学園長にご挨拶、の前
あれ?
おかしい…学園長にご挨拶できなかった…。
校門でここまで時間を取るとは思わなかった…
それではどうぞ
え?城ですか?というほどに大きい、もとい威厳のある建物の前に、美女三人を侍らせて(?)立っている男がいた。
そう、俺だね。
もう美女三人でわかりますね。
いやー、それにしても何だよここ。
城か?城ですか?
もう入りづれーよー。
つか怪しいよな、絶対。
だって綺麗なカーラ達といるだけで目立つのに、一緒にいて、しかも先陣切って歩いてるのは成人もしてないような少年だものなぁ。
「何ボーッとしてるんだ?」
「ほれヨヅキ、早く行くぞ!!」
カーラ、エン待って。
お前ら張り切りすぎだから。
そんなに急がなくても学園長は逃げませんことよ?
「ヨヅキ様」
俺の服の裾をミリナが引っ張ったので、振り向けば笑顔で俺の顔を見つめていた。
「絶対説得させましょうね?一緒にいたいですから」
………ミリナ可愛いよ…。
百点満点だよ。
何でそんなに恥ずかしい言葉を笑顔で言えてしまうんだろうね?
でも、その一途な想いを誰かに向ける時が来てしまうんだろうか?
くっそ…、羨ましい野郎だ。
きっとそいつに付きっ切りになるんだろうな。
………寂しいわー。
「あっ、ミリナ!!ポイント稼ぎか!?」
「抜け駆けは許さんぞ!!」
「いえいえ、そんなつもりはありませんでしたよ?ただ、ヨヅキ様を恋い慕う気持ちが抑えられなかっただけで」
「何が恋い慕うだ!!我なんかヨヅキを狂おしいほどに愛してるぞ!!」
「ふん、私はそんな次元じゃないわい。ヨヅキがいなくては生きていけんほどじゃ!!」
「私なんかヨヅキ様といるだけで絶頂に達してますもの!!」
「「………えー」」
「…あ!!違っ!!今のはですね?幸せの絶頂って意味で別に他意はありませんよ!?」
「…うんうん、分かるぞミリナ。それ程までにヨヅキを慕う気持ちは分かる」
「そうじゃ。だから、言い訳はせんでもいい」
「分かってない!!誤解解けてないじゃないですか!!」
カーラ達何盛り上がってんだ?(ミリナの事で落ち込んでいたため聞いてない)
あの三人は仲いいなー。(喧嘩中)
俺も話しに混ざりたいけど、ガールズトークってやつだろうし、まずいだろうなー。(間違ってはない)
つか、早く行くんじゃなかったのかよ。
「おーい、行くぞー」
「あ、待てヨヅキ!!」
「置いていかなくてもよかろう!!」
「はぁ…疲れました…」
…ミリナは疲れてるみたいだけどどうしたんだろうな?
そして俺達は門をくぐった。
さーて、早いとこ学園長に会いに行きたいわけだが…
「…どこにいんだろ?」
「「「さぁ?」」」
「こんな広いとこから学園長探すのめんどくせーなー…。案内図ぐらい置いとけっつの!!」
「いやいや、普通はないからな?」
「なんだよカーラ。お前は他の学園のこと知ってんのか?」
「いや、知らないけど…」
ありゃりゃ、しゅんとしちゃったよ。
意外と打たれ弱いんだよね。
「拗ねんなよ、カーラ」
「拗ねてなどいない!!」
「…もう、ホント可愛いんだから」
はい、次は真っ赤な顔して俯きました。
カーラはからかいがいがあって楽しいわー。
「ほら、早く探さないと日が暮れるぞ」
「エンは面倒見がよくて、いいお嫁さんになりそうだな」
「ふふ、礼を言っておく。なんなら嫁に貰ってくれるか?」
エンは基本的にからかいがいがない。
冗談に乗って来るから、それはそれで楽しいけどね。
エンは一緒になってからかうタイプだ。
「にしても、こうも広いと探す気すら起きねぇよなー。しゃあない、誰かに…」
「そこの者達!!待ちなさい!!」
突然誰かが叫んだ。
誰のことを言ってるんですか?、と知らん顔しても良かったんだけど、ふと思い付いた。
この人に道聞けばいいんじゃね?
やべー、俺天才だわ。
こんな画期的な方法見つけるとかマジすげー!!
