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5.ダンジョンへ~私を選んで!~

「宗一郎さん、この後はどうしますか?」


 二年越しらしい再会を果たした俺たち、ナイトメアガーデンの五人。

 サクラが、これからの予定をたずねてきた。


「どうしようかな……」


 配達は終わってるし、仕事自体は日ごとに請け負いだから、時間は問題なく取れる。


「そういうことでしたら、私たちの任務の基本であるダンジョン進攻を行うのはどうですか。それで何かを思い出す可能性もありますし」

「何より、五階層の探索は後半戦。ここからは階層の宝を狙っての行動になりますわ。宗一郎さまに慣れて頂ければ、とても心強いです」


 金色の髪が美しいリリィはそう言って、強くうなずく。


「それならダンジョンに行くのがいいのかな。攻略の基本なんかも忘れちゃってるだろうから、あらためて色々と教えてもらえると助かるよ」

「もちろんです!」

「もちろんですわ!」


 俺がダンジョン攻略についての指導を求めると、すぐにサクラとリリィが挙手。

 それから、互いをじっとにらみ合う。


「私で良ければ――」


 するとそんな隙間を縫うように、肩までの銀髪のマーガレットがやって来る。


「待ってください!」

「お待ちなさい!」


 それを見たサクラとリリィが、同時にマーガレットの肩をつかんだ。


「「そうはいきません!」」


 そして肩をつかんだまま、横一列に並んだ。

 三人が同時に、案内役を買って出ている状況。

 サクラとリリィは一切、引く気なしだ。


「それなら、宗一郎さんに選んでもらうというはどうですか?」

「構いませんわ」


 そう言って二人、覚悟を決めたかのように息をつく。


「……ええと、皆で行くのはダメなの?」

「五階層後半の地形把握や、ギルドなどの動きを追ったりといった仕事があるんです。それなので宗一郎さんの案内をできるのは一人が限界で……」

「そうなのか」

「宗一郎さん」


 サクラが、俺を真っ直ぐに見据える。


「宗一郎さま」


 続けてリリィが、熱を帯びた瞳で俺を見る。


「「誰を選ぶのですか?」」


 詰め寄ってくる、サクラとリリィ。

 マーガレットは「あはは……」と、苦笑いを浮かべたまま背後にたたずんでいる。

 こうなってしまったら、誰も選ばないわけにはいかないよな……。

 俺は圧に負ける形で、一人を選び出すことにした。


「そういうことなら……サクラにお願いしようかな」

「やりましたーっ!」


 ぴょんと小さく跳ねて、よろこぶサクラ。


「そんな……」


 一方のリリィは、愕然とした表情でヒザを突く。


「い、いや、俺を見つけてダンジョンに連れてきてくれたのはサクラで、簡潔な説明でも助けてくれたからさ! ダンジョンはサクラのイメージなんだよ! でもその後には特区で『ダークロードの部屋』探しもしたいから! その時はまた、うん!」

「……そういうことでしたら」


 リリィは、残念そうにしながらも納得してくれたようだ。


「それなら、ここからは一時的に別行動だね」


 マーガレットの言葉に、サクラが大きくうなずく。


「それでは皆さん、また後ほど。さあ宗一郎さん、参りましょうっ」


 ご機嫌なサクラ。

 俺たちはダンジョンに戻るため、三階層の宿を後にする。


「ほら、「いってらっしゃい」しないと」


 ずっと絶妙な距離で俺たちのやり取りを見つめていたリコリスを連れて、見送りに来るマーガレット。

 このリコリスの距離が、普通なんだよな。

 二年ぶりな上に、俺には記憶がないんだから。

 それでも俺のことは気にしてくれてるのか、リコリスはマーガレットと一緒に並んで見送ってくれる。


「いってくる」


 俺はそう言い残して、宿を出た。

 ここからはスキップ並みに足が弾んでいるサクラと二人、五階層へと向かう。


「なんだか、人が多いな」


 その道すがらは、明らかにさっきよりも人が増えている。


「ヤギの魔物が倒されたことで協定が解消し、二年も止まっていた攻略が解禁されました。さらに五階層探索も後半戦で、いつ宝が出てきてもおかしくない状況ですから」


 なるほど。

 ダークロード含むナイトメアガーデンも、宝を『正しき者に与えよ』っていう理念のもとに行動してるって言ってたな。

『進め』『殺すな』『正しき者に与えよ』

 狙いは分からないけど、ナイトメアガーデンの指針らしい三箇条。

 その実現のために、リリィたちは別行動で進路を探したり、ギルドなんかの動きを追う必要があるんだろう。


「ていうか、普段は黒づくめじゃないんだな」

「はい。一般の探索者として行動して、いざという時だけ姿を変えるというのが定番ですね」

「なるほど。これまで宝をことごとく手にしてきたとなると、狙われたりしそうだもんな」


 ……狙われそうだから、黒づくめなんだよね?

 闇の組織を気取りたいから、黒い格好をしてるんじゃないよね?

 恐ろしい想像に頬を引きつらせながら、俺たちは鉄檻エレベーターへ。


「ついにダークロードが、帰って来たんだな」

「先を急がないとな」

「五階層の宝は、渡さねえぞ……!」


 前を行く探索者たちの話題は、ダークロードの帰還について。

 それだけじゃない。

 回りを歩いているパーティなんかも、ダークロードについての話題で持ち切りだ。

 各階にあるっていう宝がそろそろ見つかるだろうという予感から、どこもかしこも気合が入ってるらしい。

 俺たちはエレベーターを使い、再び五階層にたどり着く。


「これは……」


 俺は思わず足を止め、感嘆してしまう。

 五階層はすでに、ゴールドラッシュのような状態。

 目をギラギラさせた多くの探索者たちが、所狭しと集まっていた。

お読みいただき、ありがとうございました!

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