、今のこの状況では、それに意味がないことに、ラットは気付く。

(たとえ逃げ遂せたとしても、この子が俺のことを城の人間に話せば、せまい国だ、どうせあっという間に捕まる。……アホくせぇ、今か後かの違いだけじゃあないか)

 そうして、自分の状況がいかに絶望的であるか理解したラットは、小さく息を吐き出しながら、苦笑って観念した。

 ラットは脱力して口を開く。

「……王女様」

「はい?」

「俺は盗賊だ。ここには盗みに入った。……でも、王女様に危害をくわえるつもりもなければ、逃げる気もない。大人しくお縄に就くよ」

 そして、あきらめたように告白する。この部屋に訪れた時点で、自分はこうなる運命だったのだろうと、ラットは悟ったのだ。

(まあ、十年近くも人様に迷惑をかけながら生きてきたんだ。天罰が下るときが来たってことか……)

 ラットはベラから視線を切ると、見えないように顔を歪めた。

(最後の最後にこんなへまを踏むなんて……バカみたいだな)

 盗賊として生きている以上、常に覚悟はしているつもりだったが、結局、最後の最後でそれを後悔する自分に、ラットはほとほと嫌気がさした。

 ラットはため息交じりに顔を上げる。

(……ま、いいさ。“ドロボウネズミ”の最後なんてこんなもんよ)

ラットの予想では、そこには自分を蔑むような視線を向けるベラの顔がある。それを見るのはなかなかに堪えがたいが、それは覚悟しなければならないとこだと決意し、ベラを向き合った。

すると、そこにあったベラの顔はラットの予想に反し、どこか困惑したような、拍子抜けするほど無垢な表情をしていた。

「……あ……あの……」

 ベラは少し肩身を狭そうにして、困惑しながらラットの顔を覗いている。

「その……“トウゾク”とは、一体なんなのでしょう?」

「…………な、なんだって!?」

 この言葉に、ラットは人生でも一~二を争うような驚きを覚える。

「と、盗賊だよ、盗賊! 盗人、コソ泥、泥棒! ……知らないのか!?」

「は、はい。……えっと、お職業の一種ですか?」

 ベラは変わらず小首を傾げている。

(……本気なのか!?)

 ラットは絶句した。今まで頭の悪い人間なら腐るほど見てきたが、“純粋な無知”を目の当たりにしたのは、人生でも初めてだったからだ。

恐らく、目の前にいる少女は“盗む”という概念自体がないのだろう。この世の汚い部分とは一切無関係に過ごしてきたのでなければ、その無知はあり得ない。それがラットには衝撃的だった。

「もうしわけありません、ラット様、わたくしにはなんのことだか。……それは一体、どのようなお職業なのでしょう?」

 ベラは興味津々といった様子で、ラットに“トウゾク”の詳細を求めてくる。

「え、ええっと……そうだな……」

 どうしたものかと、ラットは悩む。この際、正直に言ってもよかったのだが、やはりそれはどこか後ろめたくも感じ、口ごもってしまった。

「その、あれだ。……いろんなところに行って、高価なもの探す仕事、かな」

(……なにを言ってるんだ、俺は)

 ようやく出てきた言葉も、非常に中途半端な言い回し。そのあまりに臆病な言動に、ラットは自身に対して呆れかえる。

「まあ……! 価値のあるものを探すお仕事だなんて、それは素晴らしいお職業ですね!」

 そんなラットの心中とは正反対に、ベラは子供のようにはしゃぎだした。言葉をありのまま受け取り、目を星のように輝かせている。

(そんな目で見ないでくれ……)

 そんなベラの反応を見て、ラットは純粋な少女に嘘をついてしまった罪悪感に苛まれた。

 そんな風にラットが人知れず気を落としていると、ベラは突然、自らの右手をラットの目の前に持ち上げた。

「では、ラット様は“これ”を探しにいらしたのですね?」

 その上げた右手の中指には小さな指輪がはめられている。小粒の宝石が一粒ついているだけ、特に存在感がない普通の指輪だ。

ラットもベラにそう言われて、初めてその存在に気付く。それほどまでに存在感のない指輪だった。はっきり言って、“装飾品”としての役目を、それはまったく果たしていない

「……それは?」

「フリチラリアに代々伝わる『繁栄の指輪』です。お母さまがこの国で一番大切な宝だと言っておられました」

 ベラはそう言って、その指輪を誇るように高くかざした。その様子から、よほど大切にしているのだとわかる。

 しかし、ラットはこれに顔を顰めた。

(ううん……この指輪、はめ込まれているのは“ターコイズ”か? 色は藍色、確かに珍しい色だけど、金具も普通の鉄みたいだし、売っても銀貨一~二枚になるかどうか……)

 盗賊を生業としてきたラットには、その指輪が大して価値のあるものではないとわかる。正直、王族が身に付けるには余りにも貧相すぎる指輪だ。

(こんなものが国一番の宝? …… “お守り”みたいなものなのか?)

