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カイエン王立魔法学校 生徒会室にて

読んで下さりありがとうございます。

「おはようございます。」


こくんと頷くのはシルバーゴールドが眩しいレオナルド様。


光の関係でメガネが光っている副会長のシエン様は資料片手に挨拶する。


「おはようございます。カイリ君。今日の振り分け説明しても?」


もちろんです!と息を吐く間もなく仕事に取り掛かる。


貴族科では年末に学園祭が催されるのだ。そこには家族も招待でき、夜には大きなホールでダンスパーティーがあるそうだ。


平民科には無い行事である。


「わー、忙しいのにここの数字合わないや〜。」


「お兄さん、僕こっちの資料もう一度精査してみるね。」


「レオナルド様、当日の貴族棟警備担当は父が指示するそうでございます。故にカイエン様の貴重なお時間を頂くのは大変心苦しいのですが、一度父と会って頂けないでしょうか」とプラムはカイエンの机の隣で膝をついて頭を垂れている。


「プラムの父は騎士団長様だからね。」


ボソッと耳元で囁かれてビクッとして耳を抑えた。


「ミロル様。急にびっくりします!」


「ごめんごめん、ちょっと不思議そうに見てたからね。」


「今日も可愛いね、カイリちゃん」と三つ編みの先っちょをつんつんして自分の席へと戻って行った。


はっ!私も早く自分の仕事こなさないと奴が来る…


バーンというドアの開く音と共に甘ったるい匂いが漂う。

「レオナルドさまぁ!」


出た。


「ローズマリー殿!何度申したら良いのだ!」

「ローズマリーさん、今日も何かご要件が?見ての通り学園祭の用意で忙しくしているのですが。」


既に寒い風が吹いている。


ルネとアークが毛布を取り出して仕事をしていた。


「いえ、あのぅ、そのぅ…」


「ちっ。なんですか。」


「レオナルドさまぁ、レオナルド様はどなたかとダンスパーティーにご出席されるのですかぁ?わ、わたくしで良ければ是非…」と身体をクネクネさせながら近づいていく。


「すまないが、私は誰とも踊らないよ。」


プラムが隣で風を起こす勢いで首を縦に降っている。


「色々危ないからね。学園にいる間は誰ともパートナーを組まない、と伝えたはずだが。」


レオナルド様はドアを開けた部屋の突き当たり1番大きな窓の前の席に座っている。生徒会長席だ。その大きな机の上に手を組むとシルバーゴールドの吸い込まれそうな瞳で真っ直ぐローズマリーを見る。


そう、前々からその周知はなされたはずだ。張り紙も魔法で至る所に設置したのを確認済である。


ぼうっとレオナルド様の綺麗な顔に見惚れてたローズマリーははっと我に返るとこう続けた。

「う、あ、でも。マリーも1人なのですぅ。もしよろしければ…」


「もし宜しければなんなんだ。話はそれだけですかこちらは忙しいのです本日はもうお帰りください」と有無を言わさずノンブレスでメガネクイッしながらシエンが追い返そうとする。敬語取れてるよ、副会長様。


プラムが般若になってるし。


ローズマリーはキョロキョロと見渡すと私と目が合った。


「っ!そこの平民!何故あなたまだここに居るの?」


「?私はここで補佐として働いております。」


「不愉快だと嘆願書を送りましたでしょ?ミロル様?」


え、そうなの?


「あれなら却下されたよ」とアークが計算機を叩きながら答えてる。


「ごめんね、ローズマリーちゃん、彼女本当に使えるんだ。不愉快という理由だけでは覆せないよ。」


「ミロル様まで…」


キッとこちらを向いたローズマリーのツインテールがぐりんと揺れ動く。


「あなた、皆さんを誑かしていやらしい!恥ずかしくないのかしら!」


「なんて?」

いつもなら聞こえない低い声が聞こえてキョロキョロしてるとまさかのルネだった。


「誰が誰を誑かしてるの?それ、あんたの事じゃないの?」


ひぇ、る、ルネ様は怒らせたら怖いのか。


「私はどなたも誑かしてなどいません。こちらには補佐としての仕事で来ているだけです。不愉快に思われたなら申し訳ありません。」


ここは穏便に、と私はすっと頭を下げる。

先程からとても寒いのだ。とっとと出てって欲しい。


「っくしゅん!ふ、ふん!わたくしは騙されませんわ!覚えてらっしゃい!」


と謎の文句を吐いて出ていった。


「時間が無駄になっちゃいましたね。」


「あ、あぁ、済まなかったな。カイリ君。」


「シエン様、大丈夫です。慣れてます。」


「これに慣れるって、悲しいよ。」


「ルネ様ありがとうございます。私を庇っていただいて…」


なんだかルネ様の株がバク上がりだわ。


「そんなのいつもの仕事っぷり見てたら文句の付けようが無いもん。」


わわ、可愛いルネ様に戻った。


「そうそう、仕事の飲み込みも早いし私語も無し。時間内に予定以上の内容をこなすんだもん。しかも、可愛い!華がある!こちらとしても助かってるんだよ」ありがとね、とミロルがまた三つ編みを触ってくる。


その手をパシン!と叩くとシエンが「本当に済みませんでした。嘆願書は即刻却下されたのであえてカイリ君に言わなかったのです」と話してくれた。


「私からもいいだろうか。カイリは補佐としての役割を十二分に担ってくれている。ありがとう。」


「い、いえっ!そんな!お給金を頂いているのです。当然の事です。」


びっくりした。第2王子様でも平民の私に感謝してくれるのか。


「それに、いくつか報告も受けている。帰りの道中暴言を吐かれてるようだな。対策が遅れてすまない。」


「報告を受けてから対策を練るだなんて、遅すぎますけどね。」


「何を言うかミロル!殿下は日々分刻みのスケジュールをこなしてらっしゃるのだぞ!それこそ部下の我々が対処してしかるべきだ!」


「いや、ミロルの言ってることが正しい。みんなも何か気が付いたことがあれば何時でも言ってくれ。身分のみで人を差別するのは間違っている。」


それぞれ同意見なのかうんと頷いている。


あぁ、色々言われてるのバレてるのね。


「私は本当に大丈夫です。こういう事は初めてじゃないですし、本当に慣れてるので気にしないでください。もうすぐ学園祭ですし。それに私も軽く受け流して報告などしませんでした。こちらこそすみません。」

とりあえず謝っておく。私も報告義務を怠った…となるのかな?


また色々聞かれるかなと思うとちょっと面倒だ。返事をするや否やまた仕事に取り掛かった。


冷えっ冷えだった生徒会室にまた暖かさが戻ってきた。


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