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魔性の瞳(外伝)  作者: 冬泉
第一章「訪問者達」
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アルカナの舞-05◆「龍の客人」

■恵久美流公国/恵久美流/龍の館/宗主の間


「宗主殿。斯様に早い時間にも拘わらず歓迎頂き、まことに忝ない」


 最年長の“龍の盾”が、丁寧に頭を下げた。宗主と龍の盾とは旧知の間柄ではあるが、公式の場に於いては礼を尽くして応対するのが、いかにも実直な龍の盾だった。


「訳あって、こちらに参るに至りもうした。色々とお知恵を借りることもあろうかと思いますが、よしなに御願い致したい」


 次いで、“龍の楯”の隣に立っていた真理査に順番が回った。


「初めてお目にかかります、宗主様。灰の予言者が娘、真理査と申します」


 古代漠羅爾の古き作法に則り、真理査は腰を深く屈め、優雅にお辞儀した。


 真理査に次いで、レムリアが前に進み出た。中原諸国の作法に則り、スカートの裾を両手で軽く持ち上げる。


「マーガレット・レムリア・オフ・ヴェロンディ・アンド・ムーンシャドウと申します。ヴェロンディ連合王国自由騎士にして、万生の創世剣“阿修羅”を帯びるエリアド・ムーンシャドウが妻でございます。璃奈姫様の御両親であらせられる、宗主様、妃殿下にお目見えすることができて、心から嬉しく思っております」


 深く、お辞儀するとレムリアは優しげな笑みを浮かべた。


 最後がラダノワ卿だった。


「シュテファン・オフ・ラダノワと申します」


 短く言うと、深々と頭を下げる。


「龍の宗主様並びに奥方様にお目通りが出来、誠に欣快に存じます」


          ☆   ☆   ☆


「あ・・・」


“あああ・・・これがお作法のつらいところね。この調子でご挨拶の儀礼が進んでいったら、あさってになってもお話が終わらないわ…”


 璃奈は誰にも分からないように小さくため息をついて、行儀良く挨拶の進行を待っている。それでも、優しげに微笑んでいる母には“飽きちゃったよ”サインを送っている。


 恵久美流宗主の奥方であり、「西方の宝玉」と呼ばれる優しい賢夫人、詩真・恵久美流は娘の行儀に微かに顔をしかめてみせた。


“これもお仕事なのですよ”


 優しく諭すような声が聞こえてくるかのようだ。詩真は娘を見て微笑んだ。



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