表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/22

19.マーガレットとお買い物

 ダンジョン特区で過ごした一日。

 なぜかマーガレットの自宅に泊まることになった俺は、賑やかな夜の大通りを進んでいた。


「まずは、お買い物からだね」


 足取り軽く進むマーガレットが、笑顔で振り返る。


「ああ、夕食とか?」

「うん。宗くんは何が食べたい?」

「まあ好き嫌いはないし、なんでもいいんだけど……今日は疲れたから米が食べたいかなぁ」

「明日のこともあるし、元気が出るものがいいよね」


 うなずくマーガレット。

 不意に、その足を止めた。


「どうした? 夕食とかの準備だったら、あそこにあるスーパーとかじゃないの?」

「それもあるけど……お泊りに来るなら部屋で着るものとか、歯ブラシとか、そういうものが必要になるんじゃないかな?」

「ああ、そうか」


 確かに、着の身着のままってわけにはいかないもんな。

 泊まりならもっと楽にできる部屋着的な服が欲しいし、歯ブラシなんかも必要だ。


「それならまずは着替えからだね。こういうの、一度して見たかったんだ……!」


 何やらうれしそうなマーガレットが最初に入ったのは、有名量販店の小型店舗。

 店内には多くの商品が、所狭しと並んでいる。

 要は、そのまま部屋着にできるものを選べばいいんだな。

 俺はマーガレットと一緒に、売り物をざっと見て回る。


「よし。やっぱり基本はシンプルな長袖Tシャツに、ジャージパンツとかだよな……」


 上は白、下は黒。

 動きやすそうなものを選んで取ろうとすると、マーガレットは一言。


「もっと可愛いのがいいなぁ」

「かわいいの?」


 可愛い部屋着という概念がよく分からず、俺は首を傾げる。

 するとマーガレットは、「名案!」とばかりに手を打ち鳴らした。


「そうだっ。宗くんの着替え、私が選んでもいいかな?」

「ああ、別にいいけど」


 特にこだわりもない俺がそう言うと、マーガレットはうれしそうに笑う。

 そして並んだ商品を見返しながら、店内を右へ左へ。


「えーっと……あっ、これがいいかもっ」


「見つけた!」と、一つのセットを手に取って、俺の方に顔を向ける。


「宗くんはLサイズでいい?」

「ああ、そうだな」

「私はメンズだとSかなぁ」


 そんなことを言いながら、一つのセットをカゴに入れる。


「これだったら可愛い靴下も一緒に欲しいな。そうだ、この際だしルームシューズも新しいのにしちゃおう!」


 マーガレットは、もう止まらない。

 目を輝かせながら靴下と部屋用のシューズまで選ぶと、次々にカゴに放り込んで行く。


「なんで全部、二つずつなんだ?」


 俺は思わず問いかける。

 何連泊もするわけじゃないのに、二つもいらないだろう。

 特にシューズなんかは、どう考えても一つでいい。

 するとマーガレットは、うれしそうな笑顔で答える。


「えへへ。わたしも宗くんと同じものにしようと思って」

「……そうなの?」


 マーガレットが選んだのは、白地に紺色のラインが入ったハーフパンツに紺の長袖という上下セット。

 夏物のセーラーを思い出させる、爽やかな色使いの商品だ。

 そこにフワフワした素材の白靴下と、茶色いスウェードのルームシューズ。

 その全てを俺たちは、サイズ違いで購入した。


「次は、隣のお店だねっ」


 すっかりご機嫌なマーガレットと共に店を出ると、今度はすぐ隣の雑貨店へ。

 ここでは歯ブラシを選んで、あと歯磨き粉も買っておきたい。

 俺は並んでいる商品の中から、普段使ってるヤツと同じものを選んで手に取った。


「宗くんは青色の歯ブラシにするんだね。それならわたしはこのピンクにするよっ」


 するとマーガレットは俺が選んだものと同じ歯ブラシの、色違いを選択した。


「なんで全部揃いに……」


 足取りも軽くレジへと向かったマーガレットに、思わずつぶやく。


「そりゃ、おにーさんと一緒にしたいんだろ」


 すると店員の生意気そうな金髪少女が、気だるそうに言った。


「恋人なら、そういうのしたくなるじゃん。なあ?」

「えへへ。恋人に見えちゃうかな?」


 そんな店員の言葉に、はにかむマーガレット。

 俺が首を傾げていると、店員の生意気そうな少女は意外な手際の良さで、歯ブラシと歯磨き粉の清算を終える。


「ったくよー。これだから男はよー」


 そしてマーガレットに、「がんばれよ」と言ってひらひらと手を振った。

 店を出て、一緒に進む帰り道。

 すっかりご機嫌のマーガレットは、鼻歌混じりだ。


「えへへ。なんだか本当に……同棲してるみたいだね」

「…………」

「宗くん?」


 いやこれ、なんて答えればいいんだよ!

 俺が反応に困っていると、構わずマーガレットは笑顔を向けてくる。


「荷物、持ってくれてありがとう」

「まあ基本は俺の買い物だからな」


 なぜか全部二つずつあるってだけで。


「夕飯は任せてね。もう遅い時間だけど、手早くおいしくできるようにがんばるからっ」


 そう言って、スーパーの出入り口前へ。

 夕食用の食材や飲み物なんかを買った俺たちは、大通りから曲がって数メートルのところにある、綺麗な造りの四階建てマンションへ。

 階段を並んで上がり、ついにマーガレットの住む部屋にたどり着いた。

ご感想いただきました! ありがとうございます!

まさしく「マーガレット恐ろしい子!」ですね! 返信はご感想欄にてっ!


お読みいただき、ありがとうございました!

少しでも「いいね」と思っていただけましたら――。

【ブックマーク】・【★★★★★】等にて、応援よろしくお願いいたしますっ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
おや、怪しいオクスリは使わない? なるほど、一気にキメには行かないと…。 まあいきなりの犯行は、ダークロード様に嫌われてしまう可能性もあるのでね。 ここは慎重に進めるということですね。 ということ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