22話・目*フォニではなく猿木*目
ただいま:オカエリ:俺は:僕ハ:帰ってきたんだ:帰ッテキタンダネ:
俺の鬼山と:僕ノ鬼山トノ:狭間の世界に:帰ッテキタンダヨ:
産まれて苦しむ:死ンデ楽ニナル::人間::
幸せは一瞬:不幸ハ一生:苦しむな人間:苦シマナイデ人間:
世界が終わるから―:世界ヲ終ワラセルカラ―:
目目目目目目目目目目目目
「うそ…フォニ山ちゃん…」
公園の隅に立っている猿木が銅像のようにただ呆然として呟いた。
猿木は白フクロウとケンカをして…あれから鬼山の様子を見に公園に降りてきたのだ。
が、公園に降りてきたことによって猿木は絶望的なものを目にしてしまう。
「赤鬼…」
地獄に住んでいる猿木にとって赤鬼はどういう存在か、小さいころから嫌というほど知っていた。
もちろんその赤鬼の強さも…。
その強さは例え猿木でもかなわないものであった。
ましたや、猿木は予想すらしていなかったのだ。まさか鬼山に赤鬼というそこまでの力があったとは。
いや、そこまで鬼山がこの世に絶望していたとは。猿木には予想すらしていなかった。
「うそ…だって赤鬼は…」
上級の鬼で現世には決してこない。普通はそのはずであった。
が、今現に赤鬼がこうして存在をしている。
地獄から響いてくるような…闇からはいあがってくる亡霊のような独特の声。その声はまさしく赤鬼のものであった。
「やめてよ…フォニ山ちゃん…私を苦しめないで―」
猿木は自然に涙がでて、大きなしずくが地面へと落ちていった。
先程白フクロウのことを思い出して後悔をして猿木は涙したのだ。
――「早くしないと取り返しのつかないことになりますよ!!」
まさにその通りだった。現に猿木にとって取り返しのつかないことになっている。
「ハハ、なんで…なんで私はこうも役ただずでバカなのかなァ…白フクロウが言ったとおりだったよ…」
猿木は泣き笑いをしながら青空を見た。そして同時にずいぶん昔となる地獄の兄の言葉を思い出した。
――「ヒャハ―ハッハ!!猿木ィ、いいこと教えてやるぜェ?」
――「何?キマお兄ちゃん?」
私がまだ幼い5歳の時だった。
普通だとおかしい話だが、私が5歳になってその時始めてキマ兄さんと話を交わした。
私にとってキマお兄ちゃんはいつもすれ違うだけの存在だった。キマ兄さんが始めて私に声をかけてくれた。
私は心が弾んだ。キマお兄ちゃんは私達13人の兄弟の中でも、もっとも実力派で地獄では誰もがキマお兄ちゃんの名前を知っていた。
お父さん、および閻魔大王様の自慢の子どもの一人である。もちろん私もそんなお兄ちゃんをもって自慢だった。
――「猿木ィお前は俺たち13人の子どもの中でもっとも役ただずの存在になるだろォよォ?いや、俺たちの父ちゃんにとっても不必要な邪魔者になるだろうなァ…?」
――「ぇ?」
私は5歳。キマお兄ちゃん言葉の意味はよくわからなくても父さんに必要とされていないと聞いただけでショックをうけた。
胸が痛い。
――「ヒャヒャヒャ、お前は不要物だって言ってんだよ。なんせ俺たち鬼には一番不要な感情をもっているんだよなァ?」
不要物。まるで私を物のようにキマお兄ちゃんは言った。
――「猿木ィ…周りの目がやけに冷たいのを感じないかァ?それはみんなお前が邪魔だからだよォ?ほらァ、耳をすましてご・ら・ん?不要物…不要物、不要物、不要物みんな言ってないかなァ?ヒヒヒ―ハハ…ヒャハァハァハハハハァアー!!」
長い舌をだして口をさけて笑うキマ兄ちゃんに始めて恐怖を覚えた。この人は狂ってる。自然にそう思った。
が、キマお兄ちゃんが言っていたことはたしかに本当であった。地獄の周りの鬼が冷たい。それは幼い私にも薄っすらと分かっていた。
しかし私は一生懸命それを否定しようとしていた。が、キマお兄ちゃんに言われて自分が周りから必要とされていないのだと確信をもつようになった。
なんでだろう?
私が不要物?役ただず?
私の中にある不必要な感情ってなんなの?
