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30.開かれる扉

「幻覚が解けたぞォォォォォォ!!」

「探せ! 宝への最終ルートを探せええええ――――っ!!」


 五階層後半部分を覆っていた幻覚。

 それは探索者を道に迷わせ、いない敵を幻視させる恐ろしい攻撃だった。

 その元凶であった大蜘蛛を打倒したことで、辺りが一気に騒がしくなっていく。

 再び活性化する、ダンジョン進攻。


「私たちも、進みましょう」


 幻覚が消えて、明るさを取り戻した道。

 先導するサクラに続く形で、俺たちも歩を進める。

 リコリスはマップ作製のため、幻覚が消えた後の正しい道順をメモ。

 念のため、大蜘蛛についての注釈なんかも付け加えているようだ。

 使っているペンのトップに付いた猫のマスコットが、ダンジョンの雰囲気に合っていなくて、思わず笑みがこぼれてしまう。


「行くぞ! こっちだ!」


 すると同じように幻覚の中をさまよっていたのだろう一団が、俺たちを追い抜く形で前に出た。そして。


「そういうことか……!」


 たどり着いたホールで、何かを見つけたかのように声をあげた。


「この壁にあった通路が、幻覚で見えなくなってたんだな」


 どうやら幻覚によってただの壁に見えていた岩壁の一角に、先に進むための道が隠されていたみたいだ。


「ここだ! 道はここからつながってるぞ!」

「おいこっちだ! 見ろ、魔法石が鳴動を強めてる!」


 新たな道の発見に気づいた探索者たちが、続々と集まってくる。

 目の前にあるのは、一部岩壁の崩落によって埋まった道。


「魔法が得意なヤツは爆破でこの岩の山をどかせ! その後にパワーのあるヤツらで土砂を運び出すんだ!」


 一人の探索者が出す指示に、自然と前に出る魔法使いたち。


「撃て――っ!!」


 すぐさま、魔法攻撃が始まる。

 すると草の生えた岩塊の山が次々に砕かれて、土砂へと変わっていく。


「おい見ろ! 魔法石の反応が強くなったぞ! こっちで間違いない!」


 こうしている間にも、次々に集まってくる探索者たち。

 稼ぐことが目的のギルド勢なんかも一斉に集まってきて、ホールがもう一段回騒がしくなる。


「この階層の争奪戦も、激しいものになりそうですね」


 巻き起こる爆発を見ながら、サクラがつぶやく。

 そして、一際大きな魔法が炸裂した直後。


「道が開いたぞぉぉぉぉぉぉぉぉ――――っ!!」

「「「おおおおおおおお――――っ!!」」」


 道を塞いでいた岩の間に、確かな隙間が生まれた。

 大きな入り口を覆っていた大量の岩が砕かれたことで、五階層最後の空間へと続く道が開く。

 あとは邪魔になっているいくつかの岩を退かせば、もう探索者たちの進攻を阻むものは何もない。


「来たぞ来たぞ――っ! いよいよ、宝の奪い合いが始まるんだ!!」

「どんな戦いだろうと、望むところだ……っ!」


 ギルド勢は早くも、その目をギラギラと輝かせる。


「一攫千金のチャンス! 宝はもう目前だぞ!」

「さあ、ひと稼ぎの時間だ!」

「今度こそ宝は俺がもらう! 一発逆転で豪遊生活の始まりだ!」

「ダークロードの快進撃も、これで終わりだなぁ!」

「「「うおおおおおお――――っ!!」」」


 一番の盛り上がりは、ダークロードへの挑発。

 なんか、俺に向けて言われてるみたいで怖いんだけど……。

 嫌な汗が自然と、頬を流れる。


「あれは……」


 そんな中、サクラの視線が向けられていたのは一人の少女。

 この騒ぎを聞きつけて、駆けつけて来たのだろう。

 昨日ダンジョンで出会った、借り物の剣を持った少女は、息も荒くこのホールの前列にやって来て、肩を大きく上下させている。

 やがて伝ってきた汗を手の甲で拭うと、大きく一つ息をついた。


「さあこい! お宝ぁぁぁぁ――っ!!」


 探索者たちは意気軒昂で、つながった道へと殺到していく。

 群がるようにして新たな道へと向かう探索者たちの後ろから、一人祈るような面持ちでその光景を見つめる少女。

 たしかあの子は働けなくなってしまった親や妹たちの生活を守るために、単身ダンジョンにやって来たんだよな。

 いよいよ宝は目前ということもあってか、その表情は見たことがないくらいに神妙だ。

 前に見た時は、とにかく元気で鶏頭っていう面白い子だったけど、今はそのドキドキを鎮めるように胸元を抑えてる。


「……よしっ」


 顔を二度ほどパンと張って、少女が駆け出す。

 そして景気づけとばかりに、魔力を開放して――。


「あっ」


 崩れ落ちた岩の中にあった、魔法石脈を踏んで爆発。

 そこそこの威力で転がって、近くの壁にぶつかり倒れる。


「おいおい」

「仕方ないですね」


 思わず駆け出しそうになる、俺とサクラ。

 しかしすぐに起き上がった少女は、ぽかんとした後「あはははは」と笑ってみせた。

 それからもう一度気を取り直して立ち上がると、今度こそとばかりに低くなった岩山を飛び越えていく。


「大丈夫か……?」

「大丈夫でしょうか」


 そんな少女を見て、またサクラと言葉が重なった。


「とにかく私たちも進みましょう。宝はもう目前です」

「そうだな」


 リコリスもうなずく。

 そして続々とやってくる探索者の波に乗るように、俺たちも後に続くのだった。

ご感想いただきました! ありがとうございます!

これはもう宝を手にしたサクラたちの反撃! 続きはご感想欄にてっ!


お読みいただき、ありがとうございました!

少しでも「いいね」と思っていただけましたら――。

【ブックマーク】・【★★★★★】等にて、応援よろしくお願いいたしますっ!

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