初対面ですが、きっと何処かで出会っていたのでしょうね
オリビアは夢を見る。だが目覚めると忘れてしまう。
デビュタントに近づくにつれて回数が増えていく。
「どうして私には婚約者がいないの?」
夕食時にオリビアは切り出した。
父親は優雅にナイフとフォークを使う。
「まだ早いからだよ。オリーには素晴らしい人と婚約してほしいかね」
「きっとデビュタントで父親にエスコートされて踊るのは私だけよ」
「それが何がいけないんだい? オリーと踊るのはパパだけだよ」
母親はオリビアを生んで儚く散ってしまった。
溺愛していた父親は、生まれてきたオリビアを疎むことなく、溺愛した。時々行き過ぎなほどに。
「変な奴と婚約するより、養子を取ればいいだけだし、オリーはずっとパパと一緒にいるんだよ」
オリビアは溜息をついた。疎まれなかったのはいいが、溺愛しすぎである。オリビアが我が儘に育たなかったのは奇跡である。使用人たちもホッとしている。
「運命の人と出会いたいな」
最近のオリビアの口癖だった。
白いドレスに見に包んだオリビアは、始めての舞踏会に足を踏み入れた。
父親にエスコートされるのはどうやらオリビアだけではないようで、オリビアはホッとする。
「これから挨拶しに行くから、オリーは隣で笑っておくんだよ」
「私がいてもいいの? 仕事の話もあるんじゃないの?」
「仕事よりオリーさ」
ブレない父親である。
父親は次々に挨拶していき、オリビアは言われた通りに微笑んだ。
顔が引きずりかかった所で、父親が声を上げた。
「閣下! 閣下じゃありませんか! 珍しい閣下がいらっしゃるなんて!」
ある人物に父親は声をかけた。閣下と呼ばれた男性の服装は騎士団のもので、胸元には引きちぎれそうなほどの勲章があった。
「オリー。彼はアルジャノン・エルファントン様だよ。騎士団の副総長様だよ」
オリビアは紹介されたアルジャノンを見る。
「閣下。今日デビュタントの娘のオリビアです」
アルジャノンもオリビアを見る。
二人の目線が重なったとき、二人は涙を流した。
父親は驚く。
オリビアは前に出た。
アルジャノンは腕を前に出す。
「ずっと君を待っていたような気がする」
実際にアルジャノンは三十を前にしても独身だった。
オリビアはそっとアルジャノンの腕に手を添えた。
もう忘れてしまう夢は、見ない気がした。
「初対面ですが、きっと何処かで出会っていたのでしょうね」
父親が周囲が驚いていることに目を向けないで、二人は涙を流しながら寄り添うのだった。




