22.集まれマーガレットの部屋!
一晩を過ごしたマーガレットの部屋。
聞こえた声に顔を上げると、そこにはサクラとリリィの姿があった。
「何を……しているんですか?」
「ふ、ふしだらですわ……!」
「な、何って……?」
言葉の意味が分からず、戸惑う。
するとサクラは、マーガレットを指差した。
「どうして同じベッドで、マーガレットが寝ているんですか?」
「いやいやいや! これはその……間違え! 間違えなんだよ!」
マーガレットが夜中に間違えて、いつものベッドに入っちゃったって言ってたし!
「何をどう、間違えたんですか?」
俗に言うジト目で、問い詰めてくるサクラ。
「おそろいの部屋着で、すごく仲良くなったように見えますけど」
「ほ、本当ですわ! どうして二人で同じ格好を!?」
俺たちが同じ部屋着を揃いで着ているのを見て、驚愕するリリィ。
「宗一郎さん?」
「宗一郎さま!?」
ジト目のサクラと、赤面のリリィはさらに距離を詰めてくる。
「な、なななな何か、ございませんでしたの!?」
「どうなんですか? 宗一郎さん」
「何かって何だよ! 別に何もねえよ!」
「あはは、何もないよ」
マーガレットも身体を起こしながらそう言って笑うが、目が合った瞬間――。
「「……あっ」」
昨夜の風呂上り。
マーガレットのタオルが落ちて色々見えてしまったことを思い出して、二人してちょっとだけ硬直してしまう。
そして一緒に、視線を逸らす。
「……宗一郎さん?」
「宗一郎さま!? 今の間はなんですか!?」
もう完全にジト目なままのサクラと、顔を赤くしながら問い詰めてくるリリィ。
「いや、その、今のはええと……」
「どうしてマーガレットさんが、顔を赤くしているのですか!?」
「あはは、ちょっと恥ずかしい姿をお見せしちゃったってだけだよ。ね?」
「ま、まあそうかな」
「は、恥ずかしい姿ですって……っ!?」
衝撃に、足をフラつかせるリリィ。
マーガレットはちょっと恥ずかしそうにしながらベッドを出ると、小さく一つ伸びをした。
「それよりさ。せっかく皆集まったんだし、一緒に朝ごはんでもどうかな?」
それから爽やかな笑顔で、サクラたちに笑いかける。
「もちろん、リコリスも一緒にだよ」
どうやらこの場に、リコリスも来ていたようだ。
見れば確かに、玄関の方からこっちをうかがう白髪少女の姿があった。
「……そういうことなら」
「断る理由はございませんけど」
サクラとリリィは不承不承といった感じで、リビングのソファに腰を下ろす。
マーガレットはリコリスもソファに招いた後、そのままキッチンへ。
「ああ、俺も何か手伝うよ」
「ありがとう。簡単なサラダを作ってもらってもいいかな」
「了解」
マーガレットはトーストを焼きつつ、目玉焼き作りを始めた。
俺は冷蔵庫から取り出した野菜を大雑把にカットして、ドレッシングを用意する。
「ま、まるで夫婦のようですわ……同じ格好で、隣に並んで料理だなんて……っ」
「この部屋着、可愛いでしょう?」
そう言って振り返り、ほほえむマーガレットに、「うぐぐ」となるサクラとリリィ。
朝食は、すぐに準備を完了した。
シンプルなものでも五人分並ぶと、なかなか豪華に見えるもんだ。
「いただきます」
マーガレットの合図に、始まる朝食。
「こういう朝も、たまにはいいね」
「ていうか、なんでサクラたちが入ってこれるんだ?」
「それはね、お互いに合鍵を預かり合ってるからだよ」
そう言って笑うマーガレットに、紅茶を手にしたリリィが問いかける。
「そ、それで……恥ずかしい姿というのは、どどどどういうことなのですか?」
いや、まだそれ聞いてくるのかよ。
「どういうことなんですか?」
サクラも続けざまに、その内容を詰めてきた。
「ああいや、別にそう特別なことがあったわけじゃなくてさ」
とはいえその内容を詳細に語るわけにもいかなくて、言いよどむ。
すると苦笑いのマーガレットが紅茶を置き、その口を開いた。
「着替えを持ってくるのを忘れて、お風呂上りにタオル一枚で部屋に戻って来たんだけどね。その時にタオルが落ちちゃって……宗くんに色々見られちゃったっていう」
「ぶふううううううう――――っ!」
「熱っつうううううううう――――っ!!」
マーガレットの話を聞いたリリィが、勢いよく噴き出した紅茶が、思いっきり顔に……ッ!
熱い! めちゃくちゃ熱いっ!
魔物の放った炎弾は握り潰せるのに、なんでこんなに熱いんだよぉぉぉぉっ!!
「ああっ! 申し訳ございませんっ!」
リリィは取り出した高級そうなハンカチで、俺の顔を拭き始める。
そんな俺の姿を見て、くすくすと笑うマーガレット。
「あ、宗くん」
「ん?」
「今日の夕飯は、何がいい?」
「お待ちなさいマーガレットさん! 何をしれっと次の約束を取り付けようとしていますの!? さすがに二連泊なんて許しませんわ!」
「でも部屋着も買っちゃったし、せっかくうちに慣れたところで移動するのは、少し面倒じゃないかなと思って」
「そういう問題ではないでしょう! マーガレットは本当に、油断も隙もないですね!」
リリィに続いてサクラも、思いっきり頬をふくらませる。
「……宗一郎さん」
「ん?」
「次はぜひ、うちに来てくださいね」
「いいえ! それならわたくしのところに!」
サクラの言葉に、それは聞き捨てならないとばかりに乗っかってくるリリィ。
そしてまた二人は、火花を散らし始める。
……こんなのが続いたら、死ぬぞ。
昨日までとは一転、とんでもなく賑やかになった、ダンジョン特区二日目の朝。
もはやまったく味を感じないトーストをかじりながら、俺は静かに白目をむくのだった。
ご感想いただきました! ありがとうございます!
やはり……出る杭は打たれるのですね! 続きはご感想欄にてっ!
お読みいただき、ありがとうございました!
少しでも「いいね」と思っていただけましたら――。
【ブックマーク】・【★★★★★】等にて、応援よろしくお願いいたしますっ!




