流れ行く話
とある大学のゼミ室。大学3年の春から、来年の卒業論文のためによぼよぼのお婆ちゃん教授が開くゼミに加入した女子6人。それぞれは元々顔見知りでは無かったのだが週1回の集まりで3カ月経った頃には非常に仲良くなった。6人でグループLIИEを作り、ゼミの後には毎回一緒に外食に出かけた。皆が流行に敏感でいて個性的。そんな6人のゼミ室における日常会話。
ロナ「今日のゼミは色々考えさせられてダルいよねー」
エンザ「卒業論文にしたいテーマでおおまかな希望があればって言われてもね。どうしましょう?」
麻衣子「このゼミで論文書くってことは熱か運動だよね。」
ノロ「だろうね。でも何でも良いみたいなこと言ってなかった?」
チセキ「最初の草案の段階では希望するテーマで良いって事じゃないかな。お婆ちゃんがサポートできない場合は変えさせられるんじゃない?」
リンゴ「先輩もそんな感じの事言ってたよ。」
麻衣子「そっか。お婆ちゃん、話すの遅いからやり取りちょっと大変なんよね。私は最初から熱か運動のテーマで持っていこうかな。」
ロナ「私もそのつもり。」
麻衣子「えーそうなの?ロナは不老不死とか、惚れ薬とか研究してそうだけど?」
ロナ「皆の強い推薦があれば重い腰をあげることもやぶさかではないけどね。」
リンゴ「じゃ両方おねっしゃす!」
チセキ「留年してもいいからさ。ガンバ!」
ロナ「うん。やっぱ辞めとく。…でもさ。日頃から気になっている事とか流行ってることをテーマに研究した方が良いよねきっと。」
麻衣子「まぁそうだよね。せっかく1年ぐらい本格的に調べるんだからね。」
エンザ「物理の内容と流行の内容って反対に位置してる気がしないでもないですわ。」
ノロ「マンボウの産卵って凄くない?」
チセキ「どうしたどうした?」
ノロ「なんかね。割と最近の研究で8億匹の卵を産むみたいなことが分かったらしいよ。」
麻衣子「熱と物理はどこ行ったの?」
ノロ「いやー。日頃から気になってるテーマって言われたから。そういえば!って。」
エンザ「確かに8億は異常ね。日本人口の6倍強かしら。」
ロナ「日本人口が一代で8億人増えて…その父親が一人とかだったら色々とはかどるわね。」
リンゴ「でもそれってさー、成人男性の睾丸で1日5千万~1億くらいの精子が作られてるみたいな話なんじゃん?」
ノロ「あ。確かにね。受精卵が8億個って訳じゃないぽいし。ならもう解決かな。お疲れ~」
チセキ「早っ! …それについては現在唯一の彼氏持ちのロナさんはどう思われますかっ?」
ロナ「うーん。精子って生き物って言っていいの?自ら動いてるから動物ぽいけど。卵子を目指す過程はほとんどウイルスみたいな生態してない??」
エンザ「他の細胞に入って増殖しないと生き残れないってのはウイルスっぽいわね。」
麻衣子「じゃノロは男性の精子を研究する卒業論文でOK?」
ノロ「絶対いやよ。そのテーマをお婆ちゃんに持っていったらショック死しちゃうわ。」
チセキ「案外ノリノリだったりしてね。」
麻衣子「だから熱と物理はどこよ?」
リンゴ「そいやさ。」
チセキ「え?お祭り?」
リンゴ「いや、掛け声じゃなくってね。」
ノロ「うん。何?」
リンゴ「中学の頃に凄い不思議で誰も質問しなかったから疑問のことあるんだけどね。水ってさ。融点0℃で沸点が100℃って設定して、それを基準に温度の指標を決めた訳じゃん?」
麻衣子「そうだね。」
リンゴ「圧力とか、過冷却水とかで融点を下回って氷点下になっても凍らない水ってまぁ珍しいじゃん?」
