新手の不良?《ルークside》
お読み下さりありがとうございます。
遂に…
「終わったな…」
「お疲れ様ー!」
急に後ろから可愛い声がした。
ガバッと後ろを向くとそこには俺より少し背の低い緑色の髪をした可愛らしい、いや、かっこいい青年が立っていた。
「トンボ!?」
トンボはこくりと頷きサムズアップをするとすぐさま両手をコートのポケットにしまった。
「上手くいってよかったね。」
「あぁ、ありがとう。トンボのお陰だ。」
----------
カイリの騒動がひと段落ついたある日の夕方、俺はトンボの寮の部屋に居た。
「突然すまない。」
「いや、良いよ。ルークが来るなんて珍しいね」と言いながらマグカップにココアを入れて持ってくるのはこの部屋の主であるトンボだ。
少し大きめの部屋着から手の先だけちょこんと出して熱々のマグカップを2つ運んできた。
「どうぞ。」
「ありがとう。」
お互いに黙って一口飲むと甘い香りが喉を通り少し緊張が弱まった。
「あれかな、貴族の事かな、それとも影の事かな。」
緑の大きな目をくるっとこっちへ寄せるとそう伺ってきた。
「いや、そ、うだけど、それとはちょっと違うような…」と、どう話せば良いのか逡巡していると「フォーゴ家の事?」とトンボが聞いてきた。
やはり知っているか。
「そうなんだ。」
「全然帰ってないよね?て言うか貴族なのに平民科に居るのって大丈夫なの?」
「いや、最近バレた。」
「ふふっ、そうなんだ。それで?」
何でもお見通しのような目で見られるとなんて言うかドキドキする。可愛すぎるのも大変だな…
「俺も…俺も本当は平民科を卒業したら独り立ちしようと考えていたんだ。」
暖かいココアをもう一口飲んで話を続ける。
「でも早い段階でバレてしまって、トンボは籍だけ貴族だけど平民科に居るだろう?大丈夫だったのか?」
「あぁ、うん。利害の一致だよ。僕は影として殿下に仕えてるからね。それをもって貴族として迎え入れてくれたからさ。そこさえちゃんとしてたら大丈夫。」
サムズアップされた。
「独り立ちって何するのか考えてた?」
「いや、実はまだ全く。これから色々学んで決めようと思ってたんだけど…」
「バレたから貴族科へ行かないといけない?」
黙って頷く。
「でも行きたくない。だから平民になろうと思ってる。」
「なるほど。いいんじゃない?フォーゴ家はあんまり善い噂聞かないからね。いつボロが出てもおかしくないし。」
「それで、だ。トンボ」俺は意を決してマグカップをテーブルに置く。
キョトンとした目で首を傾げて俺を見るな。
「トンボ、お金持ってるか?」
「……新手の不良?」
「ふっ、なんだよ、新手の不良って。」
「いや、だって、真面目なのにお金たかるからさ。そうなのかなー?って。」
冗談だけどと言ってトンボはココアを飲み干し、マグカップをことんと置いた。
「お金を貸してくれませんか。」
そう言って俺は頭を出来るだけ下げる。
「学校は出ておきたいんだ。今後のためを思うと、絶対その方が良い。今からバイトを探すにしても直ぐに授業料を払え無いし、バルフォン先生に相談するのも考えたんだが、先ずは。」
「僕を頼ってくれたの?」
「殿下の影だからな。」
「そう、なんたって、僕は殿下の影だもんね。」
「ふふっ、いいよ。僕お金は稼いでるしそんな使う暇もないから全然貸せるよ。一先ず殿下にはこの事報告するからね?」
と、トントン拍子で借りる事が出来た。バルフォン先生にも平民科になる事を伝えると、どうしてもっと早く相談に来なかったのかと悲しそうにしていたっけ。
何かあればバルフォン先生も力になってくれるそうで、俺は本当にクラスのみんなに恵まれたと心の底から感謝した。
そして年末、俺はルーク・フォーゴからただのルークになった。




