赤い顔は感染する
波乱前の甘酸っぱいのを置いときます。お読み下さりありがとうございます。
「もう大丈夫なのか。」
「お陰様ですっかり元気だよ。むしろ太っちゃった。」
「そうか。」
久しぶりに図書室から一緒で寮まで2人で歩いている。
すっかり冬景色の道のりはそれなりに寒いはずなんだろうけど…そこまで寒くないのはルーク君がそばに居るからかな。
「そろそろ冬休みだね。」
「そうだな。」
「こっちは雪あまり降らないんだね。」
吐く息は白いし雪は見たけれど積もってはいない。
「そうだな。降っても積もらない。カイリの実家の方は積もるのか?」
「うん。めっちゃ積もるの。笑けるくらい積もるから冬ごもりするんだけどね。」
「冬ごもり?」
冬になるとカイリのいた村は雪が山や畑を分厚く覆ってしまう。空は一日中薄暗く灰色の雲が浮かんでいる。寒すぎて動物も出てこない。
なので秋になるとみんな冬ごもりの支度に入る。お金に余裕がある人は街に出かけて保存食を買ったり、農家の人は畑で採った野菜を地面に埋めたり果物を瓶漬けにしたり、忙しい。
私の家は余裕がなかったからいつも大変だった。薪も必要だし食料も必要だけど、調達するお金が無い。
「そう。冬は雪で外に出れないから秋から蓄えておくの。でもお金が無かったから蓄えが全く追いつかなくて雪が積もるギリギリまで色んな仕事手伝った。」
何度も何度も空を見て、まだ降らないで、まだ積もらないで、まだ凍ってしまわないで、と思った。薪を集めて野菜を保存して瓶詰めも作って家事もして子守りもして…ととても小さなカイリ1人では追いつかなかった。父は出稼ぎで出来るだけ多くの食料を調達してきてくれたけど。
「私、水魔法でしょ?火魔法だったらって何度も何度も思ったなぁ。」
「大変だったんだな。」
「うん、そうだね。今思えば凄い大変だったけどその時はもう必死でそれが普通だったからあまり考えなかったなぁ。」
ポンポン。また撫でられる。ルーク君の手は暖かい。
「ふふっ、暖かい。」
思わず私も手を自分の頭に載せると私の手とルーク君の手が重なった。
2人の動きが止まる。
「「……」」
そっとルーク君の手が動き出して下ろしたかと思うとカイリの手を包み込んだ。
「ほんと、頑張ったんだな。」
私の手をじっと見ながらルーク君が呟いた。
私の左手がすっぽり入るルーク君の細くて少しゴツゴツした暖かい右手。
なんだろ。こんなに暖かい気持ちになるなんて。心が喜んでるのが分かる。犬だったらしっぽ千切れるくらい振ってるやつだ。
ルーク君の手は魔法の手だ。
「ルーク君の手は魔法の手だね。」
「魔法使いだからな。」
「そういう意味で言ったんじゃなくて、うーん、心が暖かくなる魔法の手だよ。」
言ってて恥ずかしくなってしまい、へへへと笑うと下を向いた。
「っ」
息を飲む声が聞こえてから反応がないのでチラッと上を向いてみる。
そこには真っ赤に顔を染めたルーク君が眉間に皺を寄せて右手で必死に顔を隠して横を向いていた。
ぼぼぼっ
真っ赤な顔は感染する。
私ももれなく手首まで真っ赤になってしまい2人で数分間固まってしまった。
「い、行こっか。」
バッと手を離して「そうだな」と答えると2人はまた寮までの道のりをゆっくりゆっくり歩いたのだった。