私は年を重ねるごとに自分は役ただずだと嫌でも実感させられることとなる。
私はお兄さん、お姉さんとは違って人一人も殺せない鬼となっていった。そして、ついに地獄では周りの鬼からは声をだして「不要物」と指を指されるまで私は落ちつぶれていった。
末っ子の私以外の12人のお兄さん、お姉さんは地獄のエリート集団と言われるほどまで強い方たちだった。
一方の私は地獄の面汚しって言っても過言ではないだろう。
でも、父さんはそんな私を人一倍優しく接してくれた。
そして私の兄弟のお兄さん、お姉さんや白フクロウのようにわずかであるが優しく接してくれる人達がいた。
が、その優しさは逆に12人の兄弟の中でも、こんな「不要物」の私が特別に見られているようで嫌だった。
まるで「不要物」の私に哀れみをかけられているようでいやだった。
そして同時に父さんやお兄さん、姉さん、白フクロウが裏でどう思っているのか知ることが怖かった。
他の人たちのように「不要物」って思っているかな?
――そんな不安を持ちながら今回、初めて父さん(閻魔大王様)から私は依頼をうけることになる。
依頼は簡単で鬼が1匹たりないからどこからでもいいから人間をベースに鬼を1匹地獄に送ってくれないか?
というものであった。
私達鬼にとってはとても簡単な依頼、だからこそ失敗は許されない。これ以上父さんに恥をかけてはいけないんだ。痛いほど知っていた。
もともと鬼は地獄で産まれるものではない。鬼は人間から産まれるのだ。いや、詳しくは人間が鬼となるのだ。
そしてなぜこの依頼が簡単なのか。それは鬼となるベースの人間は本当たくさん現世に溢れているからであった。
自殺をしたいという人間でも鬼になる。殺人鬼でも鬼になる。いわゆる絶望さえしていれば誰にでも鬼になる可能性はあるのだ。
そして完璧な鬼になるためにはかならずこの世の絶望の底へと落とさないといけなかった。
その絶望の深さの具合によって鬼の強さは変わる。絶望の底が深ければ深いほど強い鬼となるのだ。
今回私がフォニ山ちゃんを選んだ理由…。
それは彼の絶望の底を隠して明るく生きている姿に惹かれたものであった。
その過去を必死に隠しているフォニ山ちゃんは自分と何か似たものを感じた。
フォニ山ちゃんの絶望の底はどれくらいなのか見てみたい。私は好奇心にそう思った。
強い鬼を地獄にもっていって…私をバカにしていた人達をあっと言わしてやる!
そして私が成功をしたあげくには誰にも私のことを不要物とは言わせない。その思いはもう一つの執念のようになっていた。
失敗をしてはいけない……。
失敗は許されない…いや、失敗はしない…なぜなら私は不要物なんかではないから…。
目目目目目目目目目目目目
「ああああああああ゛!!」
再び鬼山が甲高い声で雄叫びをあげた。いや、これはすでに鬼山ではなく赤鬼というべきだろう。
赤鬼は3メートルという巨大な体なため地面に亀裂がはいっていた。
そして赤鬼は軽く手足を動かすと、いともたやすく手足に刺さっているクギを抜けた。
それは圧倒的な強さだった。
「ぬぅ…まさかあの小さい鬼が破壊神とも言われる赤鬼だったとは…さすがのMeでもしばしやばいのぅ…が今は…」
大量の冷汗をだしながらキジ丸が赤鬼の横で倒れている女性に目を配る。幸い桃はキジ丸のクギに刺ささったままの状態のままで赤鬼には踏まれてはいなかった。
もし赤鬼に踏まれていたら一発であの世逝きだっただろう。
「が今は…Sheを助けることを先決をしなくてはならんのぅ…あの赤鬼の巨大な足で踏まれたら一瞬で花畑逝きじゃ!」
武器をもっていないキジ丸はなんの策もなしに一直線に赤鬼にむかって走っていった。
未だに大量にふきでてくるキジ丸の汗。
恐らく人はキジ丸の行為を見て無謀だというだろう。だが、キジ丸は陰陽師として人をたすけなければなかった。それが彼、キジ丸の本職。それがキジ丸の正義であった。
「悲しいな:悲シイヨ:お前もこの世で苦しんでいるな:君モコノ世ニ苦シンデイルネ:ミンナ:楽になればいい」
2つの声が重なったような独特な声で赤鬼が言った瞬間だった。
2メートルあるだろうと思われる赤鬼の長い手がキジ丸に振られた。
――ガッ!!
鈍い音を立てて白いシルクハットが宙に浮いた。
目目目目目目目目目目目目
「うわあああああ!!キジ丸!!」
…乱れてすいませンでした('v`;;)
ここまで読んで頂きありがとうございます!!+゜
今◎は猿木の過去もかけて満足でした◆'`人)+♪。
もう、悔いゎありませンwでも…もうすでに猿木の不必要と言われている感情についてもう気がついている人もいるかもしれませンね*ヮラ*