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薬草取りへ向かいます

お読み下さりありがとうございます。

「気を取り直して頑張るぞー!」


「おー!」


ここは野外にある第1広場。今日は先日延期になった薬草取りの日である。


それぞれグループで集まり、杖の確認をしつつ少し緊張の面持ちで森の中へと入っていく。


平民科は貴族科と違って護衛が山ほど付いたり、治癒魔法の使える魔法師が常備居るかと言うとそうでは無い。


自分の身は自分で守らないと苦労して入学したのに全て消しくずとなってしまう。


特に平民科は高いお金を払って来てるところが多いだろうし、みんな気合十分だなぁ。


お、ルーク君も…眠そう。


「ルーク、眠そうだな、あくびしてる。ししし。」


「ナギサは昨日寝た?」


「おう!もちろん!楽しみにしすぎて眠れないほどガキじゃねぇ。」


「あら、まだ私たち16歳のガキだと思ってました。」


「ゾーイ、そこは16歳の、16歳の…うーん、16って微妙な年頃ね。大人でもなく子供でもない。」


「確かに。まぁ今回は絶対ハイスコア目指そうぜ。トンボ、よろしくな!」


前回と同様、先頭でスタスタ歩いてるトンボは振り向くことなく右手の親指と人差し指でまるをつくる。



「これじゃないかしら?」

「ほんとだ!」

「いや、違う違う。ほら、ここ見て?茎の上の部分が茶色でしょ?本来ここは紫でないと。」

「まぁ。詳しいのね。」

「っくー!そっか。何処だ〜ベルローズ〜」


暫くするとトントンと肩を叩かれた。


後ろを振り向くとトンボが手招きしている。


「見つかった?!」


こくんと頷き私たちを誘導する。


「わぁ!あった!これよこれ!ほら見て!茎のここ!紫でしょ!?きれーい。」


「ほんとだわ、こんなに似てるのね。難しいわ。でも希少価値あるのは納得ね。」


「トンボすげーじゃん!でかした!ハイスコア薬草!」


トンボは大きく頷いて両親指を上に向ける。


一人一輪、土の上に1本ずつ咲いているベリーローズの周りの土を優しく掘り起こす。


「じゃあ、私洗浄するね。」


そう言って杖を取り出すと、私は4つの薬草を水魔法で優しく洗浄した。


「乾かす。」


急に可愛い声が聞こえてギョッとした3人はすかさずトンボを見る。


「は?え?トンボ?」


私が持っていた薬草を手に取り今度はトンボが風魔法で綺麗に乾かした。


「ほー、もう乾いた。ありがとう、トンボ!」

「ありがとう。カイリもありがとう。」

「い、いや。それにしてもトンボ話せたんだねぇ。」

こくんと頷くと「話せるけど面倒臭い」とまた可愛い声が聞こえた。


そういえば自己紹介したものね?


でも、こんな可愛いお顔にこの声は…何となく苦労が分かるような気がする…と皆あまり深く突っ込むことなく、他の薬草も探していく。


1番のハイスコアであるベリーローズを採取できたので緊張も程よく緩み、時間いっぱい採取を続けた。



「皆さん今日はお疲れ様でした。さて、結果発表ですが、ハイスコアのベルローズを4つ完璧に採取してきたチームが居ます。」


ざわざわ

「えー、凄い!」

「全然無かったのに~」

「私たち間違えてレッドローズ採取しちゃったのよね。」

「何処にあったんだ?幻じゃ無かったのか。」


「ナギサ、トンボ、ゾーイ、カイリ。こちらへ。」


4人は教室の前にやって来ると先生に杖をと促され、杖を出す。


すると先生の杖から金色の光が溢れ出し、それが4人の杖へと移っていった。


「良くやりましたね。保存状態まで完璧でした。他の薬草の種類も沢山採取してきましたね。」


すると先生は教室のみんなの方を向いて話を続けた。


「グループワークで高い評価を得たチームには学校より杖に強化魔法をつけることができます。皆さんもこれから頑張って下さい。」


そしてワーッと拍手が沸きおこった。



---------

「杖、なんか変わった感じあるか?」


「私は正直分かんない、かな。少し冷たく感じるけどそれは冬だからだと思うし。」


「あら、私の杖は少し暖かく感じますわ。気のせいかしら。」


トンボは自分の杖をじーっと見ている。


「ま、初めてだしそんな変わってないかもね。とりあえずは、お疲れ様でしたー!」


「「「かんぱーい」」」


1位になった記念に4人で放課後寮にあるカフェへ来たのだ。


カイリも付き合いは大事だと知っているのでケチくさいことはしない。だが1番安い紅茶を頼んでいる。


「いやぁ、なんて言っても今回はトンボのお陰だな。」


トンボはブンブン手と顔を横に振る。


「確かにトンボさんが居なかったらあの場所にはたどり着けなかったわね。ありがとう。」


そうするとトンボはさっきより高速スピードでブンブン顔を降っている。


顔、取れないかな…


「カイリも。」


可愛い声が聞こえた。


「そうだよな、薬草めっちゃ知ってんじゃん!びっくりしたわ。すげーな、カイリ!」


ほんとに、とゾーイもこちらを向く。


「ありがとう。こう言うと嫌な奴って思われるかもだけど私奨学金貰ってるの。だからめいっぱい勉強して頑張らないと通えなくなっちゃう。」


「そうなのか?」


ん?

んん??


ぐりんと声のした方へ顔を向けるとルークが立っていた。


「奨学金。」


「う、あ、そうなの。うちお金無いから死ぬ気で勉強して入学したの。在学中も成績落としたら奨学金も無しになるから必死だよ。」


「だから休み時間も勉強しているのね。」


「すげえな、カイリ。今度勉強教えてくれよ!俺ギリギリで入学したから。今既にやべぇ。」

こくん。

トンボも頷いている。


「私に出来ることであればもちろんよ。」


「凄いな、お前。」

邪魔したな、と向こうへ行ってしまったルークを見届ける。


凄いなお前…すごいなおまえ…


「ほ、褒めてくれた…」

「?当たり前じゃん。すげーよカイリ。」

「っ…」


みんな優しい。

ここに居るみんなは私の家庭環境なんて分かんない。


「家族以外で褒められたこと初めてかも。えへへ、なんか嬉しいね。ありがとう。」

にっこり笑うとトンボとゾーイが私の頭をよしよししてきた。


なんだろ、心がめっちゃ暖かい。


紅茶は冷めちゃったけど凄く嬉しい。


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