…調子乗りましたすいません。
「何者ですか!?ひょっとしなくても不法侵入者!?そうですね、そうに違いない!!ここは応援を呼びましょうか…。いえ!!それでは逃げられてしまう!!それでは私が捕まえるしかっ!!大人しくお縄につきなさい!!」
何この面白い女の子?
思い込み激しい上に行動力も一流とか…。
この娘絶対に人に迷惑かける人種だ!!
制服っぽいの着てるしここの生徒さんかな?
とか言っているうちに飛び掛かってきたし!!
「覚悟ぉーーー!!」
腰にあった片手剣を抜き、一番前にいた俺に斬り掛かってきた。
咄嗟に<空間の指輪>(空間魔法がかかっていて中に物がいくらでも入る)の中に入っている剣を取り出し構えるが、俺の横をカーラ達が通り抜ける。
そうして一瞬、本当に瞬きをするうちに女生徒を押さえ込んだ。
ミリナが俺の目の前で女生徒限定に重力をかけ、機動力を削ぎ、カーラとエンが地面にたたき付けた女生徒の首を挟むように、カラドボルグと炎鬼妃を突き付けている。
一応説明をしとくと、人型の時は自分の魔剣状態のものを出すことができ、魔剣の能力も使える。
こいつらの戦闘能力はハンパなく高い。
俺も勝つのに苦労するほどなのだ。
それにしても…、やり過ぎじゃね?
「お前、我が主に剣を向けたな」
「その覚悟はできておるのじゃろうな?」
カーラとエンが殺気を放ちながら威嚇する。
ミリナは無表情、無言でいるのだが…。
怖いっ!!無表情に無言は怖いよ!!
お願いです、いつものニコニコ顔を見せてください。
…と、ふざけるのはここまでにして。
「おい、離してやれ」
「しかしこの者はヨヅキ様に刃を向けました。私共には許せられることではありません」
「その通りじゃ。主に無礼な態度を取ったからには、それ相応の報いを受けてもらわねば」
「まぁ、落ち着けって。この娘も悪気があったわけじゃないだろうしさ。な?」
コクコクと頷く女生徒さん。
そりゃこんな状況では喋れないかもな、涙目だもの。
こいつらの怒り方すごいし。
「まぁ、主が言うならば…」
カーラ達が渋々といった感じに女生徒から離れる。
そして俺の回りに剣を出したまま控える。
咄嗟のことにも対処出来るようにだろう。
「つか、お前らが出なくてもあれくらい自分で対処出来たぞ?」
「いえ、こんなことにヨヅキ様自身が出る必要はありません。ヨヅキ様に仕える私達がやることです」
こんな会話は何回もしている。
カーラ達は普段、こういう上下関係というか、主従関係は余り気にせずいるのだが、こういう場合には何かと強く言ってくる。
契約は対等のものと思っていたけど、今考えれば、対等なら悪いように扱われれば文句ぐらい言うもんな。
前話してくれたような扱われ方はされないはずだ。
「気にしなくてもいいのに…」
「そういうわけにもいかん!!永久契約を結んだのだ。我等は主に仕え、お護りしなければならぬ。主に降り懸かる障害は、我等が斬らねばならぬのだ」
「………ありがとうよ」
「それを聞けるだけで満足じゃ」
エンが言い、カーラとミリナが頷く。
俺はもうちょっと気楽な方がいいんだけど、こいつらも引かなそうだし、いっか。
「でも、仕える者を護るのも主の仕事だぜ?危ない時は、俺が護ってやるよ」
こう言われた三人はポカーンとした顔を浮かべ、俺の言葉を飲み込む。
そうして、ようやく顔を赤らめる姿はなんと可愛いことか。
マジでこいつらと契約できて幸せもんだわぁ。
毎日楽しくて楽しくて…。
「護ってやるって言われても、そういう関係ではないんだよな…」
「ですね…。この関係も嫌いではないですけど…」
「こういう言葉をかけてくれるからこそ、満足出来なくなってくるのう…」
満足?
護るだけじゃ満足できないっていうことか?
