ルークside
お読み下さりありがとうございます。
ドカッ
「どういうことか説明しろ。」
帰宅命令が来てからというものの心の底に重たい石が張り付いてしまい上手く日常を送れなかった。
そんな中カイリの事件が起き、俺は何も出来ずにただ椅子に座って待っているしか無かった。
犯人をこの手で捕まえると息巻いていた自分が恥ずかしくて呆れた。
同じ歳のやつが既に影として活躍しているのを見て俺は悔しかったんだ。恥ずかしかったんだ。
いつもいつもこうやって家族という名の奴らに蹂躙される俺は一体なんなんだろう。
捨て置いてくれたら良いのに万が一の保険の為、自分達の保身の為、家族として繋ぎ止めてる縁になんの意味があるんだろう。
籍だけの関係だとケロッと話すトンボが羨ましかった。そして俺も決心したんだ。
「私は貴族を辞めます。」
父親に殴られて唇を切った様だが何も感じない。流れる血を手で拭い、立ち上がる。
「何を言い出すのこの子は!」
「お前今なんて言った!?」
今度は兄が倒れた俺の胸ぐらを掴んでくる。
「馬鹿か!そんな簡単に辞められるわけなかろう。平民科になんぞ通いおって信じられん。何故何も報告しない!そんなこと、許可してないだろう!」
家の中にさえ入れてくれないのに、俺はこれを実家だと思っていたのか。
「くくっ。興味が無かったのでしょう?だから今までバレなかった。何方から聞かれたか存じ上げませんが私は、いや、俺はここに帰る気はありません。学園祭も舞踏会も辞退します。」
「お、お兄様正気なの?!貴族をやめて平民に自ら落ちるだなんて!やっぱりお兄様は馬鹿じゃないか!」
影に隠れていた弟が真っ赤な顔をして両目を大きく見開いて怒鳴っている。
「お前にお兄様って呼ばれるのは何年ぶりだ。真っ白じゃないか。外に出てないのか。」
しかしこんなに太っていたのか、記憶より大分横に大きくなってる。鍛えている気配が一切ない。
「とにかく!家に入りなさい。こんな所ではしたない!あなた達もよ!」
自分も様子を見ていたくせに眩しいくらい髪にもドレスにも着飾った姿は見ていられない。しかもここまでキツイ香水の匂いがして自然と眉間に皺が寄る。くさい。
未だ憤慨している父親もこう見たら歳をとったものだ。玄関で魔法をぶつけてこなかった冷静さはあったようだが今はどうだろう。拳を握りしめこちらを睨んでいる瞳は真っ赤である。
「っちっ、恥知らずめ!お父様、こんなやつ早く離縁しましょうよ。」
そういう兄も記憶より小さく見えるのは何故だろう。いつも魔法の練習として標的にされて一度大きく火傷をおったっけ。
ひょろっとした執事に促され皆は久しぶりのフォーゴ侯爵家へと入った。
まぁ、俺が居たのは離れだったからな…
こっちの家になんの思い入れも無い。
「どうして平民科になど行ったんだ。」
「貴族としての教育を受けませんでしたから。」
「なんだと!?どういう事だクレア!」
「ま、まぁ貴方それはそのぅ、そうよ!この子の才能がないから教師も手を焼いてしまって誰も教える者が居なかったのよ〜。」
「教師に教えてもらった記憶はありませんが。」
「どういう事だクレア。おい、レイノルド!お前は知っていたのか!」
静かに立っていた執事が1歩前へ出る。
「旦那様。ルーク様は産まれてからほぼ離れで過ごされました。教師が離れに行くことは奥様にきつく禁止されておりました。」
「なに!?」
「では本当に教育を受けていないのか…」
呆然とするフォーゴ家当主と黙りな他の3人をただただぼうっと見ていた。それすら知らなかったサッシュに怒る資格など無いだろう。
父のサッシュは今になって俺が惜しくなったらしい。他の息子二人が余りにも使えないからだ。
「今から貴族科へ編入して無事卒業出来たらこの家に迎えてやる」とか言われたけど却下だ。
「俺はもうここには戻りません。」
「だが、金はどうするんだ!まだ学生の身分で考えが甘すぎる。」
「そ、そうよ、今まで育ててあげた恩も忘れて何様のつもりかしら。何も返してもらって無いじゃない!」
「お金は友人に借ります。話は付けておきましたので心配いりません。離縁状の紙はありますか、レイノルドさん?」
と、まぁわなわな震える父のサッシュとぽかんとしたヒョロデブコンビの兄弟見てたらちょっと胸がすく思いがした。頑張るんだな2人とも。
クレアオバケはさっきからギャーギャー煩くてサッシュに追い出されてしまった。
1歩家の外へ出る。
はぁ、詰めていた息を大きく吐くと白い息が出る。家に着いたのは昼過ぎだったのに今はもうもう夜だ。深い群青色に染まった澄んだ夜空に星がチラホラ輝いている。