エンザ「あぁ。0.1気圧とかだと-20℃でもまだ凍らないとかありますわね。」
ロナ「過冷却水は純水とかだと核が無かったりとか振動や衝撃とかのきっかけ無くて凍らないのは自然界でもたまーにあるよね。」
リンゴ「そうそう。まぁそれは特殊な例だから中学の頃は知らなかったんだけど。」
チセキ「うん。まぁこの研究室だと日常だけどね。高圧374℃での超臨界水とかはお婆ちゃんに聞けば永遠にしゃべりだすしね。」
麻衣子「永遠って…お婆ちゃんの寿命が僅かな事を揶揄ってない??」
チセキ「え~、、そんな事ないよ~(たぶん)。」
リンゴ「まぁでもそれらのケースも人為的に実験室で起こすものじゃん。」
エンザ「確かに中学で習う内容は実験的な例外じゃなく、自然界の原則の話になるわね。」
リンゴ「そうなのよ。物質の三態で融点と沸点を習って少しして、地学・天気の単元よ。同じ先生の話でよ。何?飽和水蒸気量って?空気中に水蒸気を含めるって…。しかも常温で気体の水蒸気がわんさかあるじゃない…。しかも飽和水蒸気量は温度で変わるけど、-5℃とかでも含める水蒸気がある…ってもう訳わかめな訳よ。」
麻衣子「うわ!ほんとだ。何か矛盾してるってかヤバイね。今でも気づいてなかった~」
ロナ「うーん、もろもろの条件の下だけど沸点は強制的に水蒸気になる温度だから常温でも水蒸気は存在してるよ…。そうじゃないと汗かいても蒸発しないから体温下がんないし、氷点下でも雪や霜は生まれない訳だし、飽和蒸気圧は下がるけどどの温度帯でも水蒸気は存在してるね。」
リンゴ「うわ。ロナ先生解説ありがとう!中学生では教わらないし、当時教えてもらっててもきっと分からなかったはず。」
麻衣子「私は今後も何言ってるか分からないと思う…。私は高校も大学も推薦だったから受験勉強してないのよね。…あ!そうそう、なんかね。推薦の面接対策してた時の話なんだけど…」
エンザ「あ。私も高校受験は推薦で面接ありましたわ。」
麻衣子「え!エンザも面接?聞きたかったのよ!面接の部屋に入る時にノックって何回だった??」
エンザ「3回ね。」
リンゴ「3回よ。」
ノロ「3回って教わったわ。」
麻衣子「なんだ。結構みんな面接の練習はやってきてたのね。これ、、3回っていつからの話なんだろう?当時の中学の学校の先生が言うには、2回だったものがいつの間にか3回に変わったって言ってたんだけど、なんかヤバいよね。」
ロナ「へー。私は一般入試だから分からないけど、面接のノックって3回なんだ。知らなかった。で、なんでヤバいの?」
麻衣子「なんかね、トイレのノックは2回だから失礼だ!なんて説が横行してるんだけど。」
リンゴ「ん?面接会場がトイレで便座に皆が座るってこと?何か匂うわね。」
麻衣子「なんか曲解してるわね…。それは置いておいてノックの役割を考えてみてよ。1回が良くないのは想像に難くないわ。たまたま体とか荷物がドアに当たっちゃったとかと区別するために、2回以上なんでしょ?規則正しくトンットンッっていうのも明らかに意志確認を感じられるわ。」
エンザ「そうよね。私も2回はトイレだからと聞いて面接では3回ノックしてたわ。」
麻衣子「でも普通に2回でいいじゃん。トイレって何が失礼なの?人がいますよ、入室の許可を願いますよって合図じゃない。」
チセキ「やったぁ!じゃ今度麻衣子がトイレに入ったら2回ノックしたら入れてくれるんだね?」
麻衣子「やったぁ!…じゃねーのよ。何で人のトイレ中に入ろうとしてくるの?」
チセキ「えへへ。じゃ3回ノックするから、面接ぽく『どうぞ』って言ってね。」