ん〜、なら…。
「ご褒美が欲しいってか?」
「「「ぜひ欲しい!!」」」
「うおぉう…。そんなに声張り上げなくても…」
「ちょっと!!私を無視しないでください!!」
あ。
すっかり忘れてた。
さっき涙目だったけどもう立ち直ってたのね。
いつの間にか5mぐらい距離を開けて、こっちを睨んでいる。
まぁこのくらいの距離はないに等しいもんだけど。
「いやー、悪かったな。怪我はないか?」
「うるさいです!!敵に心配などされたくありません!!」
「…俺らは別に敵じゃないから。ちょっと学園長に用事があるんだ」
「学園長に?敵のあなたが何のようです?まさか誘拐!?学園長を人質にとって何を要求する気ですか!?」
「いやいや違うから。俺が来年度ここの学園に通うことになってね?」
「こうなったら意地でもここを通しませんよ!!私が護るんです!!」
「おい、人の話聞けよ」
「先程のことで実力差は承知の上です!!今の私では勝負にならないでしょう」
「聞いてる?絶対聞いてないよね?」
「それでも!!私がやらなきゃ誰がやると言うんですか!?」
「誰もする必要ないんだけど。ねぇ、バカなの?果てしなくバカなの?」
「誰がバカですかぁ!?」
「それは聞いてんのかよ!?」
めんどくせー。
こいつものすんごいめんどくさいよー。
マジ誰か助けて!!
「あ、あなたがヨヅキさんですか?」
助けキターーーー!!
なんかデジャヴュ感がすごいけど、それはこの際気にしない。
助けが来ただけでもういいじゃないか!!
「初めまして。私、リィン・マクシーといいます。昨年からこの学園で教師をしている者です」
「あぁ、これはどうもご丁寧に。初めまして、ヨヅキといいます。来年度この学園に通うことにな、り…………………………………………………今、教師といいました?」
え?教師?
………ありえない。
あれ?教師って最低でも学園は卒業してないといけないよね?
俺からはどう見ても、
「年下?」
「えへへ、そうなんです。私、今年で15歳でして。皆さんは16歳からの入学なので、年上になるんですよ。あ、心配は無用ですよ?学園はちゃんと卒業してますから」
所謂、飛び級というやつか。
すごいね、やっぱりそういう人もいるんだ。
…まぁ俺も出来ただろうけど。
「リィン先生、この人は敵です!!今すぐ捕らえましょう!!」
女生徒がリィン先生の横に移動し、やっぱり俺を不審者扱い。
もういい加減に話し聞けよ…。
「敵?アルマちゃん、何言ってるんです?」
「ですからこの人は学園長を誘拐しに来たんです!!」
「??…何を勘違いしてるかわかりませんけど、ヨヅキさんは学園長のお客様ですよ?」
女生徒、もといアルマちゃんは愕然。
それから羞恥で顔が真っ赤っかに。
最初から話聞いときゃこんなことにはならんかったのにな。
「分かったか?アルマちゃん」
「あなたにアルマちゃんと呼ばれたくありません!!覚えてなさいですよ!!」
「おーい、走り去るのはいいんだけど言葉がおかしくなってんぞー?」
ふぅ…、何だったんだ?
心底疲れたんだけど…。
「すいません…、アルマちゃんが何か粗相をしたようで…」
「いえいえ。疲れましたけど、怒ってはいませんから。…リィン先生も大変ですね」
「…分かってくれますか?ホントに私のクラスは変わった人が多くて…」
目をうるうるさせるリィン先生は何と言うか、庇護欲を掻き立てられますな。
こういう顔を見ると妹のツキナを思い出して、めちゃくちゃ頭を撫でたくなるとですよ。
「それはそうと、ヨヅキさんの後ろにいる方達は?」
おお、そういえばまだ名乗っていなかったな。
「申し遅れた。我はカーラという。よろしく頼む」
「私はエンじゃ。以後よろしく頼むぞ、リィン先生」
「私はミリナと申します。ヨヅキ様共々よろしくお願いします」
「どういったご関係で?」
「こいつらは…、俺のパートナー、永遠を共にする人達、ですかね?」
間違ってない、よな?
家族っていうよりは混乱しないと思う!!
「…伴侶ということですか?」
「「「その通り!!」」」
「いやいやいや違う……あれ?伴侶ってどういう意味だっけ?共に生きる者だった気が…。妻って意味もあったっけ?でもリィン先生は妻か?みたいなノリだったよね?………訳わかんなくなってきた!!」
あーーもう!!
カーラ達も悪ノリするからこんがらがってきたんですけど!!
もうこの話いい!!
しなくていいです。
「ははは、じゃあ学園長のところにご案内しますね」
リィン先生も苦笑いだしよぉ!!
カーラ達はなんか上機嫌だし、なんで俺だけ混乱しなきゃいけないの?
「ほら、ヨヅキ行くぞ♪」
「学園長を待たせちゃ悪いしのう」
「早く説得しに行きましょう?」
…くっそー。
こいつらの笑顔には勝てねぇ…。