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お読み下さりありがとうございます!

「えー!怪我したの?」

「そうらしいわよ。それでルークが…」


ルーク!?ルーク!?


「ね、ねぇ、どうしたの?」

教室までの帰り道に聞こえてきたただならぬ情報にカリンは容赦なく食いついた。


「あー、さっきの森の探索でね、女の子、確かミアさんかな?が怪我したみたいでね。ミアさんをルークがおんぶしてたんだって。」


「な、」


なんと!


「私まだ目も合わせたことないのに…」


少し落胆したカイリだったが、教室に居ないルークとミアさんにソワソワする自分も少しイライラする自分もなんだかむしゃくしゃした。


そしてお昼休みが終わり、トイレに行こうと外へ出たところで誰かとぶつかりそうになった。


「わっ。」


「あ、ごめん。」


「!いいいいえっ、全然。こちらこそごめんね。」


そう言うとカイリはピンポンダッシュ宜しく廊下を全力疾走するのであった。


し、信じられない!信じられない!ルークだ!ルークだーー!!


叫びたい気持ちを抑えこみトイレの個室に飛び込んだ。


《ルークside》


びっくりした。急に飛び出してきたからぶつかる所だった。白っぽい水色の髪。確か彼女はカイリ、だったか?かなり綺麗な…いや、まぁそれは置いといて。


いつも元気に女子と話している。


俺は怪我した女子を森の外までおぶって運び先生と一緒に保健室までやって来た。事情を説明したらもうお昼になっていたから食堂でサンドイッチを食べ、早々と教室へと戻ってきた。


正直女子をあの距離おぶって運んだんだ。疲れた。こういう時風魔法だったら重力変えられるのに、と思ってしまう。


俺の魔法は中途半端だ。魔力も突出して優れてない。それは多分中途半端な髪の色のせいだ。何もかも中途半端。家族の中で俺だけ醜いと見下され、魔法も下手くそといつも家族にバカにされてきた。


そんな環境が嫌でこっちの平民棟へとやってきた。ここは落ち着く。誰も俺の髪の色で文句を言わない。


それがこんなにも落ち着くなんて…



「あの場所はクソだったってことだ。くだらない。」


そう独りごちると机に突っ伏して目を閉じる。


こんなにも安心して眠れるのは本当に久しぶりの感覚だ。いつも何かにつけて気が抜けなかった。なのに今は…どうして昔の俺はあんなに不安だったのかと拍子抜けした。


嬉しすぎて寝すぎな気もするが気にしない。


今日はミアって女子がへましたけど明日の薬草は問題なく採取したいな…



「目立たないようにしないと。面倒だ。」


俺は目立たず最大限の知識を得て卒業したら何処へでも行ってやる。


「絶対家には戻らない。」


その誰とも届かない小さな声はとても重たく冷えきっていた。


《カイリside》


「ふぅ。き、緊張したぁ。」


こちらカイリも机に突っ伏している。


さっき人生で1番好きな人の近くに居た!!


そう思うと表情筋が緩みすぎて周りに見せるのも申し訳なく思い1人突っ伏しているのである。


「やだ、同じ空気吸っちゃってるんじゃない!?」


ちょっと思考が残念だ。


「ど、どんな匂い…」と危険な妄想を始めようとしたところで午後の授業が始まった。


とりあえず恋愛も大事だが学問である。遠い田舎から無い金集めてここまで来た。家族の期待は裏切れない。


パチンと両手で頬を叩く。

「お父さん、レティ、パティ、見ててね、私頑張るよ。」


そうして午後も勉強を頑張るのであった。



「じゃあね、インディ!」


「うん、カイリまた明日ね〜」


「お、カイリ、お前寮住まい?」


「お!ナギサ!そうだよ〜なんせ遠い田舎出身なもんで。」


「俺も俺も。なんせ遠い東の国出身なんで。一緒に帰ろうぜ。」


「そうだね。帰ろー。」



寮も貴族と平民はそれぞれ別の塔である。私たちは平民の棟へと向かう。


「あ…」

私の初恋センサーが発動した。


数メートル先にルークがいる。


「お、あれ、うちのクラスじゃね?」


「う、うん、そうだよね。」


勿論その通りと即答できるが少しやんわりと答える。


「おーい!」

「わっ、ちょっ!」


ナギサは急に片手を上げてルークを呼んだ。


急に呼びかけられたルークは少し眉間のシワが寄っていたがそれもかっこいい。いや、そこでは無い。ルークはこちらを振り向き歩くのを止めた。


「同じクラスだよな?俺、ナギサ。遠い東の国から来ました。よろしくな。」


今帰り?とさりげなく一緒に歩いているナギサのコミュ力に泣きたい…


「カイリ、ルークも寮だって!一緒に帰ろうぜ。」


私は上手く返事が出せずコクコクと頭を縦に振るしか無かった。


「こっちはカイリ、遠い田舎から来ました〜ってな」と、私のことも紹介してくれるナギサには、今夜から足向いて眠れない。


感謝してもしきれない。


ゔっ、待って、ルークがこっち見てる…見てる〜!ごめんなさい平凡な顔で〜!


少し泣きそうになりながらも3人仲良く?寮へと歩いていった。


地味に遠い。何故に貴族の寮は校舎と続きであるのに平民の寮は謎に遠いのよ…


だがしかし、今日に限っては感謝したい。お陰でルークを真近で拝めることが出来るんだから…


たまにこちらも見てくれるルーク。


偽物の薄っぺらい笑顔を作らないクールなルーク。クールなルーク!!!


黙ってナギサの話を聞いているルーク。


どれをとっても最高に素敵で私は1人雲の上を歩いているようなふわふわした気持ちで歩いていた。


今考えると表情筋大丈夫だったか心配になる。


そう言えば、ルーク、話してたのかな?


ほぼほぼナギサが喋ってて、あまりルークの声が聞こえなかったのは少し残念ではあったけど…


「今日の出来事でここ1年は頑張れる。うし!勉強勉強!」


寮の部屋で黙々と勉強をするカイリなのであった。


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