麻衣子「…チセキのメリットが見当たらないんだけどね。」
ロナ「確かにマナー講師ぽい人がこじつけそうなジャンルではあるわよね。2回は失礼!な~んて。」
ノロ「じゃ今後トイレでも面接でも無い場面Aだから4回ノック、そうでも無いBだから5回ノック、SOSノック、とっとっとっとーんとーんとーんとっとっとっ…、千本ノックとバリエーションが増えていく訳ね。」
麻衣子「磨りガラスドアの向こうに人影を感じながら高速でコンコンコンコン……って鳴らされ続けるのはホラーね。どうぞ~って言ってるのにノックの音で聞こえないとか…」
リンゴ「みんな合コンやってる?今の流れでちょっと思い出したんだけどさ~。」
ロナ「どうしたどうした。」
チセキ「合コンを思い出すようなエピソードだった?」
リンゴ「なんかそういうノックしまくるノリの合コンがあって…」
エンザ「お店に迷惑ね。まさか叩く方のノックかしら?」
リンゴ「はは、私達って全員女子高じゃん。男性に慣れてないから私は百回くらい行ってるんだけど。」
ノロ「男性に慣れてないって…、、リンゴの初めての合コンは私もいたんだけど、最初っから「うぇーいい!もっと飲めよ~」って百戦錬磨に見えたんだけど…?」
リンゴ「いや~、やっぱ舐められちゃいけないじゃん?攻撃は最大の防御…みたいな?」
麻衣子「うんにゃ、リンゴは紙装甲よね。」
ロナ「そうね。下ネタの簡単に破られた紙装甲よね。」
リンゴ「うへへへ。そうかな?」
エンザ「リンゴさん、褒められてないですわよ。」
リンゴ「でもほら。言うじゃん。かおしりおのれおしり・・・とか、百戦あやうからずとか。」
チセキ「うわ!出た。もうその言葉は某サイトでこすられまくってるやつじゃん。」
ノロ「チセキも下ネタに突入したわね。」
チセキ「違っ…そういう“こする”じゃないもん!」
リンゴ「なんか孫子たくないから、顔尻と見て、顔は良かったんだけど、洋ナシ体型だったからかな?おのれ~!お尻が残念だぁ!的な?そうやって体目当ての相手を退けていけば百回合コンしても安全だよねって話だよね。」
麻衣子「それは、誰目線の話よ?…ってかいつどこで誰に教わった情報なのよ?」
リンゴ「え~、そうとしか読めないじゃん!もちろん私の私による私のための格言よ!」
ロナ「読解力どうなってんのよ。ちょっと同じ大学の同じゼミであることに恐怖を感じるわ。」
エンザ「まぁ理系の物理研だから良いんじゃありませんか?」
ノロ「リンゴが妊娠して退学する日も近い希ガス。」
チセキ「妊娠といえばさぁ…」
ロナ「ちょっ、、、その切り出し方が不吉すぎるんだけど?」
チセキ「水星が地球にちょっかいかけてきてさぁ…」
リンゴ「暑さで頭をやられちゃった??」
麻衣子「ちょっかいって何??水星なだけに水ぶっかけてきたり?」
チセキ「いや…水ってか精子を」
一同「「「「「どういう事(笑)???」」」」」
チセキ「うんと…ね。太陽系の中で、太陽が一番地位の高い女性な訳よ。女王様みたいな?」
ノロ「ん?ま、まぁ、そういうことなのね?」
チセキ「そうそう。で、一番近い所に侍らせてる小さい惑星が雄の水星な訳よ。」
エンザ「えぇぇ…。私は今、盛大に惑ってるわ…」
リンゴ「自然界でも雄が小さくて、雌がでかいってのはまぁよくある姿だね。」
麻衣子「まぁ、そうだけど。サイズ感が違い過ぎるよね。」
チセキ「で太陽と水星の外周にも金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星と続く訳よ。」