 とはいえ、お守りとしてまったく価値のない装飾品を身に付けたりすること自体は、貴族や商人の間でもそう珍しいことではない。銀製の装飾品には悪魔祓いの力が、金の装飾品には富を呼び寄せる力が、そんなものがあると昔からも信じられている。恐らくはそういった類のものなのだろうと、ラットは勝手に納得することにした。

「……残念だけど、それは俺が求めているものじゃなさそうだ、王女様」

「そうなのですか?」

 ベラは非常に残念そうな顔をする。

「……となると、わたくしにはもう心当たりが。ほかになにかあったでしょうか……?」

 ベラはしょぼくれた様子で手を引くと、困ったように顎に指を当て、うんうんと唸りはじめた。

「お、王女様がそんなに悩んでくれなくても……」

 まるで自分のことのように悩み抜いてくれているベラに、ラットは困惑する。

 そんなふうに困っていると、突然、ベラの首元が光を放ち、それがラットの目を射る。

(ん? ……なんだ、あれ?)

 ラットがそこに目をやると、ベラ首元、ドレスの内側に、煌めくなにかを目撃した。

「――あっ!」

 それがなんなのかわかった瞬間、ラットは思わず声を上げてしまう。

「えっ? ……これがどうかしましたか?」

 ラットの視線に気づいたベラは、胸元から“それ”を引きずり出した。

ベラの手から下がるそれは、月明かりを反射させ、透き通った蒼い光明でラットの顔を輝き照らしている。

「ブ……“ブルー・ダイヤモンドの首飾り”……!?」

 それは、通常のダイヤよりも遥かに希少なブルー・ダイヤモンド、その大粒をはめ込んだ白銀の首飾りだった。

その大きさと銀装飾の凝りようから、細かな目利きなぞ必要もなく、途方もない価値だとラットにはわかる。

(こ、こんな大きさのブルー・ダイヤモンドなんて見たことないぞ!? 少なく見積もっても、金貨数百枚にはなるんじゃないか!? こ、これがもし手に入ったら、パン屋どころか、パン工場だって開けるかも……!?)

 突如目の前に現れた至宝に、ラットは思わず物欲しそうな顔になってしまう。

そんなラットを見たベラは、手に握られた首飾りを見てから、不意に微笑んだ。

「……あの、こんなものでよろしいなら、お持ち帰りになってください」

 そして、そのブルーダイヤモンドの首飾りを、そっとラットに差し出してくる。

「…………えっ? い、今なんて……!?」

 ラットはベラの言葉に唖然とする。

 しかし、ベラは大した事とはとらえていない様子で、あっけらかんとしていた。

「ラット様の表情から察するに、こういったものをお探しだったのでしょう? 似たようなものがならいくつもありますから、一つ差し上げます」

 そう言って、ベラはまるでお下がりのおもちゃを譲るかのように、平然とラットに首飾りを勧める。 

「い、いくつもあるって……」

 ベラの言葉に戸惑いつつも、ラットは首飾りを受け取ってしまった。ベラの胸元にあったからか、僅かに温もりの残る首飾りの銀鎖が、ラットの手に絡まる。

「う、うわぁ……すごいぞ、これ。真っ当に買ったらいくらするんだ?」

 近くでそれを見たラットは、その首飾りの圧倒的な存在感に感嘆する。

それは大粒のブルー・ダイヤモンドが、技巧の凝らされた白銀の枠で囲われているという代物だった。その白銀の枠だけを切り取っても、それだけでかなりの売り値になるだろう。正直なところ、持っているだけで震えがくるような逸品だ。

(真面な職じゃ一生働いたって買えるかどうか……。これをくれてやるだって……?)

 ラットは首飾りに目を釘付けにされたまま、時が止まったかのように固まってしまった。

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