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それぞれの思い

読んで下さりありがとうございます。

「まぁ、また牛さん言ってるの〜?」


「インディ!お疲れ様。何してるの?」


「私?これから王都でデート。楽しんで来るわ!」バチンとかた目をつぶってウィンクをかますと、転移門ゲートへと歩いていった。


「こないだ言ってた人かな?モテる女は辛いねぇ。」


インディは実年齢より大人っぽい。体型や雰囲気、話し方も落ち着いていて男性から人気がある。


「青春してるなぁ。ま、私も片思いしてるしお金も稼げるし勉強も出来る!幸せ者よね。」


うんうん、と頷くとテクテクと平民棟へと歩いていった。



「あ。」


「お、え?何処から来たんだ?」


「ルーク君!お疲れ様。今日から貴族棟でバイトすることになって。」


「は。貴族棟で?なんでだ?」


「ほら、私奨学生でしょ?だから外でのバイトは禁止されてるんだけどちょっとお金が欲しくて…」


「免除されてるんだろ?」


「あー、うん。けどほんとにそれ以外にお金が…無いの。へへへ。」


片思いの彼に貧乏情報伝えるのは恥ずかしい。


「そうか。」

「ルーク君は図書室?」

「あぁ。」

「一緒に帰るか。これから寮に帰るんだろ?」

「う、うん!帰ろ!」


ぶっちゃけ深海にいた私のメンタル今天国。


「ふふふ。」


「楽しかったのか?」疑い深い目をしてまじまじとこちらを見る。


「いえいえ!(ルーク君と帰れるのが嬉しいのです!)帰宅の途に付けるのが嬉しくって!」


「そうか。もし…何かあれば…バルフォン先生に言うんだぞ。」


「うん。ありがとう。でも私結構メンタル強めだから大丈夫だよ。」


それからはまた長い帰路をとぼとぼと2人で歩いた。


お互い何も話さないけど暖かい雰囲気に包まれながらの帰り道だった。



《ルークside》


寮の部屋へと戻ってきた俺は何もする気力もなくベッドへ腰掛けた。


カイリが貴族棟で働き出したらしい。


お金を稼ぐためだという。


「貴族棟でなんのバイトをしてるんだ。掃除とかか?」


そういう俺は親の金でこうしてのうのうと生活していると思うと情けない。


「勉強も大変だろうに…」

「金を稼ぐ、か。」


実際卒業後どうやって生活して行こうか具体的に考えて無かった。


まだ16だと高を括っていた。


カイリはどんな子供だったんだろう。


あんなに素直にお金が無いからバイトすると嫌味なく言える性格が眩しくもある。


「俺はどんなやつだったかなんて言えるんだろうか…」


言えないな。


「ははははは!まーた隠れてるよ兄さん。」

「これだから半端者は…」

「あまりここには来たらダメよ?ほら○○、○○、こちらへ来なさい。」

わんわんと耳鳴りがする。

ずっと影に隠れて嵐が過ぎ去るのを待ってただけの過去だ。


「何かあっても俺を頼れと言えないとか…」


それが悔しかった。せいぜいバルフォン先生の名前しか出せなかった。


何となくだが貴族科を代表する生徒会メンバーは知っている。変なやつは居ないはずだ。


だが第1王子派は貴族至上主義。平民などゴミとしか思ってない。俺の親らしき人達を含めて。


そんなヤツらが平民科の制服を見たらどうなるかなんて簡単に想像出来る。


「ほんとに俺は半端者だな…くそっ…」


大きなため息を着くと遂にベッドへ横たわると白い天井を見つめた。


------


「おーい、カイリー!お昼だよ!」


「ん…インディ。ごめん、ぼーっとしてた。」


「バイト、忙しいんじゃない?」


「まぁそうね、忙しいけどタダ働きじゃないもの。全然平気。お昼食べよー。」


寮から出るお弁当を開いてサンドイッチをつまむ。


「インディはまた告白されたんだっけ。」


「んー、そうなの。私、年上の男性とお付き合いしてるのでって断ったわ。」


「どうなのよ、お付き合い。」


「それがね、まだ何も。お茶したり本屋さん巡ったりするだけなの。お子様扱いなのよ。」


「そうなんだ!告白はしたんでしょ?」


「そうよ、私から告るなんて、人生初だったのに…すごく緊張したわ。」


「きっと大人の人だからインディが卒業するまで色々待ってくれてるのかもね。」


「うーん、そうだといいなぁ。」


インディの頬がピンクに染まる。


いいなぁ、恋って。


「でもさ、いつか離れ離れになっちゃうとか思わない?」


「思ったことないわね。てか離れていくもんなら追いかけてっちゃうかも。」


そっかぁ…じゃぁ


「私のお母さんはどうして私達を置いてっちゃったんだろ。」ボソッと呟く。


「それに…」


どうしてお父さんは追いかけなかったんだろ。


考えても答えが出ないのはもう分かっている。カイリは思考を手放した。



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