ノロ「だね。」
チセキ「で水星以外は…全部女性な訳よ。」
麻衣子「何でよ?」
チセキ「金星はビーナスって言うじゃん。女神じゃん。」
ロナ「あぁ。急な英語の説明にはびっくりしたけど、、、まぁ、なるほどね。」
チセキ「地球は母なる星、母なる大地、母星って女性の冠詞がついてるじゃん。」
エンザ「それ世界的にもそうなのかしら?イギリスとかにもそういう女性の冠詞をつける文化があった気はするけど…」
チセキ「火星は火じゃん。水とは反対属性だからそりゃ女性じゃん。けどなんか火の女性って気性が荒い感じがしない?性格絶対悪いはずよ。」
ノロ「気性の荒い女性って絶対チセキの頭に浮かんでる特定の個人がいるでしょ?一括りにしない方が良いよ。」
チセキ「それは確かに。ごめんごめん。」
リンゴ「なんか漢字、というか言語とか文化に引っ張られてる感じがするね。」
チセキ「うん。まぁそうね。でも長年に渡って形成されてきた言語とか文化っていうことは言い得て妙な部分もある訳よ。」
麻衣子「確かに。それはそうだね。」
チセキ「木星より外はそもそもガスで空気でモブだからどうでもいいわけで。」
ロナ「唐突に切り捨てちゃったわね。木星と土星は属性的に無生物でくるかと思ってたけど…。あと天王と海王、冥王でどんな偉大な神ぽいものの説明があるか楽しみだったのに。」
チセキ「考えるに値しないわ。」
エンザ「可哀そうに…」
チセキ「それでね水星(♂)は思う訳よ。太陽(♀)は圧倒的な力で僕を振り回していると。」
リンゴ「物は言いようだね。」
チセキ「金星(♀)って自らを女神、美の象徴だとしていてナルシストで痛い星だと水星(♂)は思ってるわけですよ。」
麻衣子「金星を見てあれこれ言ってるのは地球だけだと思うんですがねぇ…」
チセキ「だから水星(♂)からすると、包容力があって、実際に水を多く湛えている地球(♀)にぶっかけたい訳ですよ。」
ノロ「へー」
チセキ「地球(♀)を卵子0.15mmだと仮定してね~。精子0.06mmだから比率で言うと、うん…と、、精子は1匹で5000kmぐらいの大きさかな。北海道宗谷岬から沖縄まで距離が2500kmぐらいだからその倍の大きさの精子が2億匹くらい地球(♀)もとい卵子に突っ込んで来ることになるわね。」
一同「「「「「地球全滅不可避っ!!!」」」」」
チセキ「水星(♂)から出された精子が道中で金星(♀)にぶっかかる映像作品の監督を誰か引き受けてくれないかな~。卒論でやってくれないかな~(チラリ)」
ロナ「誰が引き受けるのよ…、そんな妄想。あと、水星(♂)って小柄な成人男子をイメージしてたけど男性器そのものなんじゃ…?」
チセキ「そうそう。それで結果として地球(♀)が孕んでしまうのよね。」
リンゴ「そこが今日一で意味分からんとこだね。」
チセキ「でも大丈夫。浮気が太陽(♀)にバレて、太陽が膨らんで火星ぐらいまで飲み込んじゃうから。」
麻衣子「何が大丈夫なんですかねぇ?恒星の末期症状で火星ぐらいまで膨らむのは、宇宙あるあるだろうけど。あと金星と火星は無関係なのに煽りを受けててマジ草。」
ノロ「特に金星の被害は甚大ね。」
リンゴ「そして誰もいなくなった…ってね。」
コンコン…
ガチャ…
倉時亜美教授「さぁ。みんな・・・。卒業論文で、やってみたい、テーマは、、決まった、かしら・・・?」
「「「「「はーい!お婆ちゃん!」」」」」
エンザ「え?今のやり取りでテーマ決まる要素ありましたこと?」
ゼミはトイレでしょうか(謎)