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42.ナイトメアガーデン

「それでは今日も、六階層のマップ作製と地形把握を中心とした探索をするということでいいですね」

「攻略者たちに続く担当と、マップ作製担当、特区の見回り担当。この三手に分かれる感じですわね」

「そうだね」

「それでいい」


 攻略再開と、五階層の踏破。

 そんな流れからか、六階層の攻略は順調に行われている。

 俺たちは神殿と化したダンジョン前で、今日の予定を決めていた。

 ……それにしても。

 あらためて振り返ってみると、やっぱりおかしくない?

 宝を得た少女や、サクラが強いのは間違いないんだけど……ダークロードはあの覚醒の力すら越えてると思う。

 それにいくら強いと言っても、二年も戦わずにいたのに身体が覚えてるって……。

 俺がそんなことを一人、考えていると――。


「それでは今日もよろしくお願いします。宗一郎さん、六階層へ向かいましょう」

「お待ちさない」


 歩き出したサクラの後ろ襟を、リリィがつかんで止める。


「何しれっと、ダンジョン進攻担当になろうとしていますの?」

「そ、そんなことはありませんよ?」

「それでしたら、今日はわたくしがご一緒してもよろしいですわね?」

「そっ、それとこれとは――」

「それなら私は、今日もお泊り担当にしようかな――」

「「それはダメ!」」


 マーガレットの言葉に、すぐさま待ったをかけるサクラとリリィ。


「先日のこともありますし、マーガレットさんのところに泊まる形だけは認められません!」

「そうです! そもそもあの日のことは、今も疑惑が残ったままなんですからね!」


 マーガレットの肩を左右から、ガッシリとつかむ両者。


「でも、許嫁だったら別におかしくないんじゃないかな?」

「いくら私たちが許嫁だとはいっても、分別は必要です!」

「そうですわ! 許嫁にも品位は必要なんですっ!」

「天下の往来で、あんまり許嫁許嫁言わないでくれよ……っ!」


 早くも紛糾の様子を見せる三者。

 リコリスは変わらず、そんな三人を一歩引いた位置で見守っている。

 ……これも、おかしいよな。

 普通は『許嫁が複数人いる』っていう状況を知ったら、怒ったりするものなんじゃないの?

 サクラたちはなんで、この事実を当たり前のように受け入れてるんだ?

 やっぱりこれって、俺がダークロードを名乗る中二病カルトおじさんだからなのでは……。


「こんにちはーっ!」


 俺が戦慄していると、聞こえてきたのは元気な声。


「あなたは……!」


 すぐさまサクラが反応する。

 俺たちの会話を外から楽しそうにのぞいていたのはなんと、五階層の宝を手にした少女だった。


「手術は無事に?」

「おかげざまで!」


 問いかけると少女は、大きくうなずいた。

 見ればその靴や上着も、新しいものに変わっている。

 ここに来る時に、特区で買ってきたのだろうか。


「良かったな。今日はその報告に来てくれたのか?」

「うんっ」

「そばにいてあげなくても、いいのですか?」

「話はいっぱいできたし、回復を待つ間は妹たちが一緒にいるから大丈夫だよっ。それにね……」


 そう言って、少女は笑みを向けた。


「今度はわたしも、みんなの力になりたくって!」


 少女はその手に持った爆発剣を、掲げてみせる。

 それは、思わぬ提案だ。


「さっき皆が話してるのが聞こえてきて、心が決まったの! お願いしますっ! わたしをもなりたいんですっ!」


 真っ直ぐに俺たちを見て、告げた少女。


「私は歓迎しますよ」

「わたくしも構いませんわ」

「異論はないかな」

「私も」


 少女が乗り越えてきたものを知っているためか、サクラたちに反論はなし。

 その視線が、ダークロードである俺に集まる。


「俺も……いいと思うよ」


『正しき者に与えよ』の精神は、すごくいいと思う。

 それに俺はまだダンジョンを進むつもりだし、助けになってくれるのは助かる。

 まあ黒づくめ衣装は……正直どうかと思うけど。


「やったーっ!」


 全会一致での承認に、うれしそうにはしゃぐ少女。

 満面の笑顔で、真っすぐに俺を見る。そして。


「これで今日から私も――――イイナズケだねっ!」

「……は?」


 聞こえた、まさかの言葉。


「はああああああああああ――――っ!?」


 い、いやいや、なぜここで許嫁が増えるうううううう――――っ!?

 意味が、意味が全然分からないんだけど!

 なりたいって、ナイトメアガーデンのことじゃないの!?

 そもそも許嫁って「みんなやってるの? それなら私もなるーっ!」みたいなノリでなるものじゃないだろ!

 ていうかまず、『許嫁が複数人』いることに怒りとか疑問を覚えてくれよ!

 それがなんだよ、新たに名乗りを上げるって!

 見ろ! まさかの言葉にサクラたちも唖然としているじゃないか!


「えへへ。今日からわたしもイイナズケの一員ということで……ダークロード様。名前をくださいっ!」

「え、ええ……?」

「みんな、お花の名前をもらってるんじゃないの?」


 そう言って、真っ直ぐに視線を向けてくる少女。


「違うの?」


 じっと、俺の目をひたすらに見つめてくる。


「ほらダークロード様!」


 さらに俺のコートをつかんで、ぐいぐいと引っ張る。


「ダークロード様っ! 名前名前っ!」


 純粋な笑みで、俺を見つめたままいる少女。


「……じゃあ、マリーとか? マリーゴールドを略して、マリー」


 その勢いに押されて、俺は思いついた花の名前を口にした。


「やったー! ありがとうーっ!」


 するとマリーは、屈託のない笑顔で抱き着いてきた。

 それから、ナイトメアガーデンの面々に向かって振り返る。


「マリーです! 今日からよろしくお願いしますっ!」


 そしてうれしそうにまた、俺に笑顔を向けてきた。


「……またですか」

「強力なライバルが、また一人増えてしまいましたわ……っ」

「あはは、でもまあ仕方ないのかなぁ」

「あの顛末なら、無理もないよ」


 観念する顔、達観したような顔。

 それぞれ、思い思いの表情をする四人。


「それなら、こうしてはいられませんっ!」


 突然サクラが、思い出したかのように俺の腕を取った。


「宗一郎さん、ダンジョンに向かいましょう!」

「いいえ、今日はわたくしの番です!」

「ダンジョンなら、わたしも行くよーっ!」

「それなら私は、お泊り担当だね」

「「それはダメですっ!」」


 再び噴出した、ダンジョン生活のローテーション問題。

 始まった言い合いがまとまらなくなってしまったところで、サクラが振り返った。


「このままでは話が進みません。宗一郎さん、どうするのか決めてください」

「えっ?」

「それがいいですわ」

「宗くん、どうするの?」

「どうするの?」

「どうするのーっ?」


 五人は同時に、俺の方に向き直る。そして。


「さあ、誰を選ぶのか決めてください――――」

「「「「「――――ダークロード様!」」」」」

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!

ラブコメ色強めの挑戦的な内容となりましたが、本作はこれにて一度完結となります!

加筆修正等も考えていますので、ご感想やご意見など、お気軽に頂ければ幸いですっ!


また少しでも「いいね」と思っていただけましたら――。

【ブックマーク】・【★★★★★】等にて、応援よろしくお願いいたしますっ!

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― 新着の感想 ―
これで完結なのかぁ もっと読みたかったなぁ
お疲れ様です!楽しく読ませてもらいました